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転生した社畜OL~学園ライフを謳歌しようとしたら、ドキドキが止まらないのですが…~  作者: 竜胆マコト


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第7章 属性鑑定につき、ケンカにご注意ください

1年Sクラスのクラスメイトたちと対面し、女友達ができたシエン。

お昼休み時間に午後のオリエンテーションについて話し合うが…?

―昼休み―


「ねぇねぇ、この後のオリエンテーションって何やるんだっけー」


昼休憩に入り、食堂で日替わりランチの魚のムニエルをつつきながら、シャーリーが呑気に呟いている。


「午後1時から『魔属性鑑定』をする予定だよ。この『魔属性鑑定』で自分がどの属性なのか、分かるらしいよ」


私はシャーリーに優しく声をかけた。


「シャーリー、お前『入学のしおり』に書いてあっただろ。持ってきてないのか」


「んーとね…家に忘れたっぽい。お願いシーちゃん、ちょっとだけ見せてー」


「やれやれ、しょうがないなぁ。見終わったらちゃんと返してね」


「ういー、あざーす」


シャーリーはとてもマイペースだが憎めない性格なので、これはこれで良しとする。


それと、頼られるのも案外悪くないなとも思った。ただし、甘やかすのは禁物だ。


「ハッ、雑魚が。『入学のしおり』を忘れたら何もできねーだろうが」


声がするほうへ振り向くとガイルとロックスが居た。


「おい、ガイル。言い過ぎ。俺らだって完璧じゃないんだから、忘れることの一つや二つはあるだろ。それにお前、教室で寝過ごして俺に起こされるまでずっと寝てたじゃん。声かけても起きないから、揺すってやったら今度はキレるし」


ガイルの暴言をロックスが諫める。


「あ、お前バラすなよ…」ガイルはバツが悪そうな顔をしている。


「教室で昼寝?…ねえ、ガイル君。君さ、最近よく眠れてる?」


私は気になってつい質問してしまった。いつもの悪い癖だ。


「あぁ?…まあ、寮生活が始まって、枕変わってから、あんまり寝つきはよくねぇな」


「きっと環境変化による睡眠不足だね。運動したり、朝日を浴びる生活を送ることで徐々に改善されると思うけど、下手に続くようなら保健医の先生とかに相談したほうがいいかもしれない」


「はぁ?んだそりゃ…余計なお世話だバーカ」


いちいち腹立つなあ、この男子…質問しなきゃよかったかな。


「ロックス、お前らもう昼飯食ったのか?」


シンリーが機転を利かせて話題を逸らした。


「おう。もう食べ終わって、校内見て周ろうって話してたんだ。じゃあまた後でな」


去ろうとする二人に咄嗟に私はガイルに声をかけた。


「ガイル君。私の忠告を無視するのはいいけど…放っておくと、大変なことになりますよ?」


「ならねーよ、アホ女」


捨て台詞を吐いて、ガイルはさっさとどこかへ行ってしまった。


その後を「ごめんな!」を謝りながらロックスが追っていく。


あー!やっぱり腹立つなぁ。何なんだあの生意気なガキは!絶対許さん!


「シーちゃん、ガイルと仲良いねぇ」


「え、今のどこに仲良い要素があったの?思いっきり馬鹿にされてたんだけど」


「それにしても、よくガイルが睡眠不足だって分かったな。シエンは健康に関する知識が豊富なのか?」


シンリーが感心しながら尋ねてきた。


「それほどでも…一応、健康や美容の知識もそれなりにはあるよ。ガイルの場合、声を掛けても中々起きないっていうのと、枕が変わって寝つきが悪いっていうのが気になった。睡眠不足については所説あるけどね」


「ほうほう。詳しいことはよくわからんが、ガイルはおネムで、シーちゃんに甘えたかったんだな」


シャーリーが意味不明なことを言ってきた。この子は独特の解釈をする子のようだ。


「う~ん?甘えたかったかどうかは別だと思うよ?シャーリーはやけに私とガイルをくっつけたがるね」


「ガイルの気持ちは知らないが、言われてみれば確かにアイツ、目が充血していたような気がするな」


シンリーも中々良い観察眼をお持ちのようだ。


「コンディションが良くない状態で、あまり無茶しなきゃいいけど。ま、他人のことだから別にどうでもいいけどね」


それからお昼を食べ終え、私たちは午後からの『魔属性鑑定』を受けるために、中央広場へと向かった。


*****


プリムラ魔術学園では入学初日に『魔属性鑑定』を行うのが慣例となっている。


分館付近の中央広場には、1学年全員が集められていた。


先ほどあったクラス発表の掲示板が撤去され、小高い壇上が設置されており、壇上の上には人の頭くらいの大きな水晶玉が乗っかっている。


「皆さん、お静かに!これより『魔属性鑑定』を行います。その前に、デューイ先生より『魔属性』についての講義がありますので、良く聞いてください」


司会の女性教師は、拡声器を恐る恐るデューイ先生に渡して、足早に壇上の隅っこへと戻った。


「諸君。それではこれより『魔属性』について説明する。一度しか言わないので、よく聞くように。」


デューイ先生の説明は次のような内容だった。


―この世界には属性というものがあり、木・火・土・金・水・風の6つである。


それぞれ属性の特徴について解説すると、木は樹木や草花を操る魔術。


そして回復魔法を得意とする魔術である。


火は火球を飛ばすなど、炎の攻撃を得意とする魔術である。


土は土の壁を作ったり、地面を変形するなどを得意とする魔術。


金は手足から刃物を出したり、銃器などを創造できる魔術。


水は氷を操る魔術である。対象物を凍らせたり、氷柱を飛ばすなどの攻撃を得意とする。


風は突風や竜巻の攻撃を得意とする魔術である。


一般的に金や木の属性はごく少数で、ほとんどの魔族は火・土・水・風の属性の者が多い。次に、属性の強さについては、金>土>火>水>風>木の順で、金が一番強く、木が一番弱いとされる。


しかし、木属性でも魔力が強く戦いの前線で活躍している魔族も中には居る。


属性の強さはあくまで一般論にすぎない。


また、主となる属性から複数の属性の魔力を使いこなすことも可能である。


もっとも大切なのは、自分の魔力属性と特殊スキルをいかに上手に掛け合わせるかだ―。


「説明は以上だ。ではこれより、一人ずつ壇上に上がってもらい、鑑定を行う。

なお、自分の順番が来ないからといって、騒いだり遊んだりすることのないように」


ギロっと睨みを利かせ、コホンとわざとらしく咳払いをするデューイ先生。


相変わらずの鬼教師っぷりである。


「それでは、これより『魔属性鑑定』を行います。順番はEクラス・Dクラス・Cクラス・Bクラス・Aクラス・Sクラスの順で行います。鑑定が終了した生徒は、速やかに自分の教室へ戻ってください」


デューイ先生の解説が終わった後、女性教師が進行役を務め、属性鑑定が始まった。


「うへー、僕ら最後じゃん。この待ち時間の間、何するー?」


シャーリーが順番発表を聞いて、嫌そうな顔をしている。


「一応、トイレ休憩や水分補給は問題ないみたいだから、いったん教室戻る?」


「そうしようぜ。長丁場で疲弊するのはごめんだからな」


私とシンリーが移動しようとすると、レインが話しかけてきた。


「あ、あの…私もご一緒して、いいですか…?」


レインがおずおずと私たちに訊ねる。


「もちろん、いいよ。一緒に戻ろう」


こうして私たち4人は一度教室へと戻ることにした。


教室へ戻るとトーマ・イベリスとジャイロ・カンパヌラが席に座っていた。


「あれ、二人も教室に戻ってきたんだね」


私はトーマに声をかけてみたが、トーマはこちらを見向きもせず、本を読んでいる。


始め見た時はクールな印象だったけど、一人が好きなタイプかな。


私と同じ鬼人でライトグリーン色のショートカットヘアに、ダークブラウンの瞳をしている。


「広場に居てもすることがないからな。それにこの棟の3階からなら、広場の様子も見れるし。俺がトーマを教室へ誘ったんだ」


トーマの代わりにジャイロが答えてくれた。


ジャイロの種族はリザードマン。全身の皮膚が硬いモスグリーンの鱗で覆われている。


見た目はいかつい感じがするが、優しそうな青年だ。


「本当だ。教室の窓から広場の様子が見れるね。それに『魔属性鑑定』って言っても、水晶玉に手をかざすだけだから、すぐ終わっちゃうよね」


魔属性鑑定の様子を皆で観察する。


どうやら緑色は風属性、黄色は土属性、赤色は火属性、青色は水属性のようだ。


デューイ先生の言ったとおり、金属性と木属性は稀なのだろう。


今までそれらしい光の色は出てきていない。


「そうだな。お、もうCクラスが終わったみたいだな。次はBクラスだから、そろそろ広場へ戻ろうか」


ジャイロが穏やかに言うと、トーマも本をパタンと閉じて席を立つ。


「思うんだけどさ…ガイルもジャイロの爪の垢を煎じて飲めばいいのにね」


シンリーが目を丸くして私を見る。


「お前でも、毒を吐いたりするんだな…」と彼女は呟くのだった。


一方、ガイルはその頃、くしゃみをしていたとか、いなかったとか。


「では最後は、Sクラスの皆さんです。名前を呼ばれた方から水晶玉に手をかざしてください。ではトーマ・イベリスさん。前へ」


進行役の女性教師が声をかける。


トーマは「はい」と短く答えて壇上に上がる。


水晶玉に手をかざすとグリーン色に水晶が光り出した。


「トーマ・イベリス、風属性」


鑑定結果を淡々とデューイ先生が告げる。


それから次々と名前を呼ばれて、水晶玉に手をかざす。


ちなみに結果は次のとおりだ。


シンリー・カムロサザ=風属性。ジャイロ・カンパヌラ=土属性。

クランベリー・スパイラキシス=火属性。


ここまでは順調に鑑定が進んだ。


「次、ガイル・ダイアンサス」


ガイルが呼ばれ、水晶玉に手をかざそうとした。


学年主席は果たして何属性だろう…?火か土属性当りかな…。


Sクラスの全員が、ガイルの手元を凝視する。


「おい、見世物じゃねーんだ。ジロジロ見んな、アホ共!」


「ダイアンサスさん。心を落ち着かせて、水晶玉に手をかざしてください」


進行役の女性教師がすかさずガイルを注意する。


「チッ…分かってるっつーの…」


しばらくして、ガイルのかざした水晶玉からオレンジ色の光が現れた。


「これは…デューイ先生!」女性教師が驚きの表情でデューイ先生に話しかける。


「ああ。実に珍しい…ガイル・ダイアンサス。金属性」


周りに残っていた生徒たちも驚きを隠せないでいた。


「おい、金属性って、一番強い属性だよな。さっきデューイ先生が言ってた…」


「さすが、主席で入学するやつは違うなー」


周囲の賞賛が嬉しいのか、ガイルは少しニヤついている。


「ハッ。当然の結果だろ」


「騒ぐな、静かに!…次、シエン・フロックス。前へ」


いよいよ来た!せめて水か風属性あたりが来てほしい。


私はドキドキしながら壇上へ上がろうとした。


その時、壇上から降りてきたガイルが、すれ違いざまに私の耳元で囁いてきた。


「ま、俺のあとでやりにくいだろうが、せいぜい頑張れや」


やられっぱなしは性に合わないので、私はガイルの肩を軽く押し返し、同様に耳元で囁いてやった。


「相変わらず、いい性格してるわね」


そして何事もなかったように壇上へあがる。


心を落ち着けながら、私は水晶玉の前で手をかざした。


心臓の音がドクドクと耳の奥で聴こえる。


水か風…水か風…お願いします!


しばらくすると、わたしの手から紫色の光が発生した。


え…?紫色なんて、今まで発光したっけ…まさか!


「デューイ先生!こ、こんなことが…」女性教師も驚いている。


「ほう…これもまた珍しい。シエン・フロックス。木属性」


ガーン…!私は…属性一最弱の、木属性。


「シーちゃん、すごいね!回復魔法使えるとか、最強じゃん!」


シャーリーが無邪気そうに私へ語りかける。


「いや、そういうことじゃないと思うよ。シャーリー…」


私が柔らかに否定すると、お決まりの暴言を吐いてくる輩がいた。


「おい、馬鹿女。先生の話を聞いてなかったのか?木属性は属性の中で最弱の属性だ。つまりそいつは、最弱の女なんだよ」


勝ち誇ったかのようにガイルが私を指差し、馬鹿にしてくる。


シャーリーの頭上には?マークが浮かんでいる。


私はあまりのショックで声が出せないでいた。


手をギュっと握り、やるせない思いを必死に抑える。


なんで私は…いつもこう…。


「馬鹿はどっちだろうな」


スッと私の近くにトーマが現れた。


今のいままで、クラスでもあまり発言したことのない彼だったが、突然の行動と発言に誰もが様子を見て驚いている。


「君はデューイ先生の説明を聞いていなかったのか?

『木属性でも魔力が強く戦いの前線で活躍している魔族も中には居る。属性の強さはあくまで一般論にすぎない』と。木属性だからと言って、最弱と決めつけるのは早計だよ。

君はただ、一般論に踊らされているだけだ。恥を知れ、ガイル・ダイアンサス」


トーマの正論に私の心は救われた。

ここには、私を助けてくれるヒトも居る。


「何だよ、お前こそ忘れたのか?そこのシエン・フロックスは入学試験の実技で110点しか取れなかった。それは魔力が低いって証拠だろ?違うか、シエン・フロックス」


「わ、私は、魔力が低いというわけではなくて…あ、あの時は…その」


なんとかこの場を乗り切ろうと、必死に言葉を探すが思考が混乱して、思うように言葉が見つからない。


「静粛に!」


デューイ先生の大きな叱責で、辺りが静かになった。


「…一連の騒動について、私の評価を述べる。まず、トーマ・イベリス。私の説明を最後まで聞き、しっかり理解していたことは大いに素晴らしい。今後も励め。

そして、シャーリー・ベロニカ。ガイル・ダイアンサス。人の説明を自分の都合の良いように解釈するな!最後までよく聞き、正しく理解を深めること。肝に銘じておけ。

最後に、シエン・フロックス。お前が木属性だからと言って、私はお前の魔力が低いとは思っていない。今後の魔力の磨き方しだいで、お前の属性は大きな武器となりえるだろう。今後より一層、魔力の強化に励め」


よかった…なんとかデューイ先生が丸く収めてくれた。


まあ、試験会場で起きた一部始終の出来事を私が話しちゃったら、デューイ先生の立場が無いもんね。


「まだ鑑定は終わっていない。次に行くぞ。…シャーリー・ベロニカ」


その後は順調に滞りなく鑑定が進み、全クラスの鑑定が終わった。


ちなみに、後の4人の属性は以下のとおりである。


シャーリー・ベロニカ=土属性。レイン・メカルドニア=水属性。

ラインハート・ユーフォルビア=水属性。ロックス・ルドベキア=火属性。


一連の騒動はあったものの、無事に魔属性鑑定は終了した。


「ではSクラスの諸君。この後15時よりホームルームを行う。それまでは自由行動だ。羽目を外し過ぎぬよう、慎んで行動するように。以上、解散!」


魔属性鑑定を終え、Sクラスのクラスメイト達は各々散っていく。


なんか、もう…泣きたい。


私は涙をこらえ誰にも気づかれないよう、さっとその場を離れた。



ここまで読んでくださり、いつもありがとうございます。

属性についてですが、四大元素と陰陽五行を織り交ぜた、オリジナルの属性を創り出しました。

自分でもかなり無茶苦茶やってるなーと実感しております。(笑)


シエンはこの後、気持ちを鎮めるためにあるところへ向かいます。

次回もお楽しみに!

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