第14章 友情と本気のぶつかり合い
第四試合で倒れたシャーリーの様子を見に行くシエンとシンリー。
そして次のベスト8は、Aフィールドで勝ち残った猛者たちとの闘い。
シエンは闘いに勝ち残れるか…?
※内容を一部修正しました。2026.10.11
※ベスト8の対戦カードを追記しています。2026.10.10
私は観客席のSクラスのシンリーと合流し、シャーリーが運ばれた医務室へ急いだ。
「デューイ先生、シャーリーの様子は?目を覚ましているんですか」
私は矢継ぎ早にデューイ先生に質問する。
「落ち着けフロックス。…ベロニカはまだ目を覚ましていない。
だが、気を失っているだけで、2~3時間もすれば目が覚めるだろう」
闘技場で倒れた時は、まったく動く気配がなかったから正直びっくりしたが、先生の話を聞いてホッとした。
「それより、休憩時間はしっかり休め。あまり時間を無駄にするな。
特にフロックス。お前はベスト8に残っているのだ。しっかりと闘い抜け」
「は、はい…気を抜かずに頑張ります!」
デューイ先生の後押しが、私の気持ちを奮い立たせてくれる。
「もう間もなく試合が再開されます。選手の皆さんは控室へお戻りください」
試合開始前のアナウンスが流れた。
「シエン、私達も観客席で応援するから、頑張れよ」
シンリーが励ましてくれた。そうだ、私は一人じゃない。
「ありがとう。じゃあ、行ってくるね!」
そして私は、選手控室へと向かうのだった。
*****
これからベスト8の闘いが始まる。対戦カードは以下のとおりだ。
・第一試合…ガイル・ダイアンサス VS ソウテツ・リシマキア
・第二試合…シエン・フロックス VS ロックス・ルドベキア
・第三試合…クランベリー・スパイラキシス VS リッキー・コチレドン
・第四試合…ベルライン・ラグルス VS トーマ・イベリス
「それでは皆様、これよりベスト8に残った選手同士の試合を行います。
第一試合、Sクラス、ガイル・ダイアンサス 対 Aクラス、ソウテツ・リシマキア。
両者、闘技場へお入りください」
ソウテツ・リキマシアは鬼人でがっしりとした体躯をしている。
身長は190センチを優に超えているだろう。筋肉質で黒髪の短髪、赤い瞳が特徴的だ。
「ガイルも背が高くてデカい印象だけど、あのソウテツも中々に良い体格をしているな」
ジャイロが興味深そうに両者を見ている。
「…ジャイロ、これ、お前的にどっちが勝つと思う?」
シンリーがジャイロに意見を聞いた。
「正直、互角ってところだな。体格だけで言えばソウテツが有利だが…それを上回る力量をガイルは持っている」
ー闘技場ー
「それでは、構えて。用意…始め!」
こいつ、俺(=ガイル・ダイアンサス)より背が高いし、体格がいい。
まずは魔術と体術で押していくか。
俺は先手を打たんとばかりに、強力な火魔術を放った。
「爆炎陣!」
(まずは様子見…相手は何属性だ?)
相手のソウテツは、俺の火炎攻撃を土の防御壁で瞬時に回避する。
「岩鉄壁」
爆炎と岩の壁が激突し、闘技場に砂埃が舞う。お互いの姿が見えなくなってしまった。
(相手は土属性か…。魔術のみでの応戦は消耗するだけだな)
しかし姿は見えないが、音だけは聞こえてくる。
「おい、デカブツ。魔術のぶつかり合いだけだと、埒が明きそうにないな」
俺は思っていることを正直にソウテツへぶつけた。
「奇遇だなガイル・ダイアンサス。…俺も同じことを考えていた」
そして、煙が薄れて闘技場の様子が見えた途端、俺たちは魔術を使うのを止め、拳を交えた闘いをはじめた。
「おっと、煙が晴れて、ようやく闘技場の様子が見えました…なにやら今度は体術で闘っているようです!」
(先公のアナウンスなんざ、どうでもいい)
俺はソウテツに向けて、右腕のストレートパンチを繰り出す。
奴は左手で俺の攻撃を受け止め、反対の腕で俺の腹を殴り飛ばそうとしてきた。
瞬時に体を捻じり避け、俺はソウテツと距離を取り、体勢を整える。
(今の一撃が入っていたら、確実に倒されていたな…避けつつ攻撃ってのは、やりにくいが嫌いじゃない)
こうして、両者一歩も引けを取らない闘いが続いていく。
―観客席―
「はわわわ…ソウテツさんが攻めて、ガイルさんが受けて…今度はガイルさんが攻めて、ソウテツさんが受けて…この場合、どちらが受けでどちらが攻めなのでしょう…」
レインがなにやら頬を赤らめて、興奮しているようだ。
「レインは何を嬉しそうに興奮してんだ?」
シンリーが不思議そうにレインを見ている。
「フフフ。彼女の思考は僕にもよく理解できないが…可憐なレディ・レインが楽しいのなら、僕はそれで良いのさ」
―闘技場―
攻防を繰り返す中、ソウテツは俺のパンチを受け止めた後、一歩下がって体制を立て直していた。
「お前…魔術を使うのは止めたんじゃないのか」
ソウテツが解せぬとでも言うように、俺に突っかかってきた。
「いいや?俺は一言も『魔術は使わない』なんて言っていないぜ。お前の勘違いだろ」
そう、俺は先ほどパンチを繰り出した際、火魔術の魔力を捻じ込ませたのだ。
(…もしかして、こいつも魔術と体術を練り込んだ攻撃ができるのか?)
「…それなら俺も、遠慮なく闘わせていただく」
「ハッ。今まで遠慮しながら闘っていたとは、随分と舐められたもんだな」
ガイルもソウテツから少し距離を取り、拳を構える。
「これで終いにしようや」
「ああ、いいだろう。最後は拳と魔術のぶつけ合いで決着をつけよう」
俺とソウテツは拳を構え、互いに力をぶつけ合う。
「「うおおおおぉ‼」」
俺の拳とソウテツの拳がぶつかり合った先で、炎と岩の魔術もぶつかり合う。
両者とも魔力を拳に込めて、互いに押し合っているように思えた。
とてつもない魔力量のぶつかり合いだが、ソウテツがややリードしている。
「ぐ…中々やるじゃねぇか」
押され気味になったその時。
俺が今、一番聞きたい声が聞こえた。
「ガイルー!頑張れー!」
シエンが南側の観客席へわざわざ移動し、俺に声援を送っている。
(⁈なんでアイツあんなところに…けど、俺は絶対、勝つ!)
シエンが応援して観ている以上、格好悪い姿なんて見せられない。
「うおおおおらぁ!」
俺は炎の魔術と風の魔術を織り交ぜて、ソウテツを押し返した。
「な…(炎と風の魔術を融合させただと…なんて高尚な技…)ぐは…!」
ソウテツはガイルに押し出された勢いで体が吹き飛び、フィールドの枠から外に出てしまった。
「な、なんと!ソウテツ選手、場外のため失格です!」
「そこまで!勝者、ガイル・ダイアンサス」
激しい闘いで汗だくになった俺だが、右手の拳を高く上げ、「よっしゃあ!」と吠えた。
「ガイル・ダイアンサス。…最後の拳は素晴らしい魔術だった。俺と闘ってくれてありがとう」
ソウテツが俺に手を差し出した。
「…俺一人の力じゃねえけどな。こちらこそ、ありがとな」
互いに握手を交わし、ベスト8の第一試合は終わった。
「最後のガイル選手の魔術は凄まじい勢いでしたね、フォックス先生」
「火魔法と風魔法を練り込んだ、応用技ですね。
一年生でここまでの魔術を体得する生徒は中々いないでしょう。友情の握手も印象的でした」
*****
「それでは、続いて第二試合を始めます。
Sクラス、シエン・フロックス 対 Sクラス、ロックス・ルドベキア。
両者とも、闘技場へお入りください」
「Sクラス同士ですが、忖度せずに本気でやり合っていただきたいですね」
フォックス先生が珍しく自分から意見を言った。
恐らく「仲間だからと気を抜くな」という私に対する警告だろう。
「ロックス。悪いけど、本気で闘わせてもらうからね」
「もちろんだ!俺も全力でいくからな」
「静かに!…両者、構えて。用意、始め!」
私はフィールドの地表から蔦を出現させ、ロックスの動きを止める。
「おお、さっきリリーに攻撃してたのってこれか…フン!」
ロックスが全身に力を籠めると、蔦がビリビリに破れてしまった。
(ここまでは予想通りだね)
「蔦がダメなら、こっちで闘おうかしら。薔薇鞭」
私は手からシュンッ!という音を立て、アイビーとバラを融合させた鞭を出現させる。
鞭をしならせ、パシンッと地面を叩く。
「へえ…女王様気取りか?面白い技だな」
「そうね。野獣を調教するには、ちょうどいいかもね」
次に私はパチンっと指を鳴らして、フィールドの四方に大きな竹を出現させた。
「竹を生やしただけだろ。悪いが曲芸に付き合うほど、俺も暇じゃないんでね」
ロックスが体操服のトップスを脱ぎ捨て、体を狼の姿へと豹変させる。
普段は人型の彼だが、ひとたび狼の姿になると、凶暴さが増してみえる。
(これが狼男の力か…それだけじゃない。筋力も倍増されているね)
私は「リ・サーチ」を使って、ロックスの特殊スキルを分析してみた。
「…先手必勝だ!おらぁ!」
ロックスは素早い速さで私にパンチを繰り出してきた。
私は瞬時に避けて、ロックスの腕に薔薇鞭を喰らわす。
「痛ってぇ!マジで痛てぇな、その鞭」
私は一瞬の隙も見逃さなかった。
手のひらを前に突き出し、瞬時にロックスの周りを囲むよう、四方から竹を出現させ、頑丈な蔦を出した。
そして蔦を何重にもロックスの体に縛り付ける。
「ぐぐ…だから、こんな蔦…破れるって…う、あぁ!」
どうやらロックスの力技では、この蔦をちぎることはできないようだ。
(意外と効き目があるんだね)
蔦から蕾が生まれ、一つ、また一つと白い花が咲く。
無数の白いカサブランカが、ロックスの体を覆いつくしていく。
「輪廻転生=カサブランカ」
私は自分の技名を呟いた。「輪廻転生=カサブランカ」は相手の魔力と体力を奪う魔術だ。
白いカサブランカの華が咲けば咲くほど、魔力と体力を奪われる。
さらに竹の蔦から、睡眠薬を少しずつ投与している。
「な、なんだ…?だんだん力が抜けて、眠く…」
ロックスは動かなくなり、ガクっと項垂れ、鼻から提灯が出ている。
「おおっと、またもやシエン選手、摩訶不思議な技でロックス選手にトドメを刺しました!フォックス先生、解説をお願いします」
「うーん、残念ですが僕の口からは言えません。企業秘密です♪」
そし10カウントが始まった。
「9、8、7、6、5、…」
ロックスは動かない。
それを見ていたカインは青ざめて「兄貴…起きろよ!負けんなよ…」と懇願している。
「4、3、2、1、0!」
0カウントでもロックスが目覚めることはなかった。
「勝者、シエン・フロックス!」
「か、勝っちゃった…(本当に勝てるかは正直、半信半疑だったんだけどね)」
私はすぐさまロックスの術を解いてやったが、
睡眠薬を投与しているので、彼はすぐに目覚めないだろう。
デューイ先生は例の如く、救護係や養護教諭の先生への連絡に急いでいる。
「デューイ先生、後でロックスにこの瓶の薬を飲ませてください。
睡眠薬の効果を相殺して、緩和させる薬です。必要であれば私が毒見もいたします」
「…お前に限って無いとは思うが、級友に毒を飲ませる気はないな?」
「ありません」
私は真っ直ぐな瞳でデューイ先生を見た。
「分かった。とりあえず、後で養護教諭に持たせる。お前はもう、控室へ戻れ」
「ありがとうございます。失礼します」
こうして私は準決勝への切符を手に入れたのだった。
(本当に勝つとは、正直思わなかったな…あれ?待てよ。次の私の対戦相手って…)
この時シエンはまだ気づいていなかった。
自分が今世紀最大の危機に晒されているということに。
ここまで読んでくださり、いつもありがとうございます。
相変わらず男たちの熱い闘いが続いております。ちょっと暑苦しいでしょうか。
次のお話もお楽しみに♪




