87話 待ち合わせ
87話 待ち合わせ
「人多すぎ‥‥‥、帰ろうかな‥‥‥」
花火大会の会場の近くまでやって来た。こんなに人がいるのか花火大会って。最近来てなかったから知らなかった。というか、普段どこに隠れてるんだこんな人数が。
そしてなんと、この前の悠木のRINEが来てから、いつのまにか花火大会当日になっていた。
おかしいな、1週間くらい前に誘われてたんだけどな。
漫画を読んでいたらいつのまにか今日だ。
今日の事とかちゃんと考えようって思ってたのに、もう当日になっていたのだ。というかもう花火大会の会場に向かっている最中だ。
なにかがおかしいぞ。俺を妨害する何者かが居るに違いない。俺の事を良しとしない勢力が暗躍しているはずだ。
‥‥‥だめだ。俺が悪いのは分かってる。現実逃避してた俺のおかげで、あっという間に今日を迎えてしまった。逆に考えすぎずに済んだのかもしれないけれど。
悠木と祭りなんて小さい頃ぶりだぞ。なんか緊張してきたな。というか女の事浴衣デートなんてしたこと無いし、エスコートできる自信が無い。
「ここらへんだけど‥‥‥」
そんな事を考えていると、悠木が指定した待ち合わせ場所にやって来た。この場所は花火大会に近い事もあり、待ち合わせをしてる人などが多くいた。
「みんなもっと別の場所で待ち合わせしろよ」
悠木まだかな‥‥‥。
‥‥‥待ち合わせ時間の30分前に来てしまった。どんだけ楽しみにしてるんだよ俺は。
まあ悠木と久しぶりに花火大会だし、幼馴染だし、別に普通だからね?、変じゃないからね。
俺がそわそわしながら悠木を待っていると、周りが少し賑やかになっていた。
近くにいた男子グループ達がなにやら噂話をしている。
男どもの視線の先を追うと、一人の女の子がこちらに向かって歩いていた。
もしかして‥‥‥。
その女の子はこちらに気が付くと、手を振りながら小走りで向かってきた。
‥‥‥めっちゃ可愛い。素直な感想が真っ先に浮かんだ。
「お待たせ~、待った?」
その子が俺に話しかけると、周りの男たちは何か嫌味っぽいものを吐きながら自分たちの会話に戻って行った。
‥‥‥そんなに言わなくてもいいじゃん。なんであいつがとか言ってたよね、あそこの人たち。心を抉られたところでその子に返事をした。
「いや、さっき来たから大丈夫だよ」
とりあえず、女の子と待ち合わせをする時のテンプレを決めることに成功する。
「いや~楽しみすぎて早く来すぎちゃったと思ってたんだけどさ、圭太も楽しみだったんだね?」
「まあな、普段から30分前行動を徹底してるんだよ。出来る男って呼んでくれ」
「わあーかっこいいですねー」
「もっと感情を込めて言えよ」
あからさまに棒読みをする悠木に思わず突っ込んでしまう。
「その浴衣似合ってるな。良いと思う、とても」
「ありがと。圭太に言われると嬉しいな。でも、照れるね‥‥‥」
悠木があまりにも喜んでくれるから、言った自分も恥ずかしくなってしまう。女の子を素直に褒める事の難しさを実感した。しかも、俺の事を好きって言ってくれてる子に。
周りからの注目を一気に集めるくらい可愛い子とデートなんて、俺はなんて恵まれてるんだろうか。中学生の自分に言ったら、モテな過ぎて頭がおかしくなったとか言われてしまう気がする。
「可愛い、なんて悠木だったら言われ慣れてるだろ?」
「そうじゃないの。圭太に言われてるから嬉しいんだよ」
「あ、そうなの‥‥‥」
そんなこと言われたらなんて返せばいいか分からないじゃないか。発言した悠木でさえ恥ずかしさで顔を覆ってる。
「なんか初々しいってやつだね」
「それ、付き合ってから言うもんだぞ」
「知ってるよ」
そういうと悠木は俺の手を引っ張り、花火大会の会場に向けて歩き出す。
「じゃ、行こっか」
そして俺も悠木と一緒に歩き出した。
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