74話 変な物とかは特に見てないわよ?、特には
74話 変な物とかは特に見てないわよ?、特には
病院から帰宅した俺は数週間ぶりの我が家でとことんくつろいでやろうと思っていた。
‥‥‥そう思っていたのだ。
「さっきの看護師さんとずいぶん仲がいいのね」
「えっと、そうでもないよ?」
「否定くらいしなさいよ!」
さきほど家に付いたのだが、恐ろしくなれた感じで俺の部屋に居すわっていたぞこの人。俺の知ってるかぎりじゃ部屋に入れたことなんて無かったはずだ。
もしかして‥‥‥、いや気にしないでおくか。俺も水瀬さんの部屋に入ったことあるし。
「いやいや、ごめんそういうんじゃなくてさ」
「もう、すっかり平和ボケしてしまってたのね」
水瀬さんが何か変なこと(いつもの)を言ってるけど、今はそれどころじゃないのだ。さっきルリさんから発覚した驚きの情報にまだ戸惑っている。
だから少し一人になりたかったんだけど。いや、なにも久しぶりの一人の空間だから特別何かしようとかそういうんじゃないですよ、ええまったく。
「さっきなにか凄い驚いてる感じだったけど、何かあったの?」
「えっとね‥‥‥」
だめだ、やっぱり気になってしまった。
いや、気にならない方がおかしいだろう。
「えっとさ、なんで俺の部屋居るの?」
「え、彼女だから当然でしょ?」
「いやそれは分かるんだけどさ。俺がリビングで荷物を片づけて、部屋に上がって来たらもう居たよね?」
「ええ、そうね」
「俺から自分の部屋教えたことあったっけ?」
「そういえば無いわね」
「じゃあさ、変じゃない?」
「‥‥‥牧野くん、余計な事は考えないほうが良いわよ。疲れるでしょう?」
恐らく俺が入院してた間、麗奈に教えられてっていうパターンか。あいつ本当に‥‥‥。
「そうね、変な物とかは特に見てないわよ?、特には」
「いや逆に怪しい感じになってるからね」
「そう?、牧野くんを安心させようと思ったのだけど、逆効果だったみたいね」
「そういうのは言及しない方がいいんだよ」
水瀬さんがニコニコした表情で俺の部屋を漁っていたのが、目に浮かんだけど。もう過去の事を気にしてもどうしようもないからな。さあ、切り替えてい‥‥‥。
「そういえば、そこの棚の後ろにあった箱の中は見てないから安心してね」
しっかり見てたかあ。
「いや、あれはね小さいころに空き地で拾ってから捨てられないだけなんだ。なんかそういうの愛着が湧いちゃってさ」
「あら、適当に言っただけなのに当たってたみたいね。そんな人の部屋を勝手に漁ったりなんかしないわよ。これでも常識は備えてるつもりよ?」
あなた誘導尋問のプロですか。いや、この人頭が良いわけじゃ無いからたまたまなんだろうけど。恐ろしいな、これが女性の本能なのか?
「これでもって事は自覚はあるんだね。自分がおかしいって事に対して」
「おかしいっていうのは酷いわね。特別って言ってくれない?、スペシャルでも良いわよ?」
「それどっちも同じ意味だからね」
相変わらずマイペースどころか水瀬さんの独壇場だな。一応、俺の部屋だよね。俺のホームだよね。おっと、水瀬さんみたいな事を考えてしまっていたな。
そういえば、ずっと気になってた事を聞くチャンスじゃないか?。水瀬さんが俺の事をどう思っているのか。今ここで聞いてしまおう。
‥‥‥でも、なんか冷たい事言われたら嫌だな。思い上がるなよ!、とか言われないかな。それは流石に言わないだろうけど‥‥‥。
なんか俺が意識してるみたいじゃん。実際意識はしてるんだけどさ。なんかこう本当に聞こうとすると‥‥‥。
あ~嫌だな~。だれか聞いてくれないかな。‥‥‥いや、聞いてしまおう。
俺は男だ。男の中の男だ。メンズだ。オスだ。雄だ。
聞くぞー、行くぞー、よーし。
「水瀬さん、真面目な話があるんだけど」
「ん?、急にどうしたの?」
「あ~‥‥‥」
今、なんか時止まってる?
そう、俺は二言目が出てこず固まってしまったのだ。
こういう経験初めてだから、なんて言えばいいんだここから。二言目を考えて無かった。
いや、今思ってることをそのまま言うだけだろ?
簡単じゃないか。
「あのさ、じ‥‥‥」
俺がなんとか二言目を絞りかけたその時だった。
「お兄ちゃ~ん、杏葉さーん。ってなんか邪魔しちゃった?」
‥‥‥おお妹よ、それは漫画でしか許されないタイミングだろ‥‥‥。




