第9章 馴れ合いは禁物!闘いのはじまり
プリムラ魔術学園に入学して、学校生活にも慣れてきたシエンたち。
なにやらデューイ先生から重要な話があるそうです。
※内容を一部修正しました。2026.10.4
入学式を終えて2週間が経ち、学園生活にも慣れてきた頃。
帰りのホームルームでデューイ先生が私たちに重大発表を告げた。
「まだ少し先の話しにはなるが…6月の上旬に1年生を対象とした学校行事を行う。
諸君らには学校行事の『魔闘大会』に強制参加してもらう。
大まかな内容は、各々魔術を使って1年生全員で競い合う…とだけ言っておく」
確か入学試験を受ける前に、パンフレットにも書いてあったな。
『豪華景品も出るよ!』なんて記述もあったような気がする。
「お、いよいよ俺たちの腕の見せ所だな!腕力なら自信あるぜ」
「魔術っつたろ、ロックス。競い合いとか面倒くせえな。それに、ただ勝てばいいってだけの話しでもねーだろ」
ロックスは俄然やる気のようだが、ガイルはあまり興味がなさそうだ。
「静かに!私語は慎め。
我々学園側は、魔闘大会で優秀な成績を修めた上位3名に特別な景品を用意している。
…言っておくが大会の内容は毎年変化する。
高学年の先輩から聞いて、攻略しようなどとは思わないことだ。
またこれに先立ち、魔闘大会に向けて一年生全員の能力向上授業を設ける。毎週水曜日の5・6限目に行う予定である。
ちなみに、属性別に授業を行うため来週以降、担当教員とクラス編成の貼り紙を掲示する。
各自確認して、必ず出席するように。本日の伝達事項は以上だ。解散!」
先生が教室から出た後、私たちSクラスは魔闘大会のことで盛り上がっていた。
「魔闘大会…楽しみだなあ。景品って何もらえるんだろう。それに僕、色んな試したい魔術があるんだよね~」
クランベリーはうっとりした表情をしている。
魔闘大会を楽しむというよりは、思う存分魔術を試せる環境に嬉々としているようにも見える。
「わ、私は競い合うってちょっと苦手です…」
レインは尻込みしているようだ。
基本、男子は闘いを好むが、女子は平和を好む傾向がある。…ただし、例外もある。
「いいねえ。魔術を練り合わせた体術なら、私は得意だぜ。それに暴れたくてウズウズしている輩も多いだろうよ。なあ、シエン」
「そうだねえ。私も最近開発した薬品と練り合わせた魔術とか、色々試したいことがあるからねえ。当て馬さんには申し訳ないけど、案外楽しめそうだね」
「フッフッフ。私の右腕が疼いてしょうがないぜ…」
私とシンリー、シャーリーは各々やる気を漲らせている。
「こ、このクラスには戦闘狂しかいないのかしら…」
レインは私たち3人娘を見て思いっきりドン引いているようだ。
「安心したまえ、レディ・レイン。同じ水属性同士、互いに能力を高め合っていこうではないか!そして、互いの魅力に惹かれ合い、愛の巣を…」
「止めてください。ラインハートさんは露骨過ぎます!」
「属性別のクラス編成となると、俺はベロニカと一緒になる可能性が高いな。…暴走しないように見張っておこう」
ジャイロがぼそりと呟くと、トーマが読んでいる本から顔を上げた。
「それなら僕も、カムロサザさんが無茶しないように見張っておくよ」
「お互い、苦労するな」
「見張るのもいいけど、まずは自分の能力向上に向けて頑張らないとね」
「そうなると、おれはクランベリーと一緒のクラスになるかもな。よろしくな!クラン」
「ういっす!よろしくです。ロックスの兄貴!」
クランベリーは愛嬌があって、すぐに相手の懐に入ってしまう。
ロックスも懐くクランベリーにまんざらでもないようだ。
「おい。馴れ合ってんじゃねーぞ、アホ共」
ガイルの一言で、全員がハッとした表情になる。
「先公はどう競い合うかは言ってねーが、俺たちは互いが『敵』になる可能性だってあることを忘れんなよ。それと、シエン!」
「何?」
「お前に限った話じゃねーが、少しでもクラスの足引っ張ったらぶっ飛ばす!…言いたいことはそれだけだ。俺はもう帰る」
そう言うと、ガイルは荷物を抱えて教室を出て行ってしまった。
「あいつ、言ってることは正しいんだけど、言い方がなぁ」
ロックスはやれやれというように肩を竦める。
「シーちゃん、これはね。愛だよ。愛」
「ん?何が?」
「ガイルがシーちゃんのこと『シエン』って呼び捨てにしたよ!愛の力は偉大だね」
「シエンちゃん、いつの間にガイルと仲良くなったの~?」
シャーリーとクランベリーが詰め寄ってくる。
「た、たまたまじゃないかな。それと、さっきガイルが言ってたけど、私たちも『敵同士』になる可能性があるから、気を抜くなって注意したかったんじゃないかな?」
私は最近、「適当にはぐらかす」というスキルを身に付けた。
もちろん、ただの処世術である。
「成程!愛を知る者は、愛する者の真意に気づく。なんと美しい光景だろう!」
ラインハートがなぜか興奮している。そして先ほどから「甘美!」などと叫んでいる。
しかし『魔闘大会』かぁ…さっきデューイ先生は「属性別にクラス編成」するって言ってたけど、金属性のガイルと木属性の私はどうなるんだろう?
属性別で授業となると…まさか、ガイルと私が一緒に特訓を受けるとかはないよね?
騒ぎ立てるクラスメイトを余所に、私は疑問を感じるのだった。
*****
次の週―。
中央広場の掲示板に能力向上授業のクラス編成について、貼り紙が出された。
私たちが予想したとおり、風属性はシンリーとトーマ、土属性はシャーリーとジャイロ、水属性はレインとラインハート、火属性はクランベリーとロックスの組み合わせでクラスが編成されていた。
そして残るは―。
『金属性…ガイル・ダイアンサス。担当教師:デューイ・トリトニア。
木属性…シエン・フロックス。担当教師:フォックス・ネメシス。』
なんと、私の担当教師は学園長先生だった。一方のガイルはデューイ先生が担当である。
「うわ…すごい組み合わせだなぁ。シエン、デューイ先生じゃなくて良かったな」
掲示板の貼り紙を見ていたシンリーが、私に声をかける。
「うーん…。私の場合、デューイ先生とは相性が悪すぎるからね。でも、学園長先生直々に指導してもらえるのは素直に嬉しいね」
「ハッ。悪かったな、デューイの先公に当たった俺は、不幸ってか?」
後ろを向くと、ガイルが立っていた。
「ガ、ガイル…すまない、私はそんなつもりで言ったんじゃないんだ」
シンリーが「しまった!」というような顔をしている。
「ガイル、シンリーをあまり責めないで。それに、私はデューイ先生との相性が悪すぎるから、先生方も考慮しただけの話だよ」
「じゃあ逆に、デューイと相性の良い生徒なんて居ると思うのか?」
「というより…このクラス編成は、ガイルに対する期待値が高まっている証拠だと思う」
「あぁ?どういうことだ」
ガイルは訝しげに私を見ている。
「デューイ先生は見ての通り、厳しくて鬼教師だけど、見込みのある生徒でないと指導しないと思う。ガイルの能力が高いと見込んで、敢えて担当教師になったんだよ」
実は私は、貼り紙の掲示板について「リ・サーチ」を使ってじっくり観察していた。
そこには「ガイル・ダイアンサス…異常に高い能力値のため、実力派の教師を選別」という文言が浮かんでいた。
「ふーん…お前はそういうモノの見方をするのか」
始めは喧嘩腰だったガイルだが、なんだか嬉しそうにしている。
「シンリー、クラスは確認した?なら、もう行こう」
「ああ、確認したぞって…え、もういいのか?」
「うん。ここにもう、用はないから」
ガイルに背を向け、私たちは教室へ向かうことにした。シンリーが後を追ってくる。
「お、おい。話しの途中だろうが!逃げんなよ」
残念だけど、今君に優しい言葉はかけられないよ。
デューイ先生相手に特訓を受けるんだから、ガイルには気を引き締めてもらわないとね。
「言ったでしょ。もう『ここに用はない』って。それに君も自分で言ってたじゃない。『互いが「敵」になる可能性もある』って。馴れ合いは禁物だよ。じゃあね」
ガイルを置いて、私とシンリーは中央広場を去った。
「シエン、いいのか?ガイル、なんか悲しそうな顔してたぞ」
「あのまま会話を続けても不毛なだけだよ。それに、ガイルはこれからが大変だろうしね。なんせ、あのデューイ先生が相手だもの」
こうして各々、属性魔術の向上に向けて、特訓が始まるのだった。
しかし、これはまだ、熾烈なバトルの序章に過ぎない。
ここまで読んでくださり、いつもありがとうございます。
これから『魔闘大会編』が始まります!
『魔闘大会編』はやや長編なので、一つの章の文字数をなるべく少なめに設定しています。
物足りなかったらすみません。
次回から魔闘大会に向けて、特訓の日々が始まります。
ガイルとシエンの絡みも、ちゃんと用意しておりますので安心してください(笑)




