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「あっ……」
そんな声をこぼすクソ野郎、その時が来てしまった。身体強化のスキルが解除された、と同時にロザの体に異変が始まった。シワひとつなかった肌に次々と亀裂が入る。亀裂が入った部分から粉状となって地面に落ちていく。土で固めたものが日に当たり砂になって崩れるように、ロザの体も砂のように崩れ始める。もうこれでクソ野郎に選ぶ道はなくなった。今すぐ封鎖を解除して別の個体に移動しないと、クソ野郎は移動先がなくなり消滅してしまう。
クラリスの狙い通りになったと言うべきなのか、だがひとつだけ気になることがあった。封鎖解除を狙っていたとするなら、最後の一言は余計だった気がする。解除を惑わせるようなことを言わなければ、何も悩まずにクソ野郎は封鎖を解除していた。それなのになぜあんなことを言ったのか、それだけが引っかかっている。
「はぁ……はぁ……ま、ますい……このガワは限界だ……はぁはぁ……この俺が消去されるわけには……はぁはぁはぁはぁ……」
苦しそうに息を荒げながら口にするクソ野郎、言い終えたあと立っていることにも限界がきたらしく崩れるように膝をつく。勇者ロザの姿は見ていられない。己の体は奪われ、そして自分の意志とは関係なく戦わされて死んでいく……世界を管理する者たちによって理不尽に……こんなことが許されていいのか……ワタシの中に『ある感情』が生まれた瞬間だった。
ロザの中に居座っているクソ野郎を睨みつけた後、ワタシはクラリスに目をやった。このままいけばシステム封鎖は解除される。彼女の計画通りに進む、さぞ満足げに笑みを浮かべているのだろう……ところが、そこにはワタシが予想した顔とはまるで違った。笑みなんて一切なく、眉間にシワをよせるクラリスがいた。何か心配事でもあるのか、どこか落ち着かない様子で額に汗までかいている。システム解除後はクラリスの方が有利なはずだ。それなのになぜ今そんな顔をしているのか。クラリスの表情に戸惑っていると、クソ野郎から絞り出すような声が聞こえてくる。
「はぁはぁはぁはぁ……もう考えている時間なんてない……はぁはぁはぁはぁ……解除後アイツが何をしてこようが関係ない……はぁはぁはぁはぁ……だって……だって……消去されるなんていやだ……はぁはぁはぁはぁ……後がどうなろうがどうでもいい……俺は……俺は……解除す――」
クソ野郎がそこまで口に出すと、とつぜん発言が止まった。一瞬なにが起きたのか分からずにいると、クソ野郎はそのまま動かくなってしまう――。




