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第24話 想い1

研究所へ向かう通路を歩きながら。


ミシェルの脳裏には、数時間前の光景が何度も焼き付いていた。


――第二演習区域。


第10回レムナント共同演習。


その中で。


アーデルハイド=セラフィーネは、突然動きを止めた。


『――っ!?』


苦しそうに背中を押さえ、

その場に膝をついた銀髪の少女。


ミシェルは今でも鮮明に覚えている。


あの時の表情を。


痛み。

困惑。

恐怖。


まるで身体の内側から何かが暴れ出そうとしているような、あの苦悶の顔。


その瞬間だった。


――光。


アーデルハイドの背中から、ほんの一瞬だけ青白い光が漏れた。


一秒にも満たない僅かな発光。


だが。


ミシェルには、見えてしまった。


「……翼」


思わず、小さく呟く。


見間違いとは思えなかった。


幼い頃から、中央開発局の研究所に出入りしていた。


叔母であるセレスの仕事を見て育った。


無数の観測モニター。

適合波長。

神経同期データ。

天使核反応。


普通の生徒なら見逃すような異常も、ミシェルには理解できてしまう。


だからこそ。


あの瞬間、演習場モニター群に映し出された数値変動も異常だった。


神経同期率の急上昇。

波長の異常共振。

急激なエネルギー反応。


ありえない速度で、数値が跳ね上がっていた。


そして。


その直後の周囲の対応が、あまりにも不自然だった。


教官達は即座に演習を停止。


医務班到着までが異常なほど速かった。


さらに――。


中央開発局直属の職員まで演習区域へ来ていた。


たかが訓練生一人の体調不良にしては、対応規模が大きすぎる。


何より。


セレスの顔だった。


あの人が、一瞬だけ見せた表情。


驚愕。

そして――恐怖。


ミシェルはそれを見逃さなかった。


(……アデル)


通路を歩く足が少しだけ遅くなる。


胸の奥がざわついていた。


ただの体調不良じゃない。


ただの適合異常でもない。


中央開発局。

ヴァイス司教。

セレス。


エデン=ノア中枢が、何かを隠している。


そして、その中心にいるのが――。


アーデルハイド=セラフィーネ。


研究所区画入口――中央開発局警備管理棟。


騎士学校に隣接しているとはいえ、その空気は校舎側とはまるで違っていた。


灰色の重装隔壁。

幾重にも走る封印術式。

自動銃座。

警戒用監視機構。


静かだが、張り詰めている。


中央開発局。


天使核。

天骸兵装。

封印技術。

聖堂システム。


エデン=ノアの根幹技術を担う機関。


当然、その警備レベルも常軌を逸していた。


研究所へ入るには、複数の認証を通過しなければならない。


身分照合。

生体認証。

術式波長確認。

携行物検査。


研究区域入口に設置された守衛詰所も、常に重苦しい空気に包まれている。


厚い防弾ガラス越し。


武装した警備員が二人、無言で端末を監視していた。


ミシェルは窓口へ歩み寄る。


「要件を」


短く、事務的な声。


ミシェルは静かに口を開いた。


「ミシェル=アークライトです。セレス=クロイツ開発局局長にお会いしたいです」


警備員の視線がわずかに変わる。


だが、それだけだった。


ミシェルほどの家系であっても、この先へ自由に立ち入れるわけではない。


中央開発局は、そんな場所ではなかった。


警備員の一人が無言でインカムへ手を当てる。


「こちら第一警備詰所。ミシェル=アークライト様来訪。セレス局長への面会希望です」


短い沈黙。


ミシェルは静かに待った。


周囲には低い機械音だけが響いている。


壁面を流れる青白い術式光。

監視端末に映る複数の警戒表示。

封印区画監視モニター。


ここが国家中枢級施設であることを嫌でも理解させられる空気だった。


やがて。


インカムの向こうから短い返答が入る。


警備員が小さく目を動かした。


「……確認しました。入館許可が下りました」


次の瞬間。


重い駆動音と共に、背後の第一隔壁がゆっくりと左右へ開いていく。


冷たい空気が通路の奥から流れ出た。


「第二認証区画へご案内します」


ミシェルは小さく頷く。


そして白い通路へ、一歩足を踏み入れた。


第一隔壁を抜けた先――。


そこは、騎士学校とは完全に別世界だった。


白く長い無機質な通路。


壁面には幾重もの封印術式が流れ、

一定間隔で監視機構が配置されている。


足音だけが静かに響いていた。


ミシェルの前後には、四人の武装警備員。


黒灰色の防護装束。

腰部には対天使級術式拳銃。

背部には緊急封印杭。


ただの護衛ではない。


中央開発局直属警備部隊。


国家最高機密施設を守る実戦部隊だった。


その厳重さに、ミシェルは改めて小さく息を飲む。


幼い頃から見慣れていたはずなのに。


今日は妙に、その重苦しさが胸に残った。


研究員達がすれ違うたび、警備員達へ認証を提示していく。


途中には、幾重もの隔壁。


術式ロック。


認証ゲート。


その全てを通過しながら、ミシェルは歩き続けた。


やがて。


通路最奥。


重厚な白銀色の扉の前で、一行が停止する。


――中央開発局局長室。


その入口にも、さらに四人の警備兵が配置されていた。


誰も一切無駄口を叩かない。


静かな威圧感だけがそこにある。


ミシェルは自然と視線を上げた。


厚い防護隔壁。

高位封印術式。

多重認証機構。


国家防衛の中枢。


その中心にいるのが――セレス=クロイツ。


自分の叔母だった。


(……やっぱり、すごい人なんだ)


今更のように実感する。


騎士学校では穏やかな教師として振る舞っている。


だが本来の彼女は違う。


天骸兵装開発責任者。

封印技術最高権限保有者。

中央開発局局長。


エデン=ノアの技術体系そのものを支える存在。


そして――。


アーデルハイドの異変を見た時、あの人は確かに動揺していた。


ミシェルの胸の奥がざわつく。


警備員の一人が扉横端末へ認証を送る。


数秒後。


局長室内部から、静かな電子音が返ってきた。


「……入室許可を確認」


重い駆動音。


白銀の隔壁が、ゆっくりと開き始めた。


局長室内部は、外の無機質な研究区域とは少し空気が違っていた。


広い室内。


壁一面に浮かぶ無数の観測モニター。

高次元波長解析式。

演習データ。

封印区画監視情報。


中央には巨大な半透明投影端末。


その淡い青白い光の中で、一人の女性が椅子に腰掛けていた。


白衣姿のセレス=クロイツ。


長い銀髪を流しながら、静かにこちらを見ている。


ミシェルが室内へ入った瞬間。


セレスは小さく息を吐いた。


「……やっぱり来たわね」


どこか諦めたような声だった。


背後で隔壁が閉じる。


重い駆動音が室内に響いた。


ミシェルはセレスを真っ直ぐ見つめる。


セレスはそんな視線を受けながら、ふっと苦笑した。


「時として、優秀な弟子は厄介よね」


その言葉には、教師としての皮肉と、

叔母としての親しさが少しだけ混ざっていた。


だが。


ミシェルは笑わなかった。


静かな視線のまま口を開く。


「……アデルに、何が起きたんですか」


局長室の空気が、わずかに張り詰めた。


重苦しい沈黙が、局長室に落ちる。


ミシェルの問いに、セレスはすぐには答えなかった。


数秒。


静かにミシェルを見つめたあと、ふっと小さく息を吐く。


そして視線を和らげた。


「……まあ、立ったままというのも何だし」


セレスは軽く肩を竦める。


「座りなさい、ミシェル」


局長室奥――応接区画。


白いソファーと低い円卓が置かれた空間を、セレスは手で示した。


研究施設とは思えないほど落ち着いた空間だった。


ミシェルはゆっくりソファーへ腰を下ろす。


セレスも向かい側へ座った。


張り詰めた空気を少しだけ和らげるように、セレスが苦笑する。


「……一旦、お茶を入れましょうか」


そう言って立ち上がる。


白衣の裾が静かに揺れた。


局長室端に設置された簡易給湯機へ向かう後ろ姿。


だが。


ミシェルには分かっていた。


これは単なる休憩ではない。


――時間を作っている。


言葉を選ぶために。


あるいは。


どこまで話すべきか考えるために。


給湯機から、静かな湯沸かし音が響く。


局長室には淡い機械光だけが揺れていた。


セレスは背を向けたまま、カップへ茶葉を入れる。


その横顔は落ち着いて見える。


だが。


長年彼女を見てきたミシェルには分かった。


――考えている。


慎重に。


とても慎重に。


やがて。


セレスは静かに口を開いた。


「……ミシェル」


湯気の立つカップを手にしたまま、ゆっくり振り返る。


「貴方には、どこまで見えていたの?」


その声は教師としてでも、

局長としてでもなく。


確認するような声だった。


セレスはそのまま続ける。


「演習場で、何を見て」


「何を思ったのか……聞かせてちょうだい」


ミシェルは数秒黙る。


白い湯気が、二人の間でゆっくり揺れていた。


そして。


静かに口を開く。


「……アデルの背中が光りました」


局長室の空気が、ほんの僅かに止まる。


「ほんの一瞬です。でも、見間違いじゃない」


「輪郭だけだったけど……翼に見えました」


セレスは何も言わない。


ミシェルは続ける。


「モニターの数値も異常でした」


「神経同期率の急上昇。波長共振。急激な高次元反応」


「普通の適合異常じゃありません」


そこでミシェルは、一度言葉を止める。


そして。


セレスを真っ直ぐ見つめた。


「……先生、あの時怖がってましたよね」


静かな声だった。


だが、その一言だけで十分だった。


セレスの指先が、ほんの僅かに止まる。


ミシェルは見逃さなかった。


「中央開発局直属職員が即時出動」


「演習停止」


「医務室の封鎖」


「ヴァイス司教まで動いてる」


「……全部、普通じゃない」


局長室に沈黙が落ちる。


湯気だけが静かに揺れていた。


湯気の立つカップを手にしたまま。


セレスは静かにミシェルを見つめていた。


――ここまで見抜くのね。


内心、小さく息を飲む。


演習中の僅かな発光。


一瞬だけ跳ね上がった数値。


教官達の反応。


中央開発局職員の動き。


普通の候補生なら、ただの騒ぎで終わる。


だがミシェルは違った。


情報を繋げている。


観察し、

記憶し、

推測している。


しかも、かなり正確に。


(……本当に優秀ね)


セレスは改めて実感する。


自分の姪であり、

自ら教え育ててきた少女の才能を。


演習場のあの一瞬だけで、ここまで辿り着くとは思わなかった。


情報解析能力。

観察眼。

状況判断。


どれも年齢離れしている。


おそらく情報管理局へ進めば、数年で中枢級人材になる。


――だからこそ厄介だった。


下手な嘘では誤魔化せない。


セレスは小さく苦笑する。


「……瞬時で、そこまで見抜くのね」


その声には、呆れと感心が半分ずつ混ざっていた。


そして静かにソファーへ腰を下ろす。


白い湯気が二人の間を漂う。


セレスはカップへ視線を落としたまま、小さく呟いた。


「本当に、優秀な弟子だこと……」


セレスは静かにカップを机へ置いた。


小さな音が、妙に大きく響く。


局長室には再び沈黙が落ちる。


無数の観測モニターだけが淡く発光していた。


セレスはしばらく黙ったまま、視線を伏せる。


――誤魔化せない。


もう理解していた。


目の前の少女は、既に核心近くまで辿り着いている。


中途半端な嘘では逆に疑念を深めるだけだ。


だからこそ。


セレスはゆっくり顔を上げた。


「……事実を知りたい?」


静かな声だった。


だが、その一言だけで空気が変わる。


ミシェルは何も言わず、セレスを見つめ返す。


セレスは続けた。


「もし知れば――」


そこで一度言葉を切る。


ほんの僅かに目を細めた。


「貴方の、アーデルハイドを見る目が変わるかもしれないわ」


局長室の空気が静かに張り詰める。


脅しではない。


忠告だった。


中央開発局局長として。

そして、アーデルハイドの秘密を知る数少ない人間としての。


セレスの言葉が、静かに局長室へ落ちる。


――貴方の、アーデルハイドを見る目が変わるかもしれないわ。


ミシェルは、すぐには答えなかった。


自然と指先へ力が入る。


セレスの表情。


声色。


空気。


その全てが、今まで見たことのないほど重かった。


冗談でも、

比喩でもない。


本当に“危険な何か”へ触れようとしている。


ミシェルは瞬時に理解する。


――これは、自分程度が軽々しく踏み込んでいい話ではない。


中央開発局局長。


エデン=ノア最高機密級技術責任者。


そんなセレスが、ここまで慎重になる理由。


ただ事ではなかった。


おそらく国家中枢級。


いや。


それ以上かもしれない。


ミシェルは小さく視線を落とす。


胸の奥がざわついていた。


知りたい。


でも。


知れば戻れない気がした。


セレスは黙って待っている。


急かさない。


その沈黙そのものが、逆に事態の深刻さを物語っていた。


やがて。


ミシェルは静かに息を吐く。


「……そんな顔、初めて見ました」


小さな声だった。


セレスの目がわずかに細くなる。


ミシェルは苦笑するように続けた。


「先生がそこまで言うってことは……本当に、危ない話なんですね」


局長室のモニター光が、静かに二人を照らしていた。


ミシェルは静かに視線を落とした。


白いティーカップから立ち上る湯気が、ゆっくりと揺れている。


頭の中には、自然と一人の少女の姿が浮かんでいた。


――アーデルハイド=セラフィーネ。


初めて会った日のことを思い出す。


入学式。


人混みの中で、どこか落ち着かなさそうに立っていた銀髪の少女。


特別目立っていたわけじゃない。


成績も飛び抜けていたわけではない。


けれど。


何故か、目が離せなかった。


空を見上げる横顔。


少し不器用な笑い方。


誰かのために無茶をするところ。


気づけば、自然と隣にいた。


まだ長い付き合いじゃない。


知らないことだって沢山ある。


過去も。

抱えているものも。

本当の意味では、何も知らないのかもしれない。


でも。


ミシェルは静かに顔を上げた。


「……それでも」


小さな声が、局長室に落ちる。


「私は、アデルが怖い子だとは思いません」


セレスの目が静かに細められる。


ミシェルは続けた。


「もし何か秘密があったとしても」


「それで、急にアデルが別人になるわけじゃないです」


迷いはなかった。


アーデルハイドが誰より不器用で、

優しくて、

傷つきやすいことを。


ミシェルは知っている。


ほんの短い時間でも、

それだけは確信できた。


だからこそ。


ミシェルはセレスを真っ直ぐ見つめる。


「……知りたいです」


その声は静かだった。


けれど、はっきりとしていた。


ミシェルの言葉を聞き終えたあと。


セレスは、しばらく何も言わなかった。


静かな沈黙。


局長室に浮かぶ無数の観測モニターだけが、淡い光を揺らしている。


やがて。


セレスは小さく目を閉じた。


――覚悟を決めるしかない。


もう、この子は止まらない。


中途半端に隠せば、

きっと自分で真実へ辿り着く。


ならば。


危険性も含めて、自分の口で伝えるべきだった。


セレスは静かに息を吐く。


そして。


ゆっくりと口を開いた。


「……まず、知っておいてほしいことがあるわ」


その声は、中央開発局局長としてのものだった。


「ここから先は、正式な許可なく誰にも話してはならない」


局長室の空気が静かに張り詰める。


ミシェルは無言で頷いた。


セレスはゆっくりと続ける。


「アーデルハイド=セラフィーネは、普通の適合者じゃない」


ミシェルの表情が僅かに変わる。


「十歳の時、彼女は中央開発局の適合検査を受けている」


「通常の騎士学校入学前検査より、遥かに深い精密検査よ」


ミシェルは息を呑む。


そんな話、聞いたことがなかった。


「結果は――異常だった」


セレスの視線が、どこか遠くを見る。


「第十二翼への適合反応、5.7%」


局長室の空気が静まり返る。


ミシェルの目が見開かれる。


理解してしまったからだ。


その数値の意味を。


第十二翼。


騎士学校の歴史授業でも、その名だけは教えられる。


星外降臨戦争。

十二国家。

封印された女神の翼。


だが。


その詳細は、国家最高機密として伏せられていた。


長い年月の中で、適合反応を示した者はいない。


――零。


それが当たり前だった。


だが。


アーデルハイドだけが違った。


セレスは静かに続ける。


「しかも誤測定じゃない」


「七回再検査して、全部同じ結果だった」


ミシェルの喉が小さく鳴る。


セレスは苦しげに目を伏せた。


「……私達は最初、間違いだと思った」


「そうであってほしかった」


「でも違った」


静かな声だった。


だが、その奥には今でも消えない恐怖が滲んでいた。


「アーデルハイドは、“第十二翼”に選ばれている」


ミシェルは言葉を失っていた。


第十二翼。


その単語だけで、意味が違う。


騎士学校で学ぶ歴史。

旧文明崩壊。

星外降臨戦争。

十二国家。

封印された女神の翼。


その全ての中心に存在する、エデン=ノア最大の禁忌。


それが――アーデルハイドと繋がっている。


頭が追いつかなかった。


セレスは静かにミシェルを見つめる。


「……貴方が思っている以上に危険な話よ」


「もし情報が外へ漏れれば、各国家が動く可能性すらある」


「第十二翼は、それほどの存在なの」


ミシェルの指先が小さく震える。


自分は今、

国家機密どころではない何かを聞いている。


エデン=ノアの根幹。


世界そのものに関わる秘密。


自分が想像していたより、遥かに大きい。


遥かに重い。


セレスは小さく目を伏せた。


「だから私は、貴方を巻き込みたくなかった」


「ヴァイスも同じよ」


「アーデルハイドを普通の少女として生かしたかった」


「……けれど、もう隠しきれないところまで来ている」


局長室に沈黙が落ちる。


ミシェルは俯いたまま動かなかった。


頭の中で、様々な感情が渦巻いていた。


怖い。


正直に言えば、怖かった。


自分が踏み込んでしまった領域の大きさに。


アーデルハイドという少女が背負っているものの重さに。


もし暴走すれば。

もし各国に知られれば。

もし――。


そこまで考えて。


ミシェルの脳裏に浮かぶ。


空を見上げる銀髪の少女。


少し不器用で。

優しくて。

時々、寂しそうに笑う親友。


静かに。


ミシェルは顔を上げた。


まだ迷いは消えていない。


恐怖もある。


けれど。


その瞳だけは、もう揺れていなかった。


「……それでも」


小さな声。


だが、はっきりとしていた。


「アデルは、私の親友です」


セレスの目が静かに細められる。


ミシェルは真っ直ぐセレスを見つめ返した。


「何を背負ってても」


「どんな秘密があっても」


「私は、あの子を一人にしたくない」


胸の前で、そっと拳を握る。


「……私は、彼女を支えたいです」


局長室に静かな沈黙が落ちる。


その言葉を聞いたセレスは――ほんの少しだけ、安心したように目を細めた。

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