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銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武  作者: 潮崎 晶
第23話:次なる一手
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#13

 

 その日の昼食は技研の食堂で、職員や技師達に混じって済ませたノヴァルナは、午後イチで再びBSIユニット格納庫に向かった。ただし午後の目的は、エイザンの『ピースメーカー』ではなく、同じ格納庫内に置かれている人型機動兵器だ。ノヴァルナが朝にここを訪れた時、外殻が外されてフレーム状態だった機体である。それが今は、塗装無しの乳白色の仮設外殻が取り付けられていた。頭部などはまるでマネキン人形か、汎用アンドロイドを思わせる。



“RRD-45F-X1”―――



 開発中のノヴァルナ用新型BSHOであった。


 現在ノヴァルナが使用している『センクウ・カイFX』は、それまで使用していた『センクウNX』を再設計して、“トランサー”対応の機体レスポンス向上と、超空間狙撃砲D-ストライカー『サモンジ』への、装備対応機能を付加したものである。

 ただこれはあくまでも『センクウNX』に、新たな機能を後付けした機体でしかなかった。これに対しRRD-45F-X1は、機体設計の基礎段階から、“トランサー”やD-ストライカー運用機能が設定されており、さらに能力的にキャパシティに余裕―――伸びしろが持たせてある。この格納庫に置かれているのは、その新型BSHOのプロトモデルだった。


 プロトモデル機の元へノヴァルナが向かった際、機体の足許には技術者の一団が待っていた。来ている制服から技研の人間ではなく、民間企業の者だと知れる。機体を共同開発しているオ・ワーリ宙域のガルワニーシャ重工と、ミノネリラ宙域のルモ・イル・インダストリアルの技師達である。


「お待たせしたな」


 そう言って歩み寄るノヴァルナが着用しているパイロットスーツは、いつもの金龍が巻きつく様が描かれた青いスーツではなく、機体の仮設外殻と同様の乳白色に塗られた、データ収集用のスーツである。「いいえ。ありがとうございます」と応じて頭を下げる技師達に、ノヴァルナは「とっとと始めるか」と告げ、ハッチが開いたコクピットから下がる、昇降ワイヤーの把手を掴んだ。


 コクピットに体を収めたノヴァルナは、機体の対消滅反応炉を起動する。ゴロロロロ…と低く唸るような起動音が響き、心臓部に“火が入った”事を示した。


「スタートした。いつでもいいぜ」


 通信機で告げるノヴァルナ。これを受けて技師達のリーダーは、機体傍らに設置されたモニターモジュールを操作しながら応じた。


「ありがとうございます。では早速ですが、“トランサー”誘発機能の反応チェックから、入らせて頂きます」

 

 ノヴァルナの“トランサー”能力は高いのだが、欠点として存在しているのが、自分の意識で発動が出来ない点にある。

 現在の発動条件は、自身の生命が危機的状況に陥った場合に、高確率で発動するというものだが、これとて百パーセント発動するとは限らない状態であった。これに対し、ノヴァルナが苦戦を強いられたBSHOパイロットの、ベグン=ドフや前星帥皇テルーザ、偽星帥皇エルヴィスなどは自分の意思で、“トランサー”を発動させる事が可能となっていた。


 RRD-45F-X1のサイバーリンク回路には、操縦者から取得した脳波の逆流作用によって、“トランサー”を人為的に誘発させる機能が備わっている。今回のテストではまず、この誘発機能の調整から入る流れだ。ガルワニーシャ重工の技師長が、ヘッドセット取り付けの通信マイクでノヴァルナに告げる。


「サイバーリンク接続。起動レベル12、深度35…機体反応ラグ0.023から始めます。用意…リンクスタート、三十秒後に“トランサー”誘発です」


 やがてきっかり三十秒後、ノヴァルナの意識はプロトモデルを通して、技研全体のNNLシステムと溶け合っていった………




 RRD-45F-X1のテストは二時間ほどで終わり、ノヴァルナはこの日の公務を終えた。妻のノアと約束した通り午後は早めに切り上げて、残り時間を息抜きで過ごすためである。


 テストを終えてそのまま技研で私服に着替えたノヴァルナは、ハイキングにでも行くような姿に代わり、リッダ所長らの見送りで再びランとジークザルト、ヤスークを連れて技研から出た。するとエントランス前の停車場には、ここまで乗って来た黒塗りの公用車とは別の、六人乗り大型RV車が二台停車している。

 ノヴァルナ達が向かったのはその二台の方だ。歩み寄ると運転席のドアが開き、前の車からは『ホロウシュ』のジョルジュ・ヘルザー=フォークゼム、後ろの車からはノアの侍女兼護衛役のメイア=カレンガミノが降りて来て一礼した。二人もやはり、アウトドア向きの私服姿である。


 ノヴァルナは「よう」と気安く右手を挙げ、後方のRV車へ近づいた。幅の広いRV車の二人掛け助手席にはメイアの双子の妹マイアと、キノッサの妻で今は留守を守っているネイミアが乗っている。

 メイアが後部座席のドアを開けると中に、これもアウトドアルックのノアが座っており、ノヴァルナに微笑みを投げ掛けて、「お疲れさま」と声を掛けて来た。


「待たせたか?」


 問い掛ける夫にノアは、「ううん」と軽く首を左右に振る。






▶#14につづく

 

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