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 クソ野郎から落ちた皮膚や汗そしてその他諸々、次々と元の居場所へと戻っていく。そのスピードは最初こそ分からないくらいゆっくりだったが、だんだんと速くなり気づけば目で追えないほどのスピードまでなった。戻るスピードが速すぎてクソ野郎の周囲は霧に包まれたようになる。そしてクソ野郎の姿が視認できなくなった。


「……ん? なんじゃ?」


 ようやくこの異変に気づいたのか、クラリスから声があがる。間近から観察できたから先に気づけたようなもので、クラリスからの距離だとクソ野郎がとつぜん霧に包まれたようにしか見えなかっただろう。ということは『クソ野郎だけが時間が戻っている』このことにクラリスはまだ気づいていないってことだ。これは彼女にとって非常にまずい展開となったといえるだろう。霧の要因が落ちた皮膚や汗だということに気づけないと、時間が戻っていることにはたどり着けないからだ。


 今回の戦いは、感情をどうコントロールするか、つまりクソ野郎をどう『マサオ化』させるかが勝負の鍵となった。もし時間戻しが事実だとするならクソ野郎をマサオ化する前まで戻すことだってできる。そうなってしまうとクラリスに勝機はなくなる。簡単な話、クソ野郎はマサオ化にさえならなければ勝てるのだ。さらに、この展開を引き起こしているのがクソ野郎本人ではなく第三者が介入している恐れが高いことだ。クソ野郎だけが相手ならこの展開もまた想定してる可能性もあるが、第三者となるとさすがのクラリスでも想定するのは不可能である。もし第三者の介入があったとして、その場合システム封鎖エリアでシステム介入を行っていることを意味していた。どういうことかと言うと、世界の『ことわり』を無視しているってことだ。クソ野郎がどうこうの話なんてどうでもよくなって、そんなことができる存在が現れた場合、世界のことわりに沿ってしか動けないクラリスに対抗手段なんて皆無だ。これはワタシの杞憂かもしれないが、どうしてもこの時間戻しはクソ野郎がやっているようには思えないのある。


 クソ野郎の周囲を纏っていた霧がだんだんと薄くなっている。つまりクソ野郎が落としたモノすべて戻りつつあるってことだ。完全に戻った瞬間、クソ野郎は復活するだろう。ワタシの予想ではマサオ化される前のクソ野郎、無機質だったころのクソ野郎に戻ってるはずだ。


 あれこれ考えていると、霧は完全に消えていた。ワタシは考えるよりも早くクソ野郎に接近してその姿を凝視する。やはり予想してたとおり、ぼろぼろだったロザの肌は崩壊する前に戻っている。さらに髪の色もスキルを発動する前の色に戻っていた。時間戻しで間違いない、そう確信した瞬間だった。


「えっ……? あれ……? ど、どういうことだ……? 『俺』は……どうなったんだ……」


 クソ野郎がそう発した。想定した反応とまるで違う。無機質だった頃のクソ野郎だとばかり予想していたが……なぜかマサオ化のまま復活している――。

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