第36章 爆破を防げ!闇との終焉
シラカバとの戦いを終え、分館最上階へ急ぐシエンたち。
爆破を食い止めようと、シエンはある作戦を思いつくが…?
―分館最上階―
私(=シエン・フロックス)のほか、クランベリー、ガイル、ロックス、ジャイロは分館最上階へと向かう。
螺旋階段を息を切らしながら駆け上がっていく。
「なあ、デューイ先生が最上階の鐘へ急げって言ってたけど、一体どういうことだ?」
ロックスは詳しい話を知らないようだ。
「簡単に説明すると、最上階の鐘に時限爆弾が設置されているんだって」
「「「「時限爆弾⁈」」」
その場にいた私以外の男子全員が驚いた様子で聞き返す。
あ、これ私以外全員知らない感じだな…。
「爆弾には大陸全土の魔族をアンデッド化する成分が含まれていて、爆破と同時にみんなアンデッド化しちゃうらしい…けど、さっきの戦いで理解した。
たぶん、爆弾に仕組まれている成分を私の木属性魔術で変換すれば、大陸全土に回復魔術を施すことができる」
ざっくばらんな説明になってしまったが、今は少しの時間も惜しい。
「詳しいことはよく分からんが、爆弾の成分をシエンの木属性魔術で変換することで、難を逃れられるんだな?」
ジャイロが話しをまとめてくれた。
「おい、最上階についたぞ。鐘のある場所にカギがかかってやがる。
チッ…面倒だな。ハンマーでこじ開けるか」
ガイルが強行突破しようと金魔術で腕からハンマーを出したので、
私は「任せて」と短く言い、指から細い蔦を入れ込み、ピッキングを開始した。
二回目なので今回は30秒くらいで開けることができた。
「シエン…その能力を他で使うのはオススメしないぞ」
ジャイロが私に釘を刺す。
「ゆ、有事の時しか使わないよ!日常でやったら犯罪になるでしょ」
鍵を開けて扉を押す。
近づいて見てみると、授業の時間を知らせる鐘の釣り鐘になっている空洞部分に、大きな時限爆弾がセットされていた。残りの時間はあと15分を切っている。
「こういうのって、手順通りに線を切ったりして、解除しているイメージがあるけど…」
おそらくロックスは、推理小説などで読んだ知識をそのまま口にしているのだろう。
「あれは、爆弾を解除する専門の人がやらないと、一発でドカンになっちゃうんだよ」
私は適当に返事をして、「リ・サーチ」を使って爆弾を分析する。
思った通り、解除方法は複雑で、私たちの浅はかな知識では解除は不可能だった。
他にトラップが仕掛けられていないか確認する。くまなく調べたが、問題はなさそうだ。
「とりあえず、トラップの類はなさそう。
このまま爆弾に手を当てて、私の木属性魔術を、この爆弾に流し込もう」
私の言葉に他の男子たちから「「えぇ⁈」」とどよめきが起こる。
「それしか方法がないんだよ。恐らく、この爆弾に核となる部分があるだろうから、
そこに作用できればいいんだけど…」
―その時―。
「相変わらず、己の危険を顧みずに大胆なことを考えますね。フロックスさん」
声がするほうへ振り返ると、フォックス・ネメシス学園長先生が立っていた。
「詳しい話は、先ほど図書室に居るデューイ先生から聞きました。
フロックスさん、あなた一人に危険な仕事を押し付けるわけにはいきません。
ですが、あなたの考えには賛成します。
私が爆弾の核とその全体に魔力を流しますので、皆さん、私に魔力を注いでくれませんか」
私は、しばらくぶりに魔術の師匠の顔を見れて、少しばかり心に安堵を感じた。
「疑問に思っていることも多いでしょうが、説明は後です。
皆さん、私の肩や背中に触れて、私に魔力を送ってください。行きますよ…」
私たちは学園長先生の身体に触れ、魔力を送る。
すると、闇属性で黒ずんでいた爆弾が徐々に透明で白く輝きだしてきた。
「えぇ?爆弾が白くなってる…?」
「すみませんが、説明している時間がありません。今は魔力を注ぐことに集中してください」
そして、私も「リ・サーチ」を使って闇魔力から返還されるパーセンテージを出力してみた。
20%…30%…40%…少しずつではあるが、確実に闇魔力が変換されている。
けど、フォックス学園長先生の魔力は、属性魔術じゃなさそう…?
80%…90%…100%到達!リ・サーチの画面に「変換完了」の文字が表示される。
なんとか爆破前に闇魔力を変換することに成功した!
けれど、残り時間はあと1分。
「ど、どうする?もう時間がないぞ。いまからここを降りても…」
私たちが狼狽えていると、デューイ先生が息を切らしながらこちらへやって来た。
「なんと間に合ったか…!」
「デューイ先生、皆さん。全員でここから脱出します。せーのでここから飛び降りてください」
フォックス学園長先生が私たちにとんでもないことを提案してきた。
「「「は?」」」
私たち全員が学園長先生の言葉に固まる。
「フォックス先生、それは一体…」
「デューイ先生、風魔法で調整をお願いしますね。行きますよ、皆さん。せーの…」
時間がなく、他に方法がないので、私たちは分館から下へ飛び降りた。
デューイ先生が風魔術で下から追い風を吹き出し、私たちは地面に叩きつけられることなく、
空を飛んでいる。とても幻想的な雰囲気なのだがー。
「し、しまった!よりにもよってスカート履いてきたから…ちょっとガイル、こっち見ないで!」
私は追い風で制服のスカートが捲れてしまった。
急いで抑えようとするが、ショーツが見えてしまい、なんとも恥ずかしい思いをしてしまう。
他の男子は顔を背けたり、目を瞑ったりしているが、ガイルはしっかりこちらを見ている。
「あぁ?見てねーし。お前のパンツなんか見るか、バーカ」
そう言いながらも、ガイルはじっくり私が恥ずかしがる様子を楽しんでる。
実はデューイ先生から連絡があった際、あまりに急いでいたので制服に着替え、
うっかりショーツの下に黒色スパッツを履くことを忘れてしまったのだ。
よりにもよってこんな時に。
「なら、こうしよう。シエンさん、失礼するね」
そう言ってフォックス先生は、私をお姫様抱っこで抱きかかえてくれた。
「あ、ありがとうございます…お手間を取らせてすみません」
「いえいえ。これくらいはお安い御用ですよ」
フォックス先生はやっぱり紳士だ。
「フロックス、すまなかった。ゆっくり降下するから、各自着地するよう」
デューイ先生も謝ってくれる。やっぱり大人の男性は紳士的だ。
その様子をガイルは悔しそうに見ているが、知ったことではない。
そうこうしているうちに、まもなく爆破時刻だ。
「全員、耳を塞ぎ、目と口を閉じろ!」
デューイ先生が近くにあった拡声器で号令を出す。
ドオン‼
ひと際大きい爆発音が鳴り響く。
爆弾は上空を飛び、ひと際高いところで、大爆発を起こした。
この日この時間、大陸全土に白く透明な光が瞬き、
アンデッド化していた民間人の魔族は、元の姿に戻るという現象が起きた。
爆発が収まり周囲を見渡すと、1年Sクラスの他のみんながこちらへ駆けてくる。
「シーちゃん、何処行ってたの?大丈夫?怪我無い?」
シャーリーが私に駆け寄る。
「大丈夫…だけど…ちょっと疲れた…かも…」
私はだんだん瞼が閉じていき、その場に倒れてしまった。
「シエン?おい、シエン!しっかりしろ。聞こえるか?…だれか、医者を呼んでくれ!」
ガイルが心配して私に声を掛けているようだが、私の耳に彼の言葉は届かなかった。
私はそのまま、深い眠りへと誘われていった。




