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スキル発動による人体崩壊、からの突然の復活、これだけのことが起こりながらクラリスは驚くどころか眉ひとつ動かしていない。この反応に違和感いや不気味さえおぼえる。クラリスにとって想定済みだったのか、それとも動揺を察知されないよう誤魔化しているだけなのか、クラリスの考えはわからない。ただ、この状況は心理戦でどうにかなるレベルを遥かに超えている。クソ野郎がここから戦わないという選択肢はない。精神状態はマサオのままだから言葉巧みに操ることはできるかもしれないが、ただスキル発動による自爆の選択肢は消えた。クラリスにクソ野郎を消去するだけの手立てはない。さらにクソ野郎だけが相手でない。『世界のことわり』さえ凌駕する相手が登場したのだ。いくらクラリスでもどうにもできない状況に陥っているはずなのだ……。
「おい、聞いてるのか? すましてんじゃねぇよ! 内心ビビリまくってんだろ。おん? ひゃひゃひゃ、お前がこれからすることを当ててやろうか? どうせここから俺をコントロールするためにデタラメなハッタリを言い出す。そんで俺を動揺させて攻撃を躊躇させる。ん? 違うか? お前さ、俺がスキル発動してから一度も攻撃してこないよな? それは自身の身体能力がバレたくない、自分から攻撃をすれば実力差がハッキリしてしまう。それを知られたくなくて攻撃できないんだろ? ん? ん? ばーか、ぜーんぶバレてんだよ! これからお前が何を言おうが関係ねぇ! 今からお前をぶちのめしてやるからよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
大量のプラズマを放出しながらクソ野郎は両腕を振り上げてそう叫んだ。その時だった。ある異変に気づく。高らかに吠えるクソ野郎の顔の上に、ぽたりぽたりと何かが滴り落ちている。
「は? なにこれ? 血……? どこから……?」
そうつぶやくと、クソ野郎は振り上げた腕に目をやった。すると……振り上げたはずの右腕がなぜか無く、失った部分から大量の血が吹き出している。
「え? え? え? どどど、どういうこと……?」
震える唇でそう口に出した瞬間、ある光景を思い出す。あれは……ロザからクソ野郎が登場し、無機質だったクソ野郎に感情を植え付けるきっかけとなった光景である。あの時も誰も気づかないところでクソ野郎は腕を失った。そしてクラリスがそれを持っていた。その記憶が頭をよぎった時、無意識にクラリスに目をやった。
そこには……あの時と全く同じ光景が広がっていた。切り口から血が滴るクソ野郎の腕を……クラリスは黙って持っていた。もう意味がわからない。状況が理解できない。そんな混乱する頭をなだめるより早くクラリスの口がうごく。
「なあ? 汚い手で余に触れんでくれるかのう……」
人間の腕を握ったまま、小さな少女はそう言った――。




