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ここで注目されるのがクラリスの表情である。不気味なほど表情を変えない。これほど表情を変えないことがあっただろうか。これまで表情ひとつで相手の感情を揺さぶり、その行動までコントロールしてきた。で、突然の第三者参戦が起きる。普通なら驚き戸惑いそんな表情を見せるのが自然な形だと思うが、クラリスはそれすらしていないのだ。ある意味、この反応は不自然である。
考えられるのはふたつ。ひとつは、第三者の参戦は想定済み、驚き戸惑いといった感情はなく、感情で駆け引きする相手でないことをいち早く察知して表情を変えていないだけ。もうひとつは、考えが読まれないように素の感情を表に出してこなかったクラリスだけに、予期してないことにひどく動揺して悟られないように表情を隠している。
正直、後者の可能性が高いと見ている。仮に動揺していたとしても、クラリスならそれなりの対処を行っている。あえて笑みを浮かべり、わざとらしく驚いたり、何らかのリアクションは起こすはずだ。それなのに、それすらしていない。もしかしたら、表情を変える余裕すらないくらい追い詰められているのかもしれない。
ちょっと気になっていることがある。スキルによる人体崩壊からの復活、腕に仕込んだ仕掛けの発動、さすがに早すぎる気がする。たしかに動揺させることには成功しているが、結局のところ仕掛けは解除され、クソ野郎は元通りに復活している。『第三者の介入』『限定的な時間コントロール』は、クラリスなら気づいていたはずだ。それなのに、なぜあのタイミングで仕掛けを発動させたのか疑問が残っている。あの仕掛けは、クラリスからしたら最後に残された秘策だったはず。それなのに第三者が判明する前に使用している。使用するなら第三者が判明して倒す算段が整うまで使用は控えるべきではなかったのか。『変化しない表情』『早すぎる仕掛け』もしかしたらクラリスは冷静さを失っているのかもしれない。
ただ、これ以上ないくらいクソ野郎に動揺を与えている。すぐに復活したとしても動揺は消えることはない。戦意を失ったクソ野郎など怖くもなんともない。個人的に危惧しているだけで、あのタイミングで間違っていなかったかもしれない。第三者のせいで悪い方へ悪い方へと考えてしまう。これがただの杞憂で済めば良いのだが……。
考えすぎで心配性になっていると、ようやくクソ野郎が動き出す。あの時と同様、不自然な形での復活。涙と鼻水を垂れ流し、怯えきっていたクソ野郎は……。
「おい、聞いてるのか? すましてんじゃねぇよ! 内心ビビリまくってんだろ。おん? ひゃひゃひゃ、お前がこれからすることを当ててやろうか? どうせここから俺をコントロールするためにデタラメなハッタリを言い出す。そんで俺を動揺させて攻撃を躊躇させる。ん? 違うか? お前さ、俺がスキル発動してから一度も攻撃してこないよな? それは自身の身体能力がバレたくない、自分から攻撃をすれば実力差がハッキリしてしまう。それを知られたくなくて攻撃できないんだろ? ん? ん? ばーか、ぜーんぶバレてんだよ! これからお前が何を言おうが関係ねぇ! 今からお前をぶちのめしてやるからよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
これが完全に戦意を失ったクソ野郎の第一声である――。




