91話 男
91話 男
「はあ‥‥‥、大丈夫か悠木」
「なんとかね、ちょっと走りずらかったけどさ」
人混みの方に走りなんとかあの二人組を巻くことに成功したようだ。
「圭太凄いね‥‥‥」
悠木が息を整えながら喋る悠木。浴衣が走った影響で少しはだけている。これは‥‥‥って今はそれどころじゃ無いよね。
「まあ、りんご飴様様だな。りんご飴が無かったら俺がボコボコにされている間に悠木を逃がす羽目になってたから」
「そんな圭太を置いて行ったりなんかしないよ。というか私の方が喧嘩強かったじゃん」
そういえばこの人に喧嘩で勝った事無かったんだった。でもあの男二人に勝てるとは思えんから、俺が身代わりになってまた病院送りに‥‥‥。
救急車で搬送される時にあの病院だけはやめてくださいと言わないといけない所だったな。
「でもさ、さっきの圭太格好良かったよ」
「そんな大したことじゃないって。男なら当然だからな‥‥‥」
そんな面と向かって褒められる事に慣れていないからか、顔を背けてしまった。その服装で褒められれ嬉しくない奴なんていないだろう。そんなやつは日本男児失格だ。
「悠木、その‥‥‥浴衣直した方がいいと思う」
「ああ、そうだね‥‥‥。早く言ってよ!」
「いや、触れずらいじゃんそういうの」
流石の悠木も浴衣がはだけているのを見て少し照れているようだ。可愛い‥‥‥。
なんか本当のカップルみたいだな。
ふとそう思ってしまった。水瀬さんとは本当のカップルじゃない。でも悠木は俺の事を好いてくれている。こんな子の告白にすぐ答えられないのか俺は。
自分の不甲斐なさを感じていると、悠木が浴衣を直し終えていた。
「えっちだね圭太」
「ちゃんと報告しただろうが」
「私の好きな人ってこんなにかっこいいんだって思っちゃったな」
「ありがとう‥‥‥」
悠木にそんなことを言われる人なんて今後中々いないだろう。俺は‥‥‥。
「なにか考え事でもしてる?」
「いや、してないけど」
「水瀬さんの事?」
「ち、違うって。なんで今水瀬さんなんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
‥‥‥気まずいからとりあえず話をそらそう。
「さっきの先輩知ってるのか?」
「うん。色んな女の子をとっかえひっかえしてるって噂だよ」
「最低じゃんか。女の敵だな」
「圭太がそれ言うかな?」
悠木が笑いながら、こちらを指さす。
「ちなみに圭太も色んな噂があるって知ってた?」
「あるのは知ってたけど、あんまり耳に入れないようにしてたな。だからあんまり知らない」
有ること無い事噂されるのは結構疲れる。だから出来るだけ聞かない様にしていたのだ。
「例えば、水瀬さんの弱みを握って脅してるだとか」
「って、なんだよそれ」
確かに弱みは握っているかもしれないけど、脅されているのは俺の方なんですが。客観的に考えると意味が分からない俺と水瀬さん。
「あと、私と水瀬さんと三人で‥‥‥」
「おっと、それ以上はだめだ」
男の夢の様な状況を表す言葉を悠木が発しようとした所をなんとか防いだ。続きは有料サブスクでどうぞ。
「もともとそこまで言うつもり無かったしー。そんな言葉を言わせたいんだ私に」
「違うわ。色々な配慮をした結果なんだよ。大体女の子が男の前でそんな事言うなよ。」
「そんな事ってどんなことなの~?」
「はいはい、そうですねー」
わざとらしい口調で笑う悠木をなんとかあしらう。なんか、今の俺めっちゃ青春してるのではないだろうか。
周りから見たらただのイチャつくカップルにしか見えないじゃないか。なんかそう思うと急に恥ずかしさが湧いてきてしまった。
「というかさ、ちゃんと女の子って思ってくれてるんだね‥‥‥。嬉しい」
「そりゃ昔とは違うからな。昔なんて悠木のこと男だとって‥‥‥、あ」
‥‥‥あー‥‥‥。
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