(幕間)82話 彼が待つ裏で 2
(幕間)82話 彼が待つ裏で 2
「休み時間の話の続きをしたくてさ~」
この時、水瀬は一人心の中で恥ずかしがっていた。
勝手に人から告白されるのだろうと勘違いしていたからだ。
「ええ、私も気になっていたから‥‥‥」
それと、同性からの告白ではなくて安心もしていた。流石の水瀬も同性からの告白の経験はないようだ。
「‥‥‥なんか大丈夫?、顔色悪くない?」
「いえ、大丈夫ですから」
「そ、なら良かった。それで話の続きなんだけどさ」
「ええ、そうよね」
水瀬も一度心を切り替えて、その話に集中するようだ。
「朝日奈さん‥‥‥、なんで私が牧野くんと昔仲が良かった事知ってるの?」
「いやー、小さいころの圭太が私以外の女の子と仲良かったのが珍しかったから。なんか覚えてたんだよねー」
「そうなのね‥‥‥」
「なんか結構すぐ引っ越しかなにかでどこかに行っちゃった覚えがあるんだけど」
「私大人しくて友達も居なかったから誰も覚えてくれてないと思ってた‥‥‥」
「私も水瀬さんとは直接話した事は無かったかな?、ただ圭太と仲が良いなーって」
「そう‥‥‥。でも私牧野君にも覚えてもらって無かったのは流石にちょっと‥‥‥」
なにか牧野に思うところがあるのか水瀬は少し不服そうだ。
「ははー、そうなんだ。圭太も酷い奴だね」
悠木がそう言うと、水瀬は強く頷いた。その点においては、二人の意見は一致しているようだ。
「でもだからかー‥‥‥」
「?」
水瀬はその悠木の意味ありげな言葉に首を傾げた。
すると悠木はとある一言を発する。
「水瀬さんと圭太って付き合ってないんでしょ?」
その一瞬、時が止まったような感覚を水瀬は感じていた。世界の終わりとでもいうくらいの。
「えぇ‥‥‥」
そして、悠木の衝撃発言に水瀬は返す言葉が見つからない様子だ。
「なんで知ってるの?!、って顔だね。でも誰から聞いたかって事は教えられないんだ」
水瀬は悠木の事を一気に警戒した。先ほどまでは気が合うのではと感じていたというのに。
「安心してよ水瀬さん。この事をばらすつもりは今の所ないからさ。あとこれについては圭太のせいじゃ無いから安心してね」
その言葉を聞いて少し安堵の表情をした水瀬。
「ああでもさ、この事を秘密にする代わりにお願いがあるんだけどさ」
「なにかしら‥‥‥」
悠木は急に真剣な表情をして、水瀬に言った。
「圭太と別れたって事にしてくれないかな?」
「‥‥‥」
水瀬は喋らない。
「なにも今すぐにって訳じゃないんだけど、付き合ってる振りなんて、圭太が可哀そうだなって思ってさ。私幼馴染だし、そういうの見過ごせないっていうかね」
「‥‥‥」
それを聞いてもまだ水瀬は言葉を発さない。
「脅してる訳じゃないよ?、私は幼馴染として圭太を‥‥‥」
「いや‥‥‥」
「え、嫌って言った?」
「嫌よ。私はそう言ったわ」
「水瀬さんくらい美人だったら他にもいい人なんて沢山いるだろうしさ‥‥‥」
「私は‥‥‥、牧野君が好き」
「ええ‥‥‥」
悠木は水瀬のその言葉に少し面食らったようだ。
「牧野君は‥‥‥、心の底から運命の人って思える人なの。他の人なんてってこと言わないでください」
「そんなつもりじゃ‥‥‥」
「私が家庭の事情で落ち込んでて‥‥‥、元から根暗だったって所もあるけど‥‥‥、あの時の牧野君に私は救われたの。私に話しかけてくれて、無理やり外に連れ出してくれた」
悠木はもう水瀬に口を挟む気など、とうに失われていた。
水瀬の涙ぐむ姿を見て、水瀬の本心を悟った。
「それで私の事を覚えてくれて無いことに凄く落ち込んだ。神様はなんて残酷なんだって。だから少し意地悪じゃないけど、今の関係になったの‥‥‥」
水瀬は涙を抑えながら話を続けた。
「私が素直になれないのは認めるけど、朝日奈さんのその要求は、今は飲めない。だから、まだ少し待ってほしいです」
「そう‥‥‥なんだ」
二人とも沈黙の時間が続く。
だが、悠木が再び口を開いた。
「分かった‥‥‥。今はまだみんなには言わない、保留にしとく。でも二人の邪魔はしちゃうかもね、あはは」
悠木が冗談か本気か分からような事を言うと、水瀬は悠木に一つ問いかける。
「一つ聞いていいかしら、あなたがそこまで牧野君を心配するのは幼馴染だから?」
「そうだよ。ただそれだけで理由として充分でしょ。じゃ、私行くね。今日はお話できて良かった」
「‥‥‥」
水瀬はなにも言葉を返さなかった。
「じゃあまた明日。来てくれてありがとね」
そう言うと悠木は帰っていった。
水瀬はただその姿を見送った。
「今日は一緒に帰れそうにないや」
そう言うと、水瀬は牧野にRINEを送った。
そしてその場に座り込んだ水瀬。
その顔は涙で濡れていた。
※時系列的には33話の時のお話です。
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