表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武  作者: 潮崎 晶
第23話:次なる一手
612/631

#11

 


場所は戻って惑星バサラナルム、ウォーダ家軍事技術開発研究所―――


 ノヴァルナと会うためにやって来たのは、ウォーダ軍副将格ナルガヒルデ=ニーワスと、ノヴァルナの影武者を務める事が多いヴァルミス・ナベラ=ウォーダ。そして諜報局から第二部部長ビング=ハーリントン大佐と、部下のグリエラ=フォーゼッタ大尉である。円卓が置かれた小会議室にリッダ所長も加え、全員が集合している。


 諜報局第二部は以前からノヴァルナの命により、二連自治星系エイザンの内部情報の収集を行っており、ナルガヒルデとヴァルミスは前回の直接戦闘後、総合的な情報を収集中であった。今回はその中間報告的なものであるが、先に『ピースメーカー』と“脳髄パイロット”についての報告を得たノヴァルナとしては、次に得る報告の内容次第によっては、エイザンに対して軍事も含む直接的行動を、とる気になっている。


「『アクレイド傭兵団』への、資金供給だと?」


 眉をひそめるノヴァルナに、フォーゼッタ大尉は「はい」と静かに応え、円卓の中央に何枚かのホログラムスクリーンを展開させる。見たところそれは、何かの帳簿の一部のようであった。


「傭兵団の第三、第四階層は、戦場での略奪の他に、数々の犯罪行為を行っておりますが、これによって入手した多額の金銭や金塊が、エイザンの金融機構に運び込まれ、マネーロンダリングされているのを確認済みです」


 これを聞いて表情を厳しくするノヴァルナを前に、フォーゼッタは複数枚のホログラムスクリーンを、ゆっくりと回転させながら報告する。


「また、傭兵団が得ている金額の内のかなりの額が、オ・ザーカ星系のイーゴン教団から出資されており、こちらもエイザンの金融機構を通す事で、直接の繋がりは無いように見せ掛けているようです」


「やっぱ、アクレイドの連中はイーゴン教団や、エイザンとグルだってことか…」


 ノヴァルナは腹立たしげに、息を吐きながら言い放った。するとフォーゼッタの言葉を捕捉するようにヴァルミスが告げる。


「軍事運用面は『アクレイド傭兵団』、科学技術開発はイーゴン教団、資金繰りはエイザンが分担していると考えれば、これはもう一つの巨大組織と見るべきだと、私は思います」


 それは以前から推測が為されていた事ではあった。偽星帥皇のバイオノイド:エルヴィスや、エイザンのBSIユニット『ピースメーカー』と、これを操縦するためにバイオノイド技術で培養された“脳髄パイロット”などは、科学技術の発展を教義とするイーゴン教団の得意分野であるし、巨大傭兵軍『アクレイド傭兵団』の運用にかかる膨大な資金調達は、エイザンが得意とする分野であろうからだ。

 ヴァルミスの言葉に「なるほど」と頷いたジークザルトは、納得の理由を口にする。それは昨年初頭に起きた、“ミョルジ三人衆”による皇都キヨウ奇襲。ノヴァルナとウォーダ軍主戦力が、皇都を離れた隙を突いて行われた奇襲作戦である。


 ウォーダ軍主力が皇都を離れた理由は、その前年に“ミョルジ三人衆”に大打撃を与え、旧来の本拠地アーワーガ宙域にまで追い返す事に成功したからで、『アクレイド傭兵団』とも手切れした三人衆に、すぐには再侵攻する力は残っていないという判断からだ。


 ところが三人衆は半年足らずという、思いも寄らぬ速さで軍を立て直し、キヨウのあるヤヴァルト星系へ攻め寄せて来た。そしてこれを撃退した後の捜査で洗い出されて来たのが、エイザンによる資金協力であった。

 『アクレイド傭兵団』、イーゴン教団、自治星系エイザンが繋がっているという事実を基に、今にして思えば『アクレイド傭兵団』の主力集団が、“ミョルジ三人衆”と手を切って新たにモーリー家と雇用契約を結んだのも、代わりにエイザンか三人衆への、経済面での援助に入った事へのカムフラージュとも思える。


 これはつまり、経済面の首根っこをエイザンに押さえられた“ミョルジ三人衆”は、実体としては『アクレイド傭兵団』の雇用主から、支配される側へ立場が逆転してしまっている、という事になる。

 そうであるなら、『アクレイド傭兵団』の新たな雇用主であるモーリー家が、星帥皇室の後ろ盾になった事に続いて、星帥皇室の敵であったはずの“ミョルジ三人衆”までが現在、ウォーダ家への包囲網へ加わっているのにも、説明がつく。


 明晰なジークザルトの意見に、ヴァルミスは「ジークザルト殿の見識は正しいと思います」と、賛意を与えた。

 すると諜報局第二部部長のピング=ハーリントンが、エイザンについての更なる情報を報告する。


「エイザンの金融活動から公式に発表されている資産と取引額は、実は海に浮かぶ氷山の海面から突き出た部分に過ぎず、傭兵団資金のマネーロンダリングのような闇取引の額は、表向きの取引額の何倍もの規模となっております」


「それも戦国の妙味というヤツか」


 ノヴァルナが皮肉めいた笑みを浮かべて言葉を挟むと、ハーリントンは「さようです」と応じて続けた。


「エイザン金融の闇取引は、ヤヴァルト宙域とその周辺の宙域の星大名から、恒星間犯罪組織までの多岐に及び、その中にはそちらの―――」


 ここでハーリントンはノヴァルナの背後に立つ、護衛役のヤスーク=ハイマンサに視線を移して告げる。


「ハイマンサ殿を強化奴隷としてクローン製造した、人身売買組織も含まれております」






▶#12につづく

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ