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「おい、聞いてるのか? すましてんじゃねぇよ! 内心ビビリまくってんだろ。おん? ひゃひゃひゃ、お前がこれからすることを当ててやろうか? どうせここから俺をコントロールするためにデタラメなハッタリを言い出す。そんで俺を動揺させて攻撃を躊躇させる。ん? 違うか? お前さ、俺がスキル発動してから一度も攻撃してこないよな? それは自身の身体能力がバレたくない、自分から攻撃をすれば実力差がハッキリしてしまう。それを知られたくなくて攻撃できないんだろ? ん? ん? ばーか、ぜーんぶバレてんだよ! これからお前が何を言おうが関係ねぇ! 今からお前をぶちのめしてやるからよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
――ワタシはこれを待っている。『三度目となる』このイキリ発言を。ワタシの読みでは、次にクソ野郎が動き出したとき、まずこの発言が出るはずだ。その理由は、時間戻しの限界がこの時点だと思うからである。ずっと疑問に感じていた。二人のやり取りと見ていたら、クソ野郎が苦境に立たされる原因は紛れもなく『マサオ化』であること。もしいくらでも時間を戻せているなら、間違いなく問題となっている『マサオ化』になる前のクソ野郎まで戻すはずなのだ。最初は、マサオに特別な何かがあって戻せないとも考えたが、今思えばガワの『時間戻し』の戻し幅もまた小さいのである。もしかしたら『時間戻し』というシステム介入、無尽蔵に戻せるわけではないのかもしれない。
もうひとつ現在使用しているスキルを手放したくないという理由で『マサオ化』前まで戻さなかった可能性も考えたが、クソ野郎と第三者の間では意思疎通ができる、感情を持つ前のクソ野郎まで戻したとしてもこのスキルは使用できるはずなのだ。要するに疑問が残る時間戻しには何かがあるってことだ。もしワタシの推理が当たっていれば、もう一度これが聞けるはす……こんなことを考え始めてから、そこそこの時間が経った。しかしまだクソ野郎のイキリボイスは聞こえてこない。前回と前々回の時間戻しから考えても時間がかかり過ぎている。時間戻しに時間がかかるとは……なんともおかなしな話だ……。
クソ野郎がピタッと止まってから、かなりの時間が経った。まだクソ野郎の声は聞こえてこない。動き出したらまずあの発言がくるはずなのだが……だんだんと不安になってきた。これまで発言だけに集中し過ぎて、当の本人の姿を見ていなかった。思い立って視界の中にクソ野郎を映し出すと、ワタシの時が止まったような感覚を受ける。なんと……クソ野郎は……もうすでに動き出していた……。
あのイキリ発言もなく、黙ったまま動いている。クソ野郎はずっと自分の手を見ている。あまりに自然な動きすぎて動いていることに気づけなかった。動き出したリアクションが無く、静かに動く、このパターンは初めてである。推理が外れ、頭の中は混乱状態となる。『時間戻し』に制限なんてなかった……都合のいいように考えすぎた……それならあの『時間戻し』は何だったのか……考えが一気に押し寄せてくる。
それよりもワタシを驚愕させたのは……これまで無表情を貫き通してきたクラリスの顔が……驚きの表情をうかべていることだった――。




