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 ――何が起きた……?


 再現存するために封鎖エリアから出ようと、ほんの一瞬だけ目を離した間に大きく事態は変化していた。状況の変化に全く順応できていない。こういう時はパニックにならず、疑問点だけを考えずに並べて、ひとつずつ考えたほうが良い。


 まず最初に疑問に思うことは、なぜクソ野郎が吹っ飛んでいるのか。その原因は不明だが、己の意思で飛んでないことはクソ野郎の表情から明らかだった。視界に入った時ひどく歪んでいた顔、その歪みが戻っても表情に変化が生まれなかった。もし攻撃によって吹っ飛んでいるなら、マサオ化している現在、それなりの表情になるはずだ。これは推測になってしまうが、クソ野郎もまた自分に何が起きているのか理解できていないのではないだろうか。


 次の疑問は、クラリスが今いる場所だ。これは単に、クラリスが移動しただけのことなのだが、移動した場所に問題がある。あの場所は、目を離す前クソ野郎が立っていた場所、そこにクラリスが立っている。状況だけ言うと、クラリスがそこにやってきて、クソ野郎がその場所を離れたってことである。自分でも頭の悪いことを言っているのは重々に理解している。分かりきったことを一つずつ紐解かないとこの状況を理解することができないのである。


 ――で、話は戻るが、なぜクソ野郎は吹っ飛んだのか……導かれる答えは……クラリスが力づくに吹っ飛ばしたってことになってしまう……。


 いやいや、もちろんそんなことは見た瞬間に想像できたことだ。クソ野郎のいた場所にクラリスが立っていたのだから、状況的にクラリスがクソ野郎に何かをして吹っ飛んだようにしか見えないのである。そんな分かりきったことをなぜ長々と語っていたかというと、そんな状況はありえないからである。これまで散々言っているが、クソ野郎の身体能力はスキル発動によりクラリスの約4倍ある。そこまでの差になってしまうと、クラリスから攻撃を仕掛けたとしても、クソ野郎からしたら止まっているようにしか見えない。避けることはもちろん、カウンターで返すことも容易である。それなのになぜかクソ野郎だけが吹っ飛んでいる。意味がわからない。システム介入とも考えたが、もしそうならクラリスが移動している説明がつかない。システム介入なら移動せずとも吹き飛ばすことなんて簡単だ。物理的に移動する必要がないのある。


 はっきり言って、クラリスがクソ野郎に攻撃を加えて吹っ飛ばしたとしか見えない。しかし、そんなことができる状況ではなかったはずだ。もしそんなことができるなら、これまでのクラリスの行動は何だったのかってことになってしまう。実は身体能力を隠しいるだけで、本当はクソ野郎の身体能力よりも高く物理的に勝てる。もしそうなら、これまでのクソ野郎のマサオ化だったり、言葉巧みにコントロールしたりと、実際はやる必要なんてなかったことになる。ただただクソ野郎をぶん殴って勝てばいいだけなのだから……。


 腑に落ちないことに頭を悩ませていると、クラリスが佇む風景が妙に気になった。ここは山脈に囲まれた森の奥にある平原、戦闘によって山ひとつ消えている。これまであまり意識してこなかったが、目を離す前と後で何かが違うように感じる。具体的に何が違うと指摘できないが、妙な違和感がある――。

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