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 以前からほのめかしていた『あの方々』とは一体だれなのか。その口ぶりから察するに、クラリス消去をやらしているのは『あの方々』ってことになる。管理者だったクラリスの代わりにクソ野郎を送り込んだ。とどのつまり今回の件、裏で糸引いているのは全部『あの方々』ってことになる。もしそうだとすると、これまで戦っていたクソ野郎を消去してもまだ終わらないってことを意味している。


 この場に現れない正体不明の相手とどう戦えばいいのか。いくらクラリスでもこの世界に存在していない相手と戦うことなんてできない。さらにクソ野郎に対して行われた復元、範囲を限定した時間戻しに間違いない。時間のコントロールなんてシステム介入でも深層システムにアクセスしないとできない介入だ。もちろんワタシにできるわけなく、それをこの世界に存在せず実行するなんて想像もつかない。さらにここはシステム介入禁止エリアであり、その『ことわり』さえ無視している。どう考えてもクラリスが相手できる範疇を超えている。


 圧倒的凄さを見せつけたクラリスからのコレである。クラリスがこの場すべてをコントロールしているなら、マサオはまだ生きているという希望を持ち続けることができた。しかしここで反則レベルな相手が出てくるなんて酷すぎる。クラリスが負ける、それはマサオの死を受け止めないといけなくなる。ささやかな希望になってしまうが、クラリスの勝利にすがる以外ワタシに選択肢はない。


「ギャハハハ! おい、これを見てみろよ!」


 落ち込んでいるところにクソ野郎の弾む声が聞こえてくる。クソ野郎は全身にプラズマを纏わせた。例の身体強化スキルである。そして発動させた直後に、すぐさまそれを消してみせた。たしか発動させたら最後だったはず……。


「おい、見たか? 発動させても自由に解除できるようになったぜ! あと、ここもよーく見てみろ!」


 クソ野郎がそう言うと、ふたたび例のスキルを発動させ、おもむろに自分の頬を擦り始めた。纏うプラズマのバチバチという音がワタシの精神を疲弊させていく。


「人体の崩壊が始まらないんだよ! んほほほ、これで完璧なスキルとなったわけなんだがっ! うひょー最高な気分だぜ! あとさあとさ、これも見てくれよ!」


 はしゃいでいるクソ野郎はスキル発動したままパッと目の前から消える。動き出した瞬間が分からなかった。クソ野郎がいた場所から小さな土煙が上がっているだけだった。次の瞬間、クラリスのすぐ後ろにクソ野郎は立ち、その右手を小さな肩にポンと置いた。


「ふふふ……お前が問題にしていた身体強化に対してのコントロールも完璧にしてくれたよ。んふふふ……このままお前を消去してやってもいいのだが、それじゃーつまらねぇよな? お前の泣き叫ぶ声を聞かねぇともう終われねぇんだよ……」


 クラリスの耳元まで近づきそう囁くと、クソ野郎は再び高速移動で元の場所に戻った。ヤツの言うとおり、あの身体能力を完璧にコントロールしている。動き出した地面にはヒビひとつない。終わった……率直な感想だった。こうなったらどうにもならない。ここからコントロールなんて無理だ。圧倒的チカラを身につけてしまったクソ野郎に為す術がない。そんな状況に陥っているはずなのに……クラリスは俯くことなく真っ直ぐ前を見ていた――。

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