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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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竜殺しの姫騎士

 全力で走る。姫乃にとっての恐怖の象徴が襲い掛かってくるが、一握りの勇気を胸に姫乃は七式魔剣を鋭く振るう。

 魔剣が振り抜かれて首を刎ね落とし、そんな些細なことを確認するよりも早くその体を蹴って跳躍する。

 ひたすらに駆け回る。駆けずり回る。街路樹を、ビルを、電柱、街頭すべてを足場にして立体的に飛び跳ね駆け抜けていく。


 自動射出するように設定してある百の砲門は、魔力をガンガン食らいまくりながら最大出力に近い威力で砲撃を繰り返す。

 空を飛び、狙いを定めているワイバーンを、ビルの中にいる人に向かって突撃していくワイバーンを、人を足で掴み今にも食い殺そうとしているワイバーンを、正確に打ち抜き砲撃し粉砕する。

 通常であれば百門同時に展開して同時に自動運用なんてできないが、『龍滅炉心』を使っている最中であれば魔力の心配をしなくてもいい。


 このスキルは、姫乃が生きて鼓動を続けている限り、無尽蔵に魔力を生成し続けるという長期戦向けかつ戦闘特化のスキルだ。

 魔力があれば魔術を使い続けられる。魔力があれば高い倍率で自身を強化できる。魔力があれば、常に自分の魔力を使って最大出力で魔導兵装をガンガン連射することができる。

 今この瞬間姫乃は、大魔(マナ)の吸入を行わずに自分の魔力を消費して魔導兵装を運用している。

 理由は、『龍滅炉心』で生み出される魔力は、その名前の通り龍種と竜種に高い特効性を持つ魔力を生み出すからだ。


 堅固な鱗もこの魔力を使えば普段以上に楽々突破できるし、殺すことができずとも龍滅の魔力は竜どもを侵食して殺す。

 大魔をかき集めることで無尽蔵の魔力で超火力をぶっぱなすのもいいが、こんなビルが密集している市街地で本当の本当に最大火力を使ったら大惨事だ。

 心臓が鼓動している限り膨大な魔力を生み出しているので、別に今だって事実上の無尽蔵だが、特効性があるため自分の回路に流し込む魔力量を多くして身体能力を大きく底上げし、魔導兵装には最大出力にならない程度に流し込む。


”なんじゃこれええええええええええええええええええええ!?”

”姫様の周りになんか大量の魔導兵装が出てりゅうううううううううううううううううううう!?”

”大量に隠し持ってると予想してたけど、ここまであるとは思ってない”

”いくつあるんだよこれ!?”

”ていうかはっや!? ブロンテ以上の速度で駆け抜けてるやん!”

”次々とワイバーンが駆逐されていく……”

”姫様から飛んでもねえ魔力が吹き上がっているのが画面越しでも見えるのですが”

”シグルスハートって言ってたけど、もしかして姫様のスキル?”

”あれ、おかしいな。これ多分姫様マナかき集めないで自分の魔力使いまくっているだろうけど、一向に漲る魔力が減る気配がない。というかむしろどんどん溢れてきてね?”

”なんっだこの激やば戦法!?”


 視界の端で何か文字列が凄まじい勢いで流れていくのが見えた。自分に向かってきたワイバーンを左右に両断してから目を向けると、配信を続けたままだったことに気付く。

 急いで配信を切ろうと左手を伸ばすが、視界の先にワイバーンが一体ビルに突っ込んでいったのを見たため後回しにし、体が崩れているワイバーンの胴体を粉砕しながら蹴って加速し、姫乃もビルの中に突っ込んだ。


「『全放出(フルバースト)───腕撃(アガートラム)』!」


 若いOLが腰を抜かして座り込んでいたので彼女の前に割り込み、魔剣を楯にして伸ばしてつかみかかろうとしていた後ろ足を防ぎ、そのまま剣を放して肉薄してから姫乃の魔力を限界まで溜め込んだガントレットで胴体を思い切り殴りつける。

 ドッパァアアアアアアアアアン! という炸裂音を響かせて腹に風穴を開け、発生した衝撃波でその風穴を更に大きく広げて体が千切れ飛ぶ。

 その衝撃で魔剣が外に放り出されるが、一定距離離れたため自動で空間を跳躍して姫乃の右手に帰還する。


「あ、ありが───」


 助けられたOLが何かを口にしていたが、それを聞いている時間の余裕もないので床を踏み砕きながら蹴ってビルの穴から飛び出して行く。


「一体どんだけワイバーンが出てくるのさ……!」


 上を見上げると、黒い召喚陣からはまだまだワイバーンが出てくる。今の姫乃の強さ的に大したことはなくとも、特級にほど近い特別一級のモンスターだ。

 それが数百体、次々と町に現れては人を食い殺そうと跳び回っている。

 常に百門もの魔導兵装が正確に狙いを定めて砲撃し、次々と撃ち落としてくれてはいるもののこのままじゃ焼け石に水だ。


「……なら、七式魔剣がぶっ壊れるまで過剰蓄積(オーバーチャージ)を使いまくって、もっと速く倒して回るしかない!」


 流し込んでいる自分の魔力に上乗せするように大魔も取り込み、剣が悲鳴を上げるよりも早く出力を大幅に上昇させる。

 着地してからアスファルトを踏み砕き、低空飛行しているワイバーンや地面に降り立っているワイバーンに向かって突撃。反応されるよりも早く首を落とし、人を掴んでいる足を切り落とし両の翼を根元から切り落としてから地面に縫い付けるように剣を突き立てる。


 深く刺さった剣を引き抜き、索敵の魔導兵装でどこにどのようにして散らばっているのかを把握。今いる場所から最速で最優先に助けていくべきルートを算出し、雷光となって走り出す。

 一人として犠牲者なんか出さない。一人として、こんな出来事で自分と同じような思いをする人が出てきてほしくない。その思い一つが、未だに怖がる自分の心を奮い立たせて足を踏み出させてくれる。


 ビルが密集しているため飛ぶのに少し苦労しつつも、その下にいる人間を狙っている五体のワイバーンの集団を、ビルの壁を足場にして超速で駆けあがり跳躍して一番手前の個体に剣を突き立て、雷を放出。

 内側から焼き殺して地面に墜落する前に剣を抜いて死体を蹴り、次の個体に接近して顔面を左右に両断する。

 再び死体を足場にして攻撃しようとすると、ようやく姫乃に気付いた個体が奇声を上げて噛み付こうとしてきたので、ギリギリまで引き付けてから上に跳躍して仲間の死体をごちそうする。


「『七式換装(タクティカルリロード)』!」


 雷を維持したまま別の属性を開放。雷の次によく使う氷属性を発露させ、仲間の死体に噛み付いた個体に向かって氷の大波を襲わせて氷漬けにする。

 出来上がった氷の壁の上に降り立ち、その上を滑りながら次の個体に向かう。あっという間に一緒に行動していた仲間が三体もやられ、気が立ったのか真っすぐ考えなしに突進してきてくれた。

 非常にありがたいなと氷を蹴って一気に最高速度へ到達し、ワイバーンが反応できない速度で接近し右の眼球から剣を突き立て脳を破壊する。

 死亡を確認するよりも早く剣を右に振り抜いて取り出し、軽く跳躍。最後の一体が怖気づいたのか姫乃から遠ざかろうとしていたので、百門のうち一つをそちらに向けて砲撃。

 後ろから迫る龍滅の魔力で放たれた砲撃に気付かず、直撃して体を崩壊させながら地面に落ちていく。


”姫様やべええええええええええええええ!?!?”

”すんげー速度でワイバーンの群れ倒していってりゅううううううううううううう!!”

”こんな地獄のような状況なのに、姫様があまりにも希望の光すぎんだろ!”

”あかん……姫様のこの表情マジで惚れる……”

”いつも可愛い顔してえげつないことやってるけど、今は超かっこいい顔して超かっこいいことしててときめく”

”ワイ女だけど、こんな姫様にならガチで抱かれてもいい”

”単体なら特別一級で姫様の敵じゃないけど、流石にこの数だし無理だと思ってたのに、激やば戦法のおかげでマジで希望見えてきた”

”やったれ姫様ああああああああああああああああああああああああ!!!”

”というかあの砲撃、全部ワイバーンを超的確に狙い撃ってね?”

”何なら鬼みたいなホーミングしてるぞこれ”

”姫様本人も超スピードで超パワーで超精密な動きで確実にワイバーン切り殺して、同時展開している大量の魔導兵装もとんでも射程になんでか知らんけど一向に魔力切れをしない姫様のイカレた持続力。なにこの最強姫騎士”

”姫様がスキル発動した時シグルスハートって言ってたし、これ竜殺しに超特化してるスキルなんじゃないの?”

”画面越しでもわかるほど魔力ヤバいし、仮に竜相手じゃなくてもこの魔力量でごり押しできるのやばすぎる”


 視界の端でコメントが濁流のような速度で流れていく。流石に邪魔になってきたので切りたいのだが、配信を切るには終了ボタンを押した後で配信ソフトの方も切らないといけないので、手間がかかる。

 一瞬の時間も惜しいのでコメントや自分の配信を確認するための画面を消し、カメラは自分のやや後ろに着くようにする。


 七式魔剣がもう限界だとぎしぎしと軋みを上げ始めるが、今はとにかく速度が最優先なので無視する。

 剣自体が凄まじい熱を持ち始め、いつ暴発してもおかしくないが無視する。


 新宿のビルの間を縦横無尽に駆け回り、飛竜たちが反応できない速度で攻撃を仕掛けては撃墜していく。

 剣で切りつけ、拳でぶん殴り、蹴りで吹っ飛ばし、時には自分自身を砲弾として体当たりする。

 地面に叩きつけ、上から齧りつこうとしてくる個体を崩れている途中のワイバーンの尻尾を掴んでぶん回し、思いきり叩きつけてから死体ごと両断して倒す。


「ちぃ……! ボクの周りに固定しておくと邪魔くさい!」


 脳みそと目に魔力を集めて動体視力に判断速度などを底上げし、次々と蹴散らしていく中で姫乃は、自分の周りに展開している魔導兵装の砲門が邪魔に感じ始める。

 位置や角度的な問題でどうしても砲撃ができなかったり間に合わないこともあるため、砲撃方法を変更。建物の間をピンボールのように跳ね回りながら上に上がっていきつつ、ワイバーンの数を減らしていく。


 もう何体倒したのかすら数えられなくなるころ、高いビルの上に立つ。ここからなら真上から射線を通せるし、自立砲撃もさせやすい。

 召喚陣に近いところにいることもあり、真っ先に大量のワイバーンが襲い掛かってくる。その攻撃を迎撃しつつ超速でビル群の上を駆け回り、そこに砲門を次々と設置していく。

 百じゃ少し少なく感じたので五十門ほど追加して、半分はビルよりも下にいるワイバーンを狙わせて、残りの半分は召喚陣から出てくるのを狙わせる。


 上から直接射線を通すようにしたため、砲撃が通りやすくなる。

 砲撃してくる魔導兵装を狙おうとすれば姫乃がその個体を狙って切り伏せ、未だに逃げ惑う一般人を狙おうとすれば姫乃から遠い個体を魔導兵装が撃ち倒す。

 姫乃も立ち止まることなく走り続け、激しく暴れる心臓の痛みを気合と根性でねじ伏せてる。

 どれだけ回路を全開して、自分と繋げている魔導兵装に全力で魔力を流して消費し続けても、心臓が暴れる限り凄まじい速度で生成され続ける魔力が一向に衰える気配を見せない。


 無尽蔵の魔力というのは魔術師に限らず全ての探索者からすれば、喉から手が出るほど欲しいものだ。だがそんなものは叶うはずがないので、自分の魔力を伸ばし続ける。

 どれだけ使っても魔力が尽きない。聞こえはいいが、このスキルには欠陥がある。

 それは、生み出される魔力の量があまりにも膨大であるため、一つ目の封を解除するだけでも結構な負担がかかる。

 できるだけその負担が軽減されるよう、回路を全開にして体を強化しているのだが、それでもじわじわと内側から蝕むような痛みが発生し始める。


 その痛みはまだ無視できる範疇なのでまだいいが、今一番危惧すべきは七式魔剣だ。

 常時『過剰蓄積』を使い続けているため、発動中の雷による強化などは未だに続いている。しかしここまで長時間使うことを想定していないため、バチバチと雷とは別の弾ける音が聞こえてくる。

 あまり長くはもたないかもしれないが、もう少しだけ耐えてほしいと願いながら走る。


 戦い始めてそこそこ時間が経っているため、市民の避難は大分できている。ここまで大暴れした甲斐があるなと安堵して、避難した市民がいる方向に向かって飛んでいくワイバーンを見つけて跳躍する。


「行かせるわけないだろ!」

「グギャア!?」


 真下から思い切り魔剣を突き立てて内部から焼き殺そうとする。だがここにきてついに、魔剣が限界を迎えて機能停止してしまう。

 どれだけ魔力を流してもギミックすら作動せず、完全に故障してしまった。

 苛立たし気に舌打ちをしてから七式真装のパーツを外して、魔剣は収納の中に放り込む。


「どりゃあ!」


 首を掴んで上に乗っかると、降り落そうと暴れ始めるがしっかりと脚で太い首をホールドし、右腕にガントレットに変形させた真装を装着してシンプルにぶん殴る。

 爆発のような音を響かせて鱗を粉砕し、その衝撃で首の骨でも折れたのかふっと力を失い落下していく。

 このままだと姫乃自身も地面に叩きつけられてしまうので、ワイバーンの体を蹴って跳躍して離れる。


 どんどん地面が迫ってくるが、姫乃は冷静に自分の足から魔力を強烈に放出することで減速して緩やかに着地。無傷で生還する。

 今のは魔力放出という探索者の基本技能の一つで、今やったように高いところから降りる時に使えるのはもちろん、自分自身の動きなどをブーストすることができる。

 走っている時や攻撃をする時に合わせて魔力を放出すると、その勢いを乗せることができ、初心者からベテランまで使っている人が多い。

 だがこれは自分の魔力をそのまま放出するため、燃費がえげつないくらい悪い。なので要所要所でしか使うことはないのだが、今の姫乃にはそんな制限がないに等しいので、自分のあらゆる動きをブーストさせてみることにする。


 背中で待機している七式真装のパーツを集めて片手半剣に変形。『電光石火』が使えなくなってしまったのは結構な痛手だが、ここは魔力放出でどうにかしようと覚悟を決める。

 魔力で目と脳をより強化して処理速度を上昇。地面を踏み出すのに合わせて強烈に魔力を噴射すると、流石に『電光石火』よりは多少劣るものの大きく見劣りするほどでもない速度を出せた。

 贅沢にあらゆる動作をブーストさせているためガンガン魔力も消費でき、これならある程度は『龍滅炉心』のデメリットを踏み倒せるなと、最初よりは大分できた余裕から笑みを浮かべる。

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