第十五幕 嫉妬
タニアは少しの間黙っていた、土煙はまだ辺りに立ち込めている。
「ケイト…あなたには…分からないでしょ、私みたいな落ちこぼれの気持ちは…」
「なにを…」
いつも陽気なタニアの口から出るとは思えない言葉に私は絶句する。
「あなたはあたしの欲しいもの全部持ってた…頭もいいし、顔も、スタイルもいい…それに比べてあたしは何をやってもあなたには勝てなかった…ケイトは気づかなかったかもしれないけど、いつもあたしとあなたは比べられてた、優等生のケイトと、落ちこぼれのタニア…それが傍目から見た私達…」
私はタニアの話をただ聞いていた。
頭が真っ白になる。
「それでもね、あたしケイトが嫌いじゃなかった、それどころかずっと憧れてた…あたしもケイトみたいになりたいってずっと思ってた、だからあたしなりにがんばった…でも…」
タニアは俯く。
私はその言葉で思い出す。
そういえばタニアはここに来る前おしゃれに気を使っていた。
お金なんて持っていなかったから手作りのアクセサリーを身につけたりしていたし、化粧にも興味があるようだった。
それに対して私はそういったことに無頓着だった。
勉強のほうもタニアは音を上げながらも根気強くがんばっていた。
こう考えるとタニアは不器用ながら努力家だった。
このときまでわからなかったが、それは私に対するコンプレックスの表れだったのだ。
「…でも無理だった…やっと気付いたの、馬鹿よね、“誰かみたいになる”なんてあたしみたいな不器用な人間に出来るわけなかった…」
タニアは顔を上げる。
その表情は笑っていた、だが同時に涙がその頬を伝っている。
「それに気付いたとき、あたしはケイト、あなたに…嫉妬した」
タニアのその言葉に私は衝撃を受けた。
そしていつも私の傍らで笑っていた彼女がどんな思いをしていたのか初めて気付いた。
「あたし、ケイトが憎いと思った…」
「なに…何言ってるのタニア、私たち…私たち家族じゃない!」
泣き笑いの表情のままのタニアに向け私は半ば叫んだ。
引き裂かれたような心の痛みに涙が溢れ出る。
そのときだった。
タニアの後ろで立ち込めている土煙を割って男がまるで地を這う弾丸のようにこちらに駆けてくる。
私の様子に気付いてタニアが振り向いたそのとき、何かが私の鼻先を掠めて横切る。
それが男の剣の切っ先だと理解したときには、タニアの胴は真っ二つ切り裂かれていた。
タニアの上半身が地面に落ち、下半身から吹き出し撒き散らされた血が雨のように私に降りかかり、下半身がゆっくりと倒れる。
男は、さらに剣を振り上げた。
そして、それをタニアの上半身に振り下ろそうとする。
私は、その間に飛び込んだ。




