忠告するような立場じゃないんですが・・・
ジョージです。
ピルルルルルル・・・
夜ですが、会社の電話です・・・知らない番号ですが・・・国番号から言っても・・・スコットさんですかね?
はい、ジョージです。
「スコットだ。お前の彼女は化け物か?」
なんですか・・・いきなり。 はい、そうです。
「肯定かよ!!」
天才、化け物、規格外。色々な言い方がありますが、彼女は極端にそれに合致する人物です。
「本当にな!!まったく・・・痛い目に遭ったぜ!!」
まさか、ケンカでも吹っ掛けたんですか?死にますよ?元自称グリーンベレーの悲惨な末路の話はしましたよね?
「あれほどとは思わなかったんだよ!!それに、ケンカじゃなくて、現地兵が彼女を襲う気すら起こらないようにってんで、オレと彼女の模擬戦を暗黙の賭けの対象にしただけなんだ!」
まあ・・・今回は増量していきましたけど、とても、あの体重があるような体には見えませんからねぇ・・・
「増量してたんか!!知らねーよ!!」
普段75kgを今回88kgまで3ヶ月掛けて増量していましたから。まあ、200lbs までは行ってないですね。
「普段75kgって・・・本当か?60kg台かと思っていたよ・・・」
あのデカさであれだけの動きができて、あの巨乳なのに70kg未満は不可能ですよ。
「88kgの動きじゃないよ。まあ、ヘビー級のボクサーでも今どきはびっくりするほど素早いがな」
そうみたいですね。彼女は女子プロレスの道場で練習していましたが、強すぎて誘われなかったみたいですから。
「女子プロレス?あれは Performance Art だろう?」
そうでしょうけど、それでも怪我しないためには、しっかりとした練習が必要です。
「しかし、強すぎて誘われない?誘われ過ぎたの間違いじゃないのか?Performance Art には、見た目だって重要で、彼女の見た目は・・・すごく良いだろう?」
マッチメイキンクができないんだそうです。強すぎて相手がいないんだとか。
ご存知の通りかどうか知りませんが、彼女が相手を殺さないために手加減すると、すんごく手を抜いているような動きになりますから。それでいて、案外隙がないんですけどね。
「強すぎる、ね・・・まあ、身を持って体験したよ。手抜きっぽく見える動きもな・・・確かに誘っても試合を作れないんじゃ、しょうがないか」
模擬戦で何をされたんですか?
「パンチ、キック、投げ、一通りだ。ジャブは軽いんだがクソ速い。あんなん目の周りに食らったら一瞬で腫れて見えなくされちまう。キックは・・・ムエタイは日本で有名か?ほぼ同じだけどラオ族が言うにはこっちが元祖のムエ・ラオってのがあるんだ。現地の兵隊も崇めるほどにキックの凄さを称えていたぞ?あと、本当に彼女は人を投げまくれるんだな・・・」
ムエタイは日本でもそれなりに知名度がありますよ。見えないトゥキックは彼女の代名詞でもあります。タクティカルブーツでやったら一発で死ぬまでありますよ・・・
「流石に手加減してくれたのか、腹筋の一番厚いところに入れてくれたから・・・悶絶するくらいで済んだ。事前にケブラーの例のアレを入れろ、と忠告されていたからな・・・しかし、日本は平和な国なんだろう?見えないトゥキックが代名詞ってどんな奴なんだよ!」
彼女の間合いは120cm、4ft くらいありますから。特にファイティングポーズも取らず、腕さえ組んでいて、真っ直ぐ立っているだけのところから、鳩尾にトゥキックが飛んできます。
「ほとんど特殊戦闘技術じゃないか・・・。Performance Art の練習場ではどうしていたんだ?あれは女子ではどうにもならんだろう?」
はい、なので最大で五対一で練習していて、相手は連携技も使ってよいルールだったそうです。
相手方は首より下のみの攻撃に限られていて、彼女は鳩尾より下の攻撃ってルールでしたけど、増量を開始してからは鳩尾も禁止になってました。
あ、当然普通のレスリングブーツですよ?そちらのブーツのように芯は入っていません。
「そりゃそうだろうよ! 鉄芯入りであれを鳩尾に入れたら内臓破裂まであるわ!! しかし相手が5人か・・・それくらいでないと見世物にすらならんだろうな」
ということは・・・スコットさんもなぶられちゃったんですね・・・お気の毒です。
「まったくだよ!!ラオ国じゃオレもデカいほうだが、彼女のほうが大きい上に華奢だからな!周りから見たら、デカいネコが子犬か何かの小動物を一方的に叩いているように見えただろうよ!!」
スコットさんが「子犬」はないですよ。ムキムキの筋肉じゃないですか。
「それでもだよ!!あとな、下士官食堂にいったら全員が彼女を崇めたんだよ。女神か何かのようにな!」
ああ、それは『ピー』でしょうね。pee じゃなくて、phiです。地元の土着宗教における精霊です。徳を積めば助けてくれるけど、信頼を裏切れば恐しい報復をしかけてくる精霊です
「なんじゃそりゃ・・・敬虔でないクリスチャンにも分かるように言ってくれ」
ギリシャ神話を知っていれば、アルテミス・・・ダイアナのほうがいいですかね?もしくは、An Old Testament agent でも理解できますか?
「・・・それならわかる。約束を守っている限りは優しいが、一線を越えたら、物理法則を無視して炎と硫黄が降ってくるってやつだな。まあ、言い得て妙だな。確かに炎と硫黄だったよ。弱めに制御されてはいてもな・・・」
そうでしょうね。何かの彼女の琴線に触れて怒り狂った彼女を止めるのは、本当にこちらが死ぬ思いですから・・・
「お前も苦労する立場なんだろうな・・・」
まあ・・・地元では市どころか、県警も自衛隊も非合法組織すら味方ですからね・・・大量の論文提出で、学会的にも有名になってしまいましたし、正直、その辺の小金持ちよりお金だってあります。
「カネと言えばだ!!あの電磁圧接、$1Mどころじゃないだろ!!L-100は分解できなくなってしまったが、別に分解して運ぶ先もないんで、それはいい。お前のところを赤字にするつもりはこっちには無いんだ!大丈夫なのか?」
スコットさんから要求のあった事項についてはUSDの追加見積を出しましたよね?
「それにしたって足りないだろう?ほぼ、新造だぞ?普通に考えれば$100M、いや、$1Bになってもおかしくないはずだ!!」
彼女は今や日本だけじゃなくて、スタンフォードやマサチューセッツ、オックスフォードでも有名人なんですよ。大学だけでなく軍産複合体でもです。
なので、彼女が優しく微笑むだけで色々なものが集まります。
そっちに行った研究者だって、参加料を研究者側が払ったりしているんです。少なくとも、交通費は全員自費ですよ?
「・・・研究開発費用の圧倒的な縮減か・・・」
そうです。それに、既存技術の改良ですから、いろいろな会社から、研究開発費用を受けとれるわけです。まあ、そこにある L-100 の写真は大量に撮られてしまうと思いますが。それに、図面も持ち帰られてしまいます。
あんな巨大な電磁圧接機は世界初ですから。
「・・・なるほど、究極の試作にして実験台だな・・・まあ、機密の飛行機ってわけでもない・・・L-100 ってのは、機体としては相当のOld Timerだからな・・・」
そういうわけです。それに、大手航空機メーカーでも再現不可能かもしれませんよ?
「カネの問題か?」
違います。まあ、お金の問題は常につきまとうとは思いますけど・・・
「じゃあ、なんだ?」
あちらで作業をしていたのは、手も動く研究員です。ほとんどが Ph.D の称号持ちです。かつ、彼女の信奉者です。
「そっちか・・・」
そして、作業者である整備兵、それ以外の兵隊や下士官の方々も、彼女を崇拝しているような感じだったんでしょう?
「そうだな。最初の登場と、実利。・・・毎日一本のビアラオと、週末の地元の焼酎とつまみで、すっかり手なづけてしまったよ」
現地の方を無学や無教養と見くびるのは危険です。しかし、彼女はそれより現地の信仰やら土着宗教、慣例や慣習、庶民のまさに庶民的な行動、現地政府への付け込み方なども綿密に調べて計算して行動しています。
毎日一本、ビールを配るというのも、しっかり働けば週末には飲ませてやるから、普段はこれだけで終わりにしろ、という習慣付けみたいなもんですよ。
現地の『精霊』の現身としての統治者は最強です。
それが彼女です。
アメリカやヨーロッパでそんなプロジェクトマネージャと博士たち、そして労働者を集められますか?
「・・・無理だな」




