第11章 魔闘大会開幕!『スター』はどこだ?
能力向上授業で地獄の特訓を行うシエンたち。
いよいよ決戦の時が来た。魔闘大会開始とともに、さっそく課題が発生するが…?
※小説内の画像はCanvaを使って作成しています。
※内容を一部修正しました。2026.10.12
6月6日。この時期は雨が降りやすいのだが、本日は快晴である。
私は自室のアパートで体操服に着替え、闘いのために準備した諸々の装備を点検する。
「もしもの時の必勝薬物(割と合法的なものである)も揃えたし、タオルに水筒に…
それと、大会に出る前にきちんと装備品の申請書も出したから、問題なし…と」
普段は下ろしている髪をひとつ結びに結わえる。
「では、いってきます!」
私は意気揚々と学園へ向かうのだった。
*****
魔闘大会の集合場所は体育館。ここには全一年生が集められている。
体育館の観客席には上級生たちが見物しており、誰が用意したのかは分からないが「魔闘大会・開催‼」と書かれた横断幕が観客席に掲げられている。
「よう、シエン。いよいよ大会が始まるな。悪いが、今回は私も譲らないぞ」
シンリーが私に話しかけてきた。
「もちろん。正々堂々、勝負しよう。私も優勝を目指すと心に決めているからね」
「ぬー。僕も負けないからねー。ばっちこい!」
シャーリーもやる気満々のようだ。
「ハッ。てめえが優勝だと?ぬるいこと言ってんじゃねぇ。優勝は俺がもらう」
ふと声のする方へ振り向くとガイルとその他のSクラスの級友たちが居る。
「フフ。僕が優勝した暁には、レディ・レインの口づけを頂きたいです」
「さっきからラインハートさん、ずっとこの調子なんです…私も負けていられません!」
ラインハートとレインの距離は少しだけ縮んだようだ。
「僕も頑張っちゃうよ~!ガイルに優勝は渡さないZE★」
「楽しみだよな。他の奴らも、どんな魔術を使ってくるのか見ものだな!」
クランベリーとロックスも、やる気に満ち溢れているようだ。
「闘いに馴れ合いは禁物。だけど優勝は僕が頂く」
「みんな怪我には気をつけような。…俺も本気出していこう」
トーマとジャイロも気を引き締めて、大会に臨む勢いだ。
体育館のデジタル時計が10時を回り、体育館内にアナウンスが流れる。
「定刻になりましたので、これより『第99回魔闘大会』を開催いたします。ではまず、大会の手順とルール説明に入ります。
進行役は私、プリムラ魔術学園教師のナタリア・ルピナスが担当いたします。それでは一年生の皆さん、壇上のスクリーンをご覧ください」
すると、体育館の壇上から白い幕が下りて、映像が映し出された。
「今回の大会は2部構成で行います。
まず、第1部は魔獣の生息する森で、星の形をしたオブジェを見つける『スター探し』を行います。
魔獣の生息する森は、空間魔術でフィールドを用意しております。時間になりましたら、皆さんをフィールドへ転送させていただきます。
フィールドは3つの区域に分けられており、A・B・Cの三つのフィールドがあります。
そしてこのフィールド内にスターは全部で16個隠されております。
スターを見つけた時点で、プレイヤーは自動的に体育館へ戻ることができ、次の第2部への挑戦権を獲得することができます。
ちなみにスターを見つけるまでの制限時間は70分。
時間オーバーになりましたら、皆さん強制的に体育館へ戻りますので、ご安心ください」
スライド形式で映像の説明が流れるので、内容が頭に入りやすい。
すると、学園の教師たちが一年生に小さな紙切れを配り始めた。
「まずはA・B・Cのどのフィールドに入るか、事前に申告してもらいます。
配布された用紙に、ご自分のお名前とA・B・Cのいずれかに〇を記入してください。
記入内容に間違いがありましたら、申請無効とみなし、大会に参加できませんのでご注意ください。
なお、今から10分以内に申請を行ってください。時間切れの申請も無効とします」
そのあと、壇上の白幕にフィールドの地図が映し出された。
一年生の生徒たちは、フィールドの地図を見ながら、どのエリアを選ぼうか迷っているようだ。
「やっぱ男なら、Aフィールドで活躍したいよな~」
ロックスが独り言のように呟く。
「わ、私はあまり魔力が強くないので、Bフィールドへ行こうかと…」
「なら、僕もレディ・レインと共に行こう。協力してスターを見つけようではないか!」
ラインハートとレインはBフィールドを選ぶようだ。一緒に共闘する者も、生徒たちの中に複数人いるようである。
「あれ、シエンとガイルが見当たらないな」
シンリーは気になって辺りを見渡すが、二人の姿を確認できないでいる。
「二人でラブラブ・ランデブーですかな?」
シャーリーがニヤニヤ笑いながら、独特の言い回しで茶々を入れる。
「…!僕、シエンちゃんとガイルを見つけに行ってくる~‼」
シャーリーの言葉を聞いて、クランベリーはどこかへ駆け出してしまった。
「…あいつ、魔闘大会のこと忘れてないか?」
呆れ顔でクランベリーの背中を見守るロックスだった。
*****
一方その頃、私は特殊スキル「リ・サーチ」を使って地図を解析してみた。
「適当っていうか、子どもの落書きみたいな地図だね…難易度と星の数かぁ。
ふむ、成程。…この人数で、難易度がこの状態だと、確率は…割合から算出して…」
「おい、さっきから何ブツブツ言ってやがる」
ガイルが私に突っかかって来た。
「あ、ごめん。うるさかった?」
「違う。お前、この地図のこと何か知ってるだろ」
「うーん…憶測で物を言うのはちょっとなあ。確証もあまりないし」
「いいから教えろ。…教えてくれたら、今度飯を奢ってやる」
「むむ!そこまで言うならしょうがないなぁ。…じゃあ他の人に聞かれないように、場所を少し移すよ?」
(食い物で釣られるとか、コイツ案外ちょろいよな)
そして、他の生徒に感づかれないように、私たちは体育館の隅へ移動した。
「私がさっき、特殊スキルでこの適当な地図を解析してみたんだけど…。
おそらくAのフィールドは星の数が多いし、難易度も高いから腕試しにはもってこいの場所になる。
そうなると競争率が高くなるだろうね。
一方でBのフィールドも魔術にあまり自信のない生徒には恰好の場所だ。
星も5つあるからね。
そしてCフィールドだけど…ここは正直あまり旨みのないフィールドだね。
目立って魔獣を討伐するような場所ではないし、なにしろスターが3つしかない。
だから競争率は大幅に低くなるだろうね。
普通に考えたらAかBを選ぶところだけど、競争率と星を獲得できる確率で言うとCフィールドのほうが確実に星を狙いやすい。
…だから私はCフィールドに行こうと考えてるんだけど…君なら『チキン野郎』とか言って私を馬鹿にするんだろうね」
正直な話、どのフィールドを選んで進むかは、半分ギャンブルみたいなものである。
私の憶測だって当てにはならないだろう。
だが、ガイルは神妙な顔で説明を聞いていた。
「それがお前の憶測か。…悪くはない話だな。
それに今の話聞いて、Cフィールドに行きたがらない奴なんていねぇよ」
「そ、そうかな…え、じゃあガイル、もしかして」
「俺もお前と同じ、Cフィールドへ行く」
絶対そう言うと思ったー。だから言いたくなかったんだよ。
ライバル増えちゃったじゃん。まあ、ご飯奢ってくれるなら、しょうがないよね。
「本当にいいの…?デューイ先生に後で怒られたりしない?Aフィールドのほうが活躍できるかもよ」
「先公は問題ねえ。つか、お前が敵を増やしたくないだけだろ」
あ、やっぱりバレたか。
「残り5分を切りました!まだ申請用紙を提出していない生徒は、速やかに提出してください」
「ほら、観念してさっさと提出するぞ」
「…ハイ」
私たちは自分の名前を記入して、「C」にマルを付けた。そして近くの教師に申請用紙を渡す。
用紙を渡された教師たちは、フィールドへの移送の準備を次々と進めている。
私たちの足元から、次々と転送魔術の術式サークルが形成されていく。
「残り3分となりましたが、すべての生徒の申請用紙の提出を確認できました。
これより、異空間のフィールドへ一年生の皆様を転送します。5、4、3、2、1…。
では、いってらっしゃーい!」
*****
空間が捻じ曲がるような感覚を覚え、気がつけば例の適当な地図のフィールドに転送されていた。
周りには木々がそびえ立ち、中から鳥や虫の鳴き声がする。
私の周りには、ガイルとクランベリーが居た。
「あれ、クランも来てたんだ」
「うん。なんかシエンちゃんとガイルがこそこそ話してたから、こっそり尾行してCフィールド選んじゃった!
それに、ガイルがシエンちゃんにエッチなことしないように、僕がお守りしに来たの~♪」
クランベリーは私の身を案じてか、私たちを見つけてわざとついてきたのか…真意は掴めないが、いつの間にかCフィールドを選んでしまったようだ。
「はぁ⁈何やってんだ、馬鹿かよ。お前、魔闘大会出る意味分かってんのか?遊びじゃねーんだぞ」
「うわぁん、ガイルがイジメるよ~。シエンちゃん、僕怖~い」
(どんどん面倒なことになってるな。…クランも噓泣きがお上手ですネー)
「おー、よしよし。ガイル、あんまり八つ当たりしちゃダメ。来ちゃったものはしょうがないから」
「チッ…言っとくが、お前ら俺の足引っ張ったら、ぶっ飛ばすからな」
「分かってる。それにどうやら、Cフィールドに到着したのは、私達3人だけみたいだよ」
「「え?」」
ガイルとクランベリーは私の言葉に驚きを隠せないでいる。
前方を見れば、私達の目前にホログラムのような映像が映し出されていた。
「さっきの適当な地図だ!白色で人数が書かれてる。本当だね。Cフィールドは3人だけだ。」
「なるほどな。お前の憶測、まんま当たってるじゃねーか。中々やるじゃん」
「ね、足は引っ張ってないでしょう?」
「いや、安心するのはまだ早い。これからスターを探さないと意味がないからな」
ガイルが私たちに釘を刺す。それもそうだ、これからが本番である。
「そうね。3人で固まって探しても効率が悪いから、それぞれ別行動で探そう。二人とも、武運を祈るよ」
「ラジャーなり!じゃあね、シエンちゃん。
ガイルに変なことされたら、大声で僕の名前を叫んでね。すぐに飛んで行くから!」
そういうとクランベリーは一目散に森の中へと入っていった。
「な、あの野郎いいかげんなこと言いやがって…俺も行くからな。時間内にちゃんと見つけろよ、シエン」
「うん、必ず探して3人で第2部を迎えよう。じゃあね」
こうして私達のスター探しが始まった。
森の中を探索するも、スターは中々見つからない。
地図が適当なせいなのか、思ったよりフィールド内は広大だった。
「制限時間は70分って言ってたけど…間に合うかな」
すると、目の前に一匹の小鳥が簡易的な罠に引っ掛かって、バタバタしているのを見つけた。
「ありゃりゃ、可哀想に。逃がしてあげようか」
餌を啄むと上からカゴが落ちる仕組みになっているようだ。
カゴをはずし、鳥を逃がそうとすると、鳥はどこかへ行ってしまった。
…と思ったら、なにか咥えてまた戻って来た。
「なんだろう…これを私にくれるの?ありがとう」
鳥の嘴から贈り物を受け取ると、なんと黄色に輝くプラスチック製の星のオブジェだった。
「これがスター…?」
すると頭上からアナウンスが聞こえてきた。
「シエン・フロックス。スター獲得を承認します。体育館へ強制送還。3、2、1…」
気が付くと私は、元の体育館へ戻されていた。
*****
「お、早かったね。スター獲得は君で3人目だよ。おめでとう」
体育館に戻され、私は近くに居た教師に声をかけられた。
「あ、ありがとうございます…(あっけなかったな)」
「まだ制限時間まで時間があるから、休憩室で待機するといいよ。お茶や軽い軽食も用意しているから」
そうして私は体育館の外に設置されたプレハブの建物へ案内された。
「あ、お疲れシエンちゃん!」
「んだよ、おせーぞシエン」
休憩室にはガイルとクランベリーが居た。
「二人とも早かったね。どうやってスターを見つけたの?」
「俺はクマに襲われているウサギを助けたら、ウサギからスターもらった」
「僕はね、鳥の卵を食べようとする蛇を退治したら、親鳥からスターをもらったよ」
「私も似たような内容で、スターを獲得したよ…難易度が低いってこういうことなのね」
その後も次々とスターの獲得者が現れ、少しずつ休憩室の人数が増えた。
その中にはシャーリー、ロックス、トーマの姿があった。
聞けばシャーリーはBフィールド、ロックスとトーマはAフィールドでスターを獲得したそうだ。
「やっぱりAフィールドは激戦区なんだね」
「まあな、魔獣も強いやつばっかりだったな。無駄にフィールドも広いし」
私の呟きにロックスが答えてくれた。
「どうやら、時間が経つにつれて、敵の数が増えるらしい」
休憩室のクッキーを食べながら、トーマも話しかけてきた。
「そうなんだ…難易度が高いっていうのは、そういう意味でもあるんだね」
だが、休憩室の人数が12名になった途端、次の獲得者は現れなくなった。
結局、残り時間が経過し、参加者全員が強制送還された。
「それでは、スターを獲得した皆さんは、体育館へ戻ってください」
進行役のナタリア先生に促されて、私達は体育館と戻った。
「これにて、第1部の大会を終了といたします。今回スターを獲得したのは12名でした。
次の第2部の大会についてですが、お昼休憩の後に行います。
ちなみに第2部は一対一のトーナメント戦です!出場権を得られなかった生徒の皆さんも、観客席で一緒に応援しましょう!それでは、一旦解散です!」
第1部は無事に終了したが、私たちはまだ知らなかった。
これから、さらなる激戦が待っているという事実に。
ここまで読んでくださり、いつもありがとうございます。
Canvaを使ってフィールドの画像を作ったのは、何を隠そう私です(笑)
子どものラクガキみたいな地図を作ってしまいました。
イラストはあまり得意ではないので、絵が描ける方を尊敬しております。
次から怒涛の第2部が始まります!お楽しみに♪




