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クラリスによる終了宣言にワタシは戸惑った。彼女の言ったことが本当ならば、最初からこの筋書きは描かれていたことになる。しかも、そのとおりに全てが実行されたってことにもなるわけだが、その場合マサオはどうなってしまうのか。あとクソ野郎が負けたというには無理があるように感じている。その理由は、クソ野郎がまだ『消去』されていないからである。クラリスはクソ野郎の選択を否定していたが、実際には消去することは不可能だと思っている。本当の終焉は、クソ野郎自体を消去しないと終われないはずだ。しかしクソ野郎を消去する方法はない。いま乗っ取っているロザの体を消し去っても、クソ野郎は別の個体へと移動するだけ。この戦いは永遠に終わらない。もしかしてそのまま放置してもいいと考えているのか。もしそうなら今回のような戦いが永遠に続くことを意味するわけだが……。
クラリスの言動に疑問を抱いていると、あっけに取られていたクソ野郎の顔がまた赤く変色していった。無機質だったクソ野郎とは別人のように、その顔色で感情は丸わかりとなっている。クソ野郎は首筋に血管をうかべて小刻みに震えている。
「ふざけんじゃねぇぇぇぇぇ!! なーにが終わりだよ! まだ何も終わってねえんだよ! ペラペラと得意気に語りやがって、すべて思い通りにいきました、みたいにほざいてんじゃねぇよ! 俺がマサオの演技をしていたと言った時はひどく動揺してたよな? あ? どうせ後付けでホラ吹いているんだけなんだろ? そもそも最初から仕組んでるわけねぇんだよっ!」
息を切らせながらクソ野郎は怒鳴る。クラリスは表情を変えず背を向けたままで応える。
「はぁ……感情に支配されすぎて、考える余裕もなくなってしまったか。マサオの演技で動揺したとか言っておるが、それも余がそう思いつくように、マサオの中に仕組んでいたとは考えないもんかねぇ……」
「な、なに? そんなわけ……」
「余はさっきも言ったぞ。動揺はすぐに耐性ができてしまうと。感情を完全に浸透させるには、二段階に分けて強い動揺、つまりパニックを引き起こさせないといけない。まず最初にやったのは、完全優位となるスキルを発動をさせてから避けてみせること。で、二段階目となるわけじゃが、ここでさらなる強化スキル発動させて余が避けてもみせてもな、さきほど程の効果は得られんし、まずパニックにはならん。予想できるし、お主は避けられたという動揺の耐性もあるからのう。その場合、一旦リセットさせる必要がある。今回の場合、余を動揺させて優位になったと誤解させることで、お主は動揺しやすい状況となったわけじゃよ。んで、どうじゃ、ここまで言えば理解できるじゃろ?」
淡々に答える言葉に、クソ野郎はひどく動揺し、小刻みな震えは更にひどくなる。その後、何かを言い返そうとして慌てるように口にする。
「あ、あ、あっそうだ! まだ俺は消去されてねえぞ! この戦いはな、どっちかが消去されるまで終わらねぇんだっ! お前が勝ったって言いたいなら、今すぐにかかってこい!」
「完全に人間の考え方に染まってしまったみたいじゃのう。わからんようじゃから教えてやる。そのスキルを使用した時点で、この戦いは終わっておる。お主も言っておったが、そのスキルはお主のガワを崩壊させる。んで、わざわざ攻撃せんでも勝手に消去できるわけじゃが……」
「んなこと百も承知だわ! でもよ、忘れちゃいないか? このガワを失っても俺は消去されたわけじゃないんだぜ! この場さえ乗り切ればいいなんて考えているわけじゃねぇよな?」
気になっていたことをクソ野郎は言った。そこが一番大事なところである。どう考えてもクソ野郎を消去することはできない。クラリスはどうするつもりなのか。そこを注視していると、クソ野郎を背にしたままクラリスは微笑む。
「ふっ……まだ消去されんと思っておるのか? ふふっ……余はのう……それを『含めて』終わったと言ったつもりなのじゃが……」
さらッとクラリスは言い放った――。




