92話 自認か弱い系
92話 自認か弱い系
「今なんて言ったのかな?、圭太!」
私、牧野圭太は、自分史上過去最高の修羅場に突入していた。
さきほどの発言でだいぶご立腹の様子の悠木さん。ほっぺたをプクーと膨らませている。怒っているところも可愛い‥‥‥。
‥‥‥なんて呑気なことを事を言ってる場合では無さそうだ。
「いやー、違うんだってば。さっきのは言葉の綾というかなんというかって感じなんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
なんとか誤魔化せたか?
大体こういう時って突然強い風なんかが吹いて、相手が今なんか言った~?、ってなるところじゃんか。これは俺悪くないまであるか?
タイミング良く吹いてくれない風の方に問題があるのではないか。というか、声が聞こえなくなるくらいの突風って物凄い威力なんじゃないか?
人も建物も吹き飛ばされる描写が必要じゃないだろうか。作り込みが甘いな、はっはっは。
「私さ、結構気にしてるんだよね、昔の私の事さ」
俺が現実逃避をしていると、もじもじしながら悠木が呟く。
「いや、昔の悠木は男の子の友達くらい仲良く思ってたってだけで、男っぽいなんて思って無かったからな」
とりあえず悠木さんに励ましの言葉をかける。
「ましてや、男の子だと思ってたなんて、絶対に無いからな?、安心してほしいそこだけは」
全力で悠木のメンタルケアを遂行していると、悠木がじーっとこちらを見てくる。
そんなジト目で俺を見ないでくれ。自供してしまうから‥‥‥って、自供もなにもやましい事は無いんですけどね‥‥‥へっへっへ。
「ほんとかな~?」
「ほんとうですよ?‥‥‥」
「へえー、ほんとうですかね~」
「この嘘偽りの無い目を見てくれ。純粋無垢な子供なままだろう?」
「い~や、噓つきの目をしてるね。しかも極悪人の目まであるね」
「そんな事無いですよー‥‥‥」
俺はじっとこちらを見つめてくる悠木の圧力に耐えきれず、小声でそう答える。
「そんな純粋無垢さんの最近のあだ名知ってる?、学校の中で」
そんなあだ名なんて付いてたのか。俺が怪我で入院してた頃に付いたんだろうけど、そんなまるで俺が有名人みたいな風潮やめませんか。私が可哀そうです。
「全力二股男らしいよ」
「なんだそれ、二股野郎は百歩譲っても‥‥‥、いや1万歩くらいは譲らないと許せないんだけど」
すると、悠木が少しくすっと笑いながら意味を教えてくれた。
「全力ってのはね、私を命がけで守ったって所から来てるらしいよ。全力で二股しようとしてる所を評価されたみたいだね」
「なんだそれ、カッコいい事をしたはずなのになんか複雑だな」
まず二股じゃないから、そのあだ名は失格だ。第三者からしたらそう見えるんだろうけど。
‥‥‥そういうえば水瀬さんも祭りにきてるのかな。最近話せてなかったな。
この前の退院した日、妹に邪魔されてちょっと気まずい空気になったのだ。そこから話しかけるのも気が引けてしまっている。
水瀬さん夏祭りに誘わなかった事怒ってるかな。
「なんかさ‥‥‥、今悠木別の事考えてない?」
「えっ、そ、そんな訳ないじゃん」
急に悠木が俺の心を読んできたから驚いてしまった。
「もしかして水瀬さんの事?」
「なんで、水瀬さんが出てくるんだよ。そんな悠木といるのにさ、それじゃ本当に全力二股男みたいじゃん」
「ん~、女の勘ってやつかな」
なんだその恐ろしい第六感は。
「まあ、あながち間違ってないよね、全力二股男ってのもさ」
「大間違いだからな。当事者が認めちゃったら終わりだから」
「私といるのに、水瀬さんの事考えてたじゃん」
少し拗ねた様子の悠木さん。これは嫉妬というやつでは無いですか?。可愛い女の子が自分に嫉妬してくれるなんて、ファンタジーの世界の話かと思っていた。
「しかも私の事、男の子だと思ってたみたいだし~?」
「いやだからそれはポジティブな意味の奴だから。あえてそういう表現をしたというか‥‥‥」
「また圭太意味分かんない事言ってる」
「何言ってんだよ。俺はいつも意味の分かった事しか言わないぞ」
「その発言がもう意味分かんないもんね」
俺の話術によって悠木の意識を逸らすことに成功した。これも俺の純粋無垢な瞳があるから成せる技だろう。
「私小さい時って結構か弱い女の子だった気がするんだけどな~」
「いや、それは無理があるだ‥‥‥」
あ‥‥‥。
実は意外かもしれないんですけど、学ばない男ってよく言われるんです。
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