76話 俺としたことが‥‥‥
76話 俺としたことが‥‥‥
「久しぶり~‥‥‥」
悠木が待ち合わせ場所に指定してきた駅前で待っていると、とことこ悠木が歩いてきた。
「お、おう久しぶりだな」
う、これは耐えられそうにないぞ。やっぱり悠木めっちゃ気まずい感じだし。ここは一旦場所を変えて態勢を整えるか。
「とりあえず悠木が行きたいって言ってた店に行くか」
「そうだね」
まじで人格変わった?、ってくらい大人しいというかなんというか。いつもだったら俺へのイジリを3回くらいはしてきてる頃合いだというのに。
「あっ、ごめんつまづいちゃった」
なに今の‥‥‥。
‥‥‥可愛い。
って悠木が段差でつまづくだなんて見た事無いぞ。あの運動神経お化けの悠木さんだぞ。
あんな普通の少女みたいな声出して、お淑やかにつまづくだと?、さては偽物か?
「大丈夫か悠木。手貸すぞ」
「あ、ありがとう‥‥‥」
なんか変だなこいつ。なんでこんな普通の女の子みたいになってるんだ。別にドキドキなんてしてないからな。いつもと違うから調子悪いだけだし。
それでいうと悠木は普通の女の子では無いってことになるね。
‥‥‥うん、怒られるからやめとこう。
◇◇◆◇◇
「お、あの店だな。結構オシャレな所だな、悠木もこういうの好きなんだな」
「うん、ダメ‥‥‥かな?」
そう言いながら俺を見上げてくる悠木。
「え、いやダメなんて言ってないけど‥‥‥」
誰ですかこの普通の美少女は。いつもうるさいし、うざいから気にならんかったが、普通にしてたらめっっちゃ可愛い‥‥‥、なんて思ってないけどな。
はは、ここで簡単に落とされてるようじゃ、まだ搾取される側の人間だ。典型的な弱者男性だ。
俺をそんなのと一緒にしないでくれよ。
そんな事を考えていると、悠木がお店に入ろうとしていた。
‥‥‥
‥‥‥
は!、なんだと!?
なんと俺は無意識の内にお店のドアを開けてあけていたのだ。俺としたことが‥‥‥。
「ありがと、圭太」
「いや、まあな」
「圭太がこんなレディーファーストな行動してくれたのは初めてかも。たまにはやるじゃん?」
今日の悠木はなんか変だぞ。
‥‥‥気まずいから変に感じるだけだな、きっと。
俺は自分にそう言い聞かせながら店内に入った。
◇◇◆◇◇
「なんか今日変だね、はは」
「そうか?、俺は普通だけどな。悠木だけじゃないか変なのは」
「そういう事言うんだ‥‥‥」
そう言いながらこちらを見上げてくる悠木。
可愛‥‥‥、川でも行きたいなー。
まずい、これでは悠木の空気に飲まれてしまう。そんな事はあってはならない。俺の将来の夢は亭主関白だ。ここで主導権を握られる訳にはいかないのだ。
「今日のこの服可愛い?」
‥‥‥
「可愛い‥‥‥」
あ、だめだこれ‥‥‥。
そして、未来の亭主関白(仮)と普通に美少女の厳しい戦いが幕を開けたのであった。




