武庫川くんの葛藤
会った途端に夢から醒めるかもしれない。そう思っていた。
武庫川です。
高嶺祭の後に告白してから、なんとほぼ二年。やっと彼女、リコさんに会えることになりました。
告白後に言われたセリフは今でも覚えています。
・・・
「ネタじゃなくてマジなのか?」
はい、マジです。
「うん・・・それは・・・ありがとう」
じゃ、
「ちょっと待て」
なんでしょう。
「見た目の話。この見た目のアタシは今しかいない。すぐに消滅する」
どういう意味?
「あーー、今の自分は、自分で見ても『アタシかよ?』と、思うほど美人だ。だけど、これは一種の実験で、大学でもバスケをやる予定だから、次にこの姿になるのは・・・早くて大学四年でバスケを終わりにすると決めたとき。まあ、ケガとかで引退が早まれば別だけど・・・」
確かに今のリコさんは美人だけど・・・そこに惚れたワケでもないんだよ。
「そうなの?じゃあ、ズバりでいうと、どこ?」
うん。HGIS で泣きながらがんばっているところかな?
「よりによってそこ!?!」
そう。・・・なんというか、レギュラーじゃないのにクラスマッチ最強だった彼女は別枠として、リコさんもバスケなら天才の部類でしょ?
「まあ、あれはな・・・アタシは天才じゃないよ。うーん・・・がんばって小綺麗な言い方をしたとしても、泥臭い努力型、が、精一杯だよ」
でもそれをずっと続けてこられた。その姿が、凡人からしたら天才に見えるんだよ。
「うーん・・・しかし、HGIS ね・・・」
聞いた話で噂に過ぎないけど、リコさんってギリで受かったって聞いてさ。
それでここの授業に付いてこれるのって充分にスゴいよ?
「まあ、それは噂だとしても、ほぼ真実。新歓で、とんでもないところに来てしまった・・・ってのは思ったもん」
それはみんな思うんじゃない?彼女と、永遠の二位様を除けば。
「三年の新歓の時、ユカが叫んでいたの・・・聞いてない?」
ああ、そうだったね。天使か悪魔説ね・・・あれを一時間で埋め切るってのは・・・そうだね。人間業じゃないよね。
まあ、でも、リコさんがそれほど得意じゃないと思っているであろう勉強のほうもがんばってきたのは事実で、見て惚れたとしたら、そこってのは、オレの中の事実。
「・・・ありがとうございます」
なぜ敬語?
「いや、なんとなく」
急かすつもりはないけど・・・返事は欲しい・・・欲しいです。
「それは分かるけど・・・アタシ、これから筋肉増量すんだよ」
ん?まあ、それはそれでいいんじゃないかな?
「こんなドレスは二度と入らないかもしれない」
それがあなたの武装なんだろ?いいんじゃない?
「一旦OKしたのに、筋肉でパツパツになった体を見て幻滅されても困るんだ」
そんなつもりはないよ?
「でもなあ・・・今、鏡を見ると自分の顔が自分じゃなくて驚いてんだよ・・・」
まあ・・・よってたかって化粧してたから・・・普段よりずっと見た目的には美人なことは認めるよ。
でも今日告ったからと言って、その顔というかお化粧に告ったわけじゃないってことは言わせて?
「そうかもしれないけど・・・一方的に惚れられたあとに幻滅されてフラれたらめっちゃショックデカい」
その気持ちは分かるし、大学でもバスケを優先したいって意味なら尊重はするけど・・・とりあえず、保留、ってあり?
「保留?」
要は今の見た目に引っ張られて告白したんじゃないよって、リコさんが筋トレでもなんでもして、そういう体を手に入れるまでは保留。
急かすつもりは無い、と、さっき言ったのに嘘はないので、それまでどの程度かかるかわからないけど、保留。
その後、僕がどうにかして会う機会を作れたとしたら、もう一度申し込むので、それで返事をしてくれればいい。
「なるほど・・・保留ね・・・期限は?」
保留の期限?・・・考えてなかったな。特に理由はないけど三年とかどう?
今から一年だと、まだ運動部で一年じゃフリータイムなんてないだろうし。
「それはあり得るな。その・・・保留中に別の男女がいいな、と思ってしまったら?」
う・・・・・・そうね・・・お互いに好きにするでいいんじゃない?
男女交際のお申し込みが保留中だとすると、交際は開始していないので浮気には相当しないよね?
「しないな。アタシのほうは、多分、新しい出会いはそっち方面ではないと思うけど、武庫川のほうはあるよね?多分。例えば、食い散らかし系の見た目がいい女子が薄着や裸で近付いてくるとか?」
また極端な例を・・・まあ、状況次第でしちゃうかもね。否定はできない。
そんな状況なら、童貞の持て余した性欲を優先することになる可能性があると思う。
「案外、はっきり言うな。まあ、いいけど。じゃあ、保留で」
・・・
あれから、一年半以上、二年は経ってないけど、結構長い間会ってない。
なぜかと言うと、彼女は大忙しで、あの後、高校卒業までの半年では挨拶を交わす程度だったからだ。
なので、彼女が筋肉を蓄えていく様子は見ていた。
まあ、最近は通話くらいはときどきするから、それほど会ってない感はない。
少なくとも『一発アウト』だけはないんじゃないかな、って気はしている。
彼女が指定してきたのは大塚駅南口。まあ、山手線の駅だから、どうやっていけばいいか困ることもないが、なんでこの駅を指定してきたんだろう?とは思った。
逆に指定してくれたんで、いろいろ店とか検索する分には助かったんだけどさ。
・・・
これか・・・神社の石碑。うん、目立っているし、他に待ち合わせスポット的に使っている人もいなさそうだ・・・
しかし・・・38分前か。我ながらハリキリ過ぎってやつか?
・・・
<ピロン>
ん? あ、メッセ来てる。
【早く付きすぎじゃん。アタシ】
いやいや。おれももう付いてるよ。石碑のとこ。送信っと。
【まじか】
まじです。送信っ。
あ、あれか・・・176cmまではオレの身長も伸びてくれたが、彼女は一際デカイ。
いや、デカいだけじゃなくて・・・やっぱ素で美人じゃん。
まあ、あんだけ美人ばかりだと目立たないけど、単体でも美人だよ。
・・・
お久しぶりです。
「お久しぶり!!」




