表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第二章 黒からの夜明け

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/48

志野原楓恋の才能

 楓恋の育成ついでに下層から地上を目指して進むことになってから十数分。姫乃が案件のために下層第四階層をうろつき、その過程でガルクロウを含めかなりの数モンスターをサーチ&デストロイしたおかげで、モンスターと遭遇することがない。

 彼女の魔力量を増やしてスキルの使用回数を増やすためにもモンスターがいるのに、自分の軽率な行動でそれができなくなってしまったことに反省する。

 とはいえ、索敵魔導兵装に反応がないわけじゃないので、それとなく誘導しながら進む。


「姫乃ちゃんは、どのくらいから下層に行くようになったの?」

「んー? そうだなぁ……半年くらいかな」

「早っ!? そんな早くに下層行ったの!?」

「まあね。下層に足を踏み入れたのはもうちょっと早かったけど、ここの魔力濃度が濃すぎて中てられて吐いちゃってね。若干トラウマになりかけたなー」


 ダンジョンは下に向かえば向かうほど魔力の濃度が増していく。その濃度に比例してモンスターは強くなっていき、危険度が跳ね上がる。

 一方で、人間は少しずつ魔力に体を慣らしていかないと様々な不調が出る。姫乃は強烈な眩暈と吐き気だったが、他にも異常な倦怠感や頭痛、幻覚や幻聴まであるという。

 そんなヤバい症状が色々と出てくるレベルで魔力濃度が濃い場所なのだが、楓恋は普通に動いている。これは一種の、探索者としての才能なのだろう。


「私、全然平気なの何でなんだろう」

「魔力の濃さに中てられて何か症状が出る人もいれば、出ない人もいるってことだよ。楓恋はそういう濃さに耐性があるのかもね」

「そんなこともある……ひゃ!?」


 会話しながら進んでいると、狼のような声が響いてきた。その声に楓恋が驚き、びくりと肩を震わせる。

 下層で狼のような声を上げるのは、爛れた大狼竜か群狼竜ケルヴァーグのどちらかだ。

 狼の声ということで楓恋はまさか大狼竜なのではないかと体をこわばらせていたが、三体のケルヴァーグが姿を見せたら安堵していた。

 特級ではないとはいえ彼女からすれば格上。すぐに気を引き締め、体にぐっと力を入れる。


「力みすぎ。少し力抜いて」

「で、でも、」

「大丈夫。ボクがいるから」


 安心させるようにぱちりとウィンクしながら言う。七式真装をライフル形態に変形させてロックも解除しており、それを見せつける。

 それならばとケルヴァーグに向き直り、数度深く深呼吸を繰り返してからしっかりと両手でガンブレードを構える。

 探索者になったばかりで経験が浅いのに構えが綺麗なので、剣道か何かをやっていたのかもしれない。

 先に武道経験がないかを聞いて、剣道をやっていたのであれば刀にしたほうがよかったかもしれない。


「ガアァ!」

「ガオォ!」

「ガウッ、ガアァ!」

「ひっ」


 下層の中では小柄な方のケルヴァーグ。だが高い連携を取ってくるし、下層モンスターなだけあって危険度はかなりのもの。

 低い唸り声や吠える声はそれだけでも威圧感を与えるもので、楓恋が小さな悲鳴を上げて一歩後ろに下がってしまう。

 怯えている獲物を逃すはずもなく、三体の群狼竜が散らばるように走ってきて彼女のことを取り囲もうとする。


「ギャゥンッ!?」


 いきなり三体同時は鬼畜にもほどがあるため、速攻で一体を頭を狙撃して潰す。

 連携を取ってまずは弱い獲物からしとめようとしていた群狼竜は、いきなり一つ削られてしまい動揺する。


「今」

「っ! や、やああああああああああああああああ!」


 姫乃が合図を送ると、覚悟を決めたように楓恋が突撃していく。新人らしく動きは鈍く、回路に流す魔力も疎らすぎて強化率も低い。

 それなのにガンブレードに流す魔力にはよどみがなく、スキルの影響もあるのだろうがちぐはぐ感がぬぐえない。

 あと魔導兵装は魔術道具や呪具と違い、必要な時に魔力を流して動かすのが定石なのでああやって魔力を流しっぱなしにすると、すぐに魔力切れを起こしてしまう。

 姫乃が普段から使っている魔導兵装が定石破壊すぎて、最近ではもはや常時大魔(マナ)吸入を行い魔力切れなんか起こさなくなっているが、本来は使用者の魔力を使うものなのだ。


「えいっ!」

「ギャウッ!? ガァ───ギャンッ!?」

「きゃあ!?」


 腕の力だけでなく武器の重さを利用して振り下ろし、ケルヴァーグに浅く傷をつける。

 それに怒ったケルヴァーグが口を大きく開けて噛み付き攻撃を仕掛けてくるが、自動防御に設定してある七式真装の楯が高速で突っ込んできて、横から弾き飛ばしていった。

 楓恋の正面にいた個体を吹っ飛ばしたあと、すぐに後ろから襲い掛かってきていた個体も殴りつけて距離を離す。きちんと自動防御が機能しているなと、満足げに頷く姫乃。


「えっと、えっと……ここにこうやって魔力を流すと引き金が出てくるから……よ、よし! ふぁ、ファイヤー!」


 先に吹っ飛ばしたケルヴァーグに照準を合わせながら、魔力を流してギミックを起動。引き金が出てきてそれに指をかけ、ガンブレードの魔導兵装内の魔力を弾倉に充填して弾丸として放つ。

 まだ姫乃が今ほど強力なものを作れていない時代の産物とはいえ、きっちりと増幅の術式を組み込んであるため、彼女一人では決して出せない威力の魔力弾が銃口から飛び出る。

 魔力弾が真っすぐ飛んでいき、しっかりと顔面に当たる。顔が大きく上に弾きあげられるも、少し肉をえぐる程度で致命傷にまで至っていない。


 傷を更につけられてより激昂したケルヴァーグが牙をむき出しにして飛びかかる。魔力弾を警戒されているのかやや不規則な動きをしており、慣れていない楓恋は早々に弾を撃つのをやめて両手で構える。

 短く息を吸い、少し腰を落とす。八相に構えたガンブレードを、勇気をもって自ら一歩前に踏み込んで振り下ろす。

 脳天にしっかりと叩きつけられた魔導兵装は、刃を半分ほど食い込ませていた。それでも命を絶つことはできていなかったが、咄嗟にギミックを起動させて再び引き金を出した後、引き金を引いてゼロ距離で射撃。


「グ、ォ……」

「えぇええええい!」


 なおもしぶとく生きながらえたが、引き抜いたガンブレードを上段に構えてから全力で振り下ろし、ついに一体目を自力で討伐する。

 下層モンスター相手にお世辞にもきれいな立ち回りとは言えない動きだったが、今の目的は立ち回り云々ではないので何も言わないでおく。


「や、やった……! 私、下層のモンスターを……!」

「浮かれるのは早いよー」

「あ、きゃんっ!?」


 生き残っているもう一体が、七式真装の自動防御をすり抜けて楓恋に飛びかかる。

 これはまずいと素早くライフルを構え照準を定めるが、彼女を押し倒したケルヴァーグからパッと赤い花が飛び散った。


「ガボッ……!?」


 どうやらガンブレードで反射的に攻撃をして、喉を切り裂いたようだ。

 じたばたともがいて蹴り飛ばして地面に転がした後、素早く立ち上がって逆手に持ったガンブレードを体重を乗せて胴体に突き刺す。

 そして、連続で引き金を引きまくり何度も銃声を響かせる。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


 押し倒されて少しパニックになっていたようで、弾倉内の魔力弾を使い切り装填が必要になっているのに引き金を引き続け、かちっ、かちっという音を数回鳴らす。

 何発も魔力弾を食らい体を貫かれたケルヴァーグは、絶命したことを示すように体を崩壊させていく。

 楓恋が激しく呼吸を乱し体が震えている。反射的に攻撃して結果的に倒せはしたが、ついさっきネメアの獅子に食い殺されそうになっていたのだ。大きさは全然違えど、また同じように食われると感じたからか動揺が激しい。


「大丈夫だよ」


 すぐに駆け付けて抱き寄せ、宥めるように頭を撫でる。

 だんだん体の震えが落ち着いていき、乱れていた呼吸も大人しくなる。


「ごめんね、もっとしっかり注意しておけばよかった。今のは完全にボクのミスだった。本当にごめん」


 さっき食い殺されかけていた子に、再び似たような恐怖を与えてしまったことを激しく反省する。七式真装の自動防御も、きちんと機能しているだけで完全じゃないのだ。それなのに自分が作ったものだからと過信して、一瞬反応が遅れてしまった。

 自分の尺度で物事を考えているわけではないが、自分が普段当たり前にやりすぎている複数対一が本来ならかなり危険だということを強く再認識する。

 当たり前すぎてこの程度なら平気だと考えてしまっていた自分が、いかに愚かだったことか。何を言われても仕方がない。


「だ、だい、じょうぶ。少し、驚いただけ、だから……」

「それでもボクのミスだ。ここはボクに謝罪させてほしい。本当にごめん」


 震えもなくなり声も落ち着いたので離れると、楓恋は照れくさそうにしているだけで怒っている様子はない。

 怒っているわけじゃないと分かって安堵しそうになるが、自分のしでかしたことの罪が消えるわけじゃないので自分の中で自責を続ける。


”今のは少しヒヤッとしたね”

”姫様も気を付けてね”

”今までソロだったし、コラボしたのもかなりの上澄みのおーちゃんだったし、こういうところの経験が足りていないがゆえのミスって感じ”

”速攻でライフル構えてたし怪我はしなかっただろうけど、これはちょっと姫様も悪い”

”なんにせよ無事でよかったよかった”

”姫様サポートありきとはいえ下層モンスター倒せたのはでかい”

”かなりの格上だし、めちゃくちゃ魔力増えるんじゃない?”


 モンスターを倒すことで、魔力刻印の大きさと魔術回路の本数が増加する。相手が自分より格上であれば増える量も上がり、自分より格下だと増やせないこともないが一体倒すだけじゃ変わらない。

 今回楓恋は自分よりずっと格上の下層モンスターを、魔導兵装ありきとはいえ二体も討伐。これはかなりの成長が見込める。


「体調はどう? 刻印と回路が一気に大きくなると、それに体が驚いて何か不調が出ることがあるから」

「……うん、平気みたい。むしろ調子がいいくらい」

「わお」


 至近距離にいるからこそわかるが、今楓恋はかなり魔力量を増やした。それこそ倍増したレベルで増えており、普通であれば何かしらの不調が出ているはずだ。

 それが全くないどころかむしろ調子がいいというのだから、彼女の探索者としての才能はかなりのものかもしれない。

 これはもっとたくさん下層モンスターを倒せば、大化けするなと確信。しかし今はボス部屋に放置されたり、姫乃のミスで怖い思いをさせてしまい平常とはいいがたいので、先ほどのような戦わせ方はできない。


 土台がまだしっかりしていないのも今の戦闘でわかったし、地上に戻るまでは複数出てきたらすぐに一体に削り、一体だが強力なモンスターは姫乃が正面に立ってタンクをすることにする。

 彼女もそのやり方に賛成し、引き続き地上を目指して歩き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ