表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
二年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/40

25. 陽の季・終(8月)25日①


陽の季も残すところ僅かとなり、学園は戻ってきた生徒で賑わい始めた。彩の季に入ればまた授業が始まる。


けれど、正直それどころではない。あれからずっとレオンとの距離は遠のいたままだ。


まだ休暇中だというのに、彼が寮の同室にいる時間は明らかに少なかった。無視こそされないものの、会話も必要最低限。「先にシャワー使うぞ」とか、「明かり消すよ」「ああ」とか、そんなものばかりで……確実に避けられている。


早くあの時の発言の意図を説明して謝りたかった。でも時間が経てば経つほどに、そうすべきなのかも分からなくなる。


自分は――出会った時から今まで、レオンに頼りすぎていたのかな。


面倒みがよく責任感が強い彼は、当たり前のように傍にいてくれた。それは自分が頼りなくて、ルームメイトとして放っておけなかったからかもしれない。


そんな相手から"僕の騎士じゃないんだから"なんて言われたら、嫌な気持ちになるのも頷けた。どの口がって感じだよね。


晴れない気持ちで寮の談話室を覗くと、久しぶりに集まるからか皆楽しげだ。奥にテオとセルジュ、そしてレオンの姿を見つけたけれど、今はなんだか遠い。誰にも話しかけずに一人部屋に戻った。


ベッドの端に腰掛けたまま、溜め息をつく。この学園に来てから寂しい思いをするのは初めてだな。


――ふいに、コンコンと部屋の扉がノックされた。


「……はい。」

「ルカ、セルジュだ。入っていい?」

「うん。」


少し意外な訪問だった。四人では仲良くしていても、セルジュと二人という機会はあまり無かったから。そっと扉を開けて入ってきた彼は、片手に紙袋を抱えていた。


「これ、差し入れ。みんな談話室にお土産を持ってきてて、ルカも食べるかなって。」

「……ありがとう。」


気遣いに胸の内がじんわりと熱くなる。隣に腰を下ろすと、袋の中のものを並べていった。


ナッツが入ったクッキーに蜂蜜色の飴玉、マフィンのような焼き菓子、果実の砂糖漬け。本当に色々だ。勧められた焼き菓子から食べると、ほんのりチーズの風味がして美味しかった。


「美味しいね、これ。」

「だろ?これはテオのお土産だけどね。」


悪戯っぽく笑った後で、セルジュは少し声を落として言う。


「レオンと、何かあった?」

「………。」

「喧嘩……ではないか。」


そう、喧嘩ではない。いっそ喧嘩になれば謝ることも出来たのかな。相手は静かに傷ついてしまった。


「悪いのは……僕だ。」


耐えかねて口を開く。ざっくりとアッシュの襲撃のことを聞いてもらい、それからレオンとのやり取りを話した。後悔しているあの発言についても。


「その場の空気を、軽くしたくて……そんなに心配しないでって、安心させたかっただけなのに。」


伝え方を完全に誤ってしまった。受け取った側が傷ついてしまったのなら、それは言葉の刃だ。


セルジュは肯定も否定もしなかった。


「なるほどね。それでレオンがずっと避けるから、ルカも謝れずにいるんだ?」

「……そう。」

「あいつは不器用だからなあ。その時どうだったかは分からないけど、今はもう、怒ってはいないと思うよ。」


怒っていなかったとしたら、なんなのだろう。呆れられてしまう方が怖いかもしれない。


「いつも頼って……甘えて、ばかりだったから。」

「ん?」


首を傾げられて見つめ返す。セルジュの澄んだ薄青の瞳もまたこちらを見ていた。


「あー、なんていうか……俺からすると、そうは見えないことも多かったけど。」

「えっと……。」


微妙に噛み合わない理由が分からない。でもその答えは教えてくれなかった。


「とにかくさ、二人の間には誤解というか、すれ違いが起きてると思うんだ。伝えたいことがあるなら言葉にするべきじゃない?特に、レオンが相手なら。」

「……だよね。」


セルジュのアドバイスに納得していく。勇気が必要でも、自分から歩み寄るべきだ。


「そうだよ。……まあ、俺とテオもいるからさ。焦る必要もない。」

「ありがとう、セルジュ。」


また周りの人に助けてもらった。いつかお返し、できるかな。この気持ちはきっと忘れないから、もう少しだけ一緒にいてほしい。


「……あのさ、聞いてほしいんだ。」

「なにを?」

「アッシュと戦った時のこと。……話すことで、ちゃんと消化できる気がして。」


アルバート先生の労いもフィル先生のアドバイスも、レオンの心配も。全部嬉しかったし有難かった。


だけど、ただ聞いてほしいだけの自分もいる。褒められたいとか励まされたいとか、そういうことではなくて。


理解できない考えをぶつけられたこと、必死になって防戦したこと、全力で魔法を使った感覚――それらを自分の中に留めずに、誰かに話したい。


セルジュは優しく、そして少し嬉しそうに言った。


「いいよ。いくらでも、話してよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ