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地面に染み込んだ血が次々と浮き上がり球体となって宙を舞う。そして持ち主であるクソ野郎へと戻っていく。全く同じ現象が起きている。これは個体限定による『時間戻り』だ。第三者による介入である。クラリスはもはやクソ野郎が相手ではないのだ。謎の第三者との戦いへ移行している。問題はクラリスがそれを正確に認識しているのか。今後クソ野郎を動揺させても、第三者の介入によって意味をなさない状態になるかもしれないってことに気づいてるかどうかである……。
吹き出した血は順調にクソ野郎の腕に戻っている。で、ここで気になったのが、クラリスが握っている腕の動向である。時間が戻っているならクラリスが強く握っていたとしても関係なく戻るはずだが、もしクラリスがそれに抗った場合どのようなことが起こるのか。それを確かめるためにも腕の動向に注目している。そう考えている矢先、腕に異変が起きる。強く握られた腕は突如として腕の形状を失う。固体だった腕が細かい粒子に変化したのだ。形状を失った腕は何事もなくクラリスの手から離れ、そのままクソ野郎の切断部へと戻っていく。
ただの時間戻りではないことは一目瞭然だった。時間操作と同時に形状変化も行われている。なぜそんなことをする必要があったのか、そう考えた瞬間には答えは出ていた。もしあのまま戻してもシステム介入が細工された腕が戻るだけ、クラリスの好きなタイミングで切断ができる状態だったのである。ロザの腕を粒子レベルまで変化させることでロザの腕という固体はシステムから消えた。システム介入はロザの腕という固体に対して行われたもの、その対象を失った場合システム介入は実行されないのである。システムのことを完璧に理解してないとその発想は出てこない。第三者の意図が『ワタシ』には理解できた。
粒子となっていた腕が切断面まで近づくと、その形状を変化させる。細かな粒子が次々と集まり腕の形状へと変化していく。そしてロザの腕は元通りとなる。これは……もはや『無敵』である。用意周到に策をめぐらせても無敵相手には意味がない。こんな相手にどう戦えばいいのか、ワタシには何も思いつかない。お手上げな状態の中、クラリスは今回の件を目の当たりにしても、その表情に変化が見られなかった。握っていた腕が粒子に変化しても、少し視線を向けるだけで驚きもしなかった。クラリスは何を考えているのか、こんな相手でも勝てる策がまだあるのか、ワタシの『興味』は……そこだけに注ぎ込まれている――。




