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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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衝突からの殲滅

「姫乃ちゃんもスキルあるよね? どういうスキルなのか教えてもらえたりしないかなー、なんて」


 桜華のスキル『五重加速(アクセル・ギア)』が本来の性能を取り戻してからテンションがぶちあがった彼女は、モンスターがたくさんいるため嬉々として殴り込みに行っては殲滅していた。

 テンションが高いなと思いながら、下層第三階層にあるモンスターハウスに飛び込んで大量に出てきたミノタウロスを二人で殲滅したところで、桜華がふと質問してきた。


「あー……。ボクのスキルは異能回路があるタイプじゃなくて、器官そのものに能力が結びついているパッシブ系なんですよね」

「へー、珍しい。器官がスキルなのって、めちゃくちゃレアじゃん」

「ただ、使うと結構負担がでかいというか……ぶっちゃけあまり使いたくはないものなんですよね。実際発現してから使った回数なんて、試しで使った一回切りですし」


 使わなくても魔導兵装で補強してしまえば問題ないし、魔力も魔導兵装のおかげで常に増え続けている。

 使わないのではなく使いたくない代物なので、現状使わずにここまで来れているのは姫乃にとってもありがたかった。

 桜華も何か訳があって使わないのだなと察してくれたようで、それ以上は何も聞いてこなかった。


 器官にスキルが結びついているものは非常に珍しく、これをレアスキルと呼ぶ。しかもこのスキルの場合、異能回路というものが存在しないことが多い。

 魔術師や呪術師に多く発現するという魔眼、体臭がモンスターを引き寄せる・寄せ付けないスキル、共感覚のように自分の感覚同士が繋がり自分にしか見えない何かが見えるようになったりと、様々だ。

 特に魔眼と呼ばれる、目そのものにスキルが宿っているようなものの場合、それ自体が独立して魔力刻印と魔術回路を有している。そのため、ダンジョンに潜って力を得ずとも最初から術が使える魔術師や呪術師も、魔眼であれば持つことができる。


 姫乃のスキルは心臓そのものに結びついている。

 このスキルは類例を見ない非常に希少なもの。研究者たちは素晴らしいと手放しで喜んでくれるが、姫乃は思い出したくないことを思い出してしまうこのスキルを好んでいない。


「すみません。桜華さんのスキルは教えてもらったのに、ボクからは何も言えなくて」

「いいのいいの。言いたくないことは一つや二つあるものだし、秘密がある女の子は魅力的よ」

「……ふふっ、なんですかそれ」


 関係がそこまで深くないこともあるが、踏み込んでこないのはとてもありがたい。

 自分の持つ興味や好奇心と、やってはいけないことの分別はしっかりついている大人は好きだ。姫乃も、こういう大人になろうと改めて心に決めた。


「そーれより、やっぱこのダンジョンもモンスターの数多いこと多いこと。明らかに支障きたしてるし、ギルドも政府もそろそろあの馬鹿どもに何かしらの制裁を加えるんじゃない?」


 今はモンスターハウスに入り込んだので大量のモンスターと戦ったが、ここに来るまでも結構な数と戦っている。

 モンスターの数が増えるとイレギュラーが発生しやすくなってしまうし、そのままイレギュラーが常態化してしまうと、それが通常になってしまう。

 一度定着してしまうと、元に戻すのは非常に難しい。ゴブリンや下層にいるオークなどが人間の女性を使って繁殖できるのと同じように、モンスター同士でも交尾して繁殖する。

 そのようにして繁殖してしまうと、一度完全に殲滅しない限りは元の形に戻ることはない。そして完全にその階層のモンスターを殲滅しきるのは、事実上不可能だ。


「連日ダンジョン省とギルドに批判が行っていますよね。あの人たちも何もしていないわけじゃないんでしょうけど」

「今回は露骨にアウトな方だから、早く動いてほしいものよね」

「それにはめちゃくちゃ激しく同意です。……ん?」


 モンスターハウスから出てその下の第四階層へ通じる道があるボス部屋へ向かっていると、姫乃の鼻が何かを嗅ぎ取った。

 それはほんのかすかなもので気のせいだと切り捨てられる程度のものなのだが、その臭いは決して気のせいだと切り捨ててはいけないものだと勘が叫んでいる。


「どうしたの?」

「いえ、何か変な臭いがした気がして。こう……なんか、臭いというか」


”姫様の臭い発言いただきました”

”ガチで可愛い清楚ボイスだから、清楚系メスガキとかできそう”

”結構ピュアだけど変なところで知識あることあるから、それが萌える”

”ダンジョンなんて湿気た場所変な臭いするくらいするでしょ”

”かび臭いってことはないらしいゾ”

”独特な臭いがあるのは分かるっちゃ分かる”

”なんの臭いなのかね”


 なんだろうと、すんすんと鼻を小さく鳴らして微かに感じ取った臭いを嗅ごうとする。だがその臭いをもう一度嗅ぎ取ることはなく、やっぱり気のせいだったのだろうかと一度大きく息を吸うと、ほんのかすかにつんとした刺激臭を感じた。

 その瞬間、あることが頭の中でフラッシュバックする。それは、探索者にになることができて講習を受けた時のことだった。


 登録したばかりの時ははひと月の間、新人講習を受ける義務が発生する。理由は、ダンジョンの攻略を行う探索者は確かに夢がある仕事だが、それ以上に命の危険が付きまとう危険なものだからだ。

 その講習ではモンスターに対する基礎的な知識や装備の重要性の有無。自分の持つ魔力量がどれだけのものかをきちんと把握し、適正レベルの階層に潜ることの重要性。

 ダンジョン省がギルドを通して出している、探索者が守らなければいけないルール。そして、使ってはいけないアイテムなど。


 今姫乃が思い出したのは、使用禁止のアイテムの講習。その中でも強く印象に残っているのは、誘魔香石(ゆうまこうせき)と呼ばれるものすごい刺激臭を発する特殊な鉱石のものだ。別名は撒き餌。

 誘魔香石はダンジョンの中にある鉱脈から発掘することができる、ダンジョン産の資源の一つ。特殊な効果があり、それは名前の通り魔をおびき寄せる臭いを発するというものだ。

 この鉱石が最初に見つかった時、強い臭いを発しているがそれだけだと思われたためそれをピッケルで採掘した瞬間、その臭いが爆発的に増加して拡散。

 むせかえるほどの強烈な臭いは人体には無害だが、その臭いはモンスターを問答無用でおびき寄せ、かつ臭いを嗅いだモンスターを狂暴化させてしまったのだ。


 それ以降この鉱石はダンジョン内で原則使用してはいけないという法律ができた。モンスターの数が増えすぎている場合、モンスターハウスのように非常に広い場所の中心で鉱石を使うことで一か所に集中させて、高火力の術が使える探索者や術師がそれを一掃して数を減らし、最低限の安全を確保するために使われる。

 そのため、こういう時の特例でのみ使用が許可されている、非常に危険な物質だ。

 姫乃はその臭いを知っている。なぜならその臭いを、講習の時に嗅がされたのだ。もしこの臭いを感じたら、すぐにその場から離れてダンジョンから出ること。そして新たな鉱脈ができた可能性、あるいは他者が許可なく使用した可能性両方を加味してすぐに報告するために。


「これ、誘魔香石の臭いです」

「え゛!? 誘魔香石って、あの使っちゃダメなやつじゃない!?」


 姫乃が嗅ぎ取った臭いの正体を口にすると、桜華が見るからに狼狽える。

 あの鉱石の危険性はルーキーの時から叩き込まされるし、使ったらどうなるのかの映像も見せられる。それでどれだけ危険な代物なのかを、知識でも映像でも知ることができる。

 当然桜華もそれを見て知っているため、彼女の慌てようは当たり前だ。リスナーたちも、それはあまりにも危ないからこれ以上進むのを控えて撤退した方がいいと書き込んでいる。


 姫乃一人だったら場所の把握を行ってから、配信映像という証拠を確保して地上に戻るが、今は生憎一人ではない。

 ここは仕方がないと上の第二階層に続く階段がある方に体を向けようとすると、常に働かせている索敵用魔導兵装に大量の反応があった。


「ちょ、これヤバくない!?」


 桜華も索敵魔術で接近してくる大量の反応に、冷や汗を浮かべている。

 普通であれば誘魔香石のまき散らした臭いが強い場所に向かうはずなのだが、そうならずに移動してきているということは、怪物災害であるスタンピードが発生している可能性が高い。

 スタンピードは一つの群をなすモンスターが一斉に大移動を行う、あるいは多種のモンスターが一つの強大なモンスターから一斉に逃げ出し、その逃げているモンスターを見てパニックになる、興奮状態になったモンスターも一緒に連鎖的に走り出すことで起こる。


 これがスタンピードであれば、おそらくこれは後者の部類に入るだろう。

 大量のモンスターが臭いに釣られて移動して、そのモンスター以上の怪物も臭いに釣られて現れて、それから逃げるために一斉に走り出したら強いモンスターが興奮して臭いを無視して追いかけ始めたのかもしれない。


「桜華さん、一回さっきのモンスターハウスに行きましょう」

「で、でもあそこ行き止まり……」

「臭いのほうに集まってくれているならいいですけど、どうにもスタンピードが起きているっぽいんです。これを放置すると、人がかなり少ないとはいないわけじゃないですし、上の階層まで行っちゃうとやばすぎるのでここで殲滅します」

「……わ、わかった」


”わかっちゃダメじゃない!?”

”スタンピードクラスは流石にあかんよ逃げてえええええええええええええええ!?”

”いくら姫様でも流石にきついでしょ! 下層のスタンピードは深層級の危険度よ!?”

”深層モンスター倒しててもあれは単体だし、群体で深層級はまた別物だよ!”

”レギオンぶっ倒せてても不安だよ!”

”逃げてー!? 超にげてー!?”

”救援要請とか出したほうがいいんじゃ……”


 リスナーたちは姫乃たちの身を案じて逃げるようにとコメントを書き込むが、姫乃にとってスタンピードなど烏合に過ぎない。

 それに常に一人で下層ソロでやっていて、大量のモンスターに囲まれないわけでもないので手段はそろえてある。

 どれだけの規模かはまだ明確に把握しきれてはいないが、索敵にかかった反応を見る限りそこまで強いモンスターではなさそうだ。


「少し飛ばしますよ! 『大雷(ブロンテ)電光石火(アキレウス)』!」

「『五重加速(アクセル・ギア)五速(フィフス)』!」


 姫乃は七式魔剣の柄に触れて、引き抜かずにギミックを動かし撃鉄を起こす。雷をまとい凄まじい速度でその場から駆け出す。

 桜華もスキルを発動させて急加速。雷光のごとき速度で走っている姫乃から引き離されずに追いかけている。

 道中のモンスターは減速せずに蹴りやパンチをぶちかまして即死させていき、二分足らずで先ほどのモンスターハウスに到着。

 真っすぐ走っていって奥の方で止まり、そこでようやく剣を引き抜く。若干遅れて桜華も到着する。


「こ、ここからどうするの?」

「一撃で全部吹っ飛ばします。七式魔剣の炎属性の大焦熱(フレゲトン)は、こういう殲滅に特化させてあるので。……『七式換装(タクティカルリロード)』、『大焦熱(フレゲトン)滅炎刃(スルト)』」


 モンスターハウスまで避難した。これで通り過ぎていってくれれば、背後からの殲滅に切り替えて安全に処分できる。

 だがそう甘くはないようで、一分二分と待っていると幾重もの足音が重なって聞こえてきて、怯えているかのような声もそれに乗ってくる。

 やはりスタンピードが起きていた。それも、強力なモンスターから逃げるために。


 下層のモンスターは強いのが多い。特別一級なんかごろごろいるし、なんなら特級すら出てくることがある。

 その中でも竜種は炎に強い傾向にあり、ただ滅炎刃で攻撃するだけでは雑魚は倒せても炎に強い竜種は倒しきれないかもしれない。

 なので、大上段に剣を構えながらギミックを一つ起動させると、最大値を超えて大魔を吸引してそれを剣の中で小魔に変換していく。

 一度使ったらその属性を数時間の間使用できなくなるが、その代わりに破壊力を大幅に底上げする大技。それこそ、姫乃が新しく追加した機能、『過剰蓄積(オーバーチャージ)』だ。


「「「「オォオオオオオオオオオオオオ!!」」」」


 ついにスタンピードが姿を見せる。小さいモンスターから巨大なモンスターまで、多種多様なモンスターがいる。

 その後方には、姫乃がここまでバズるきっかけとなった爛れた大狼竜(インフレーム・ウルフ)がおり、これに追いかけられているのかと理解した。


 過剰蓄積は完了した。七式魔剣が過剰に溜め込んだ魔力に悲鳴を上げるように、軋みを上げている。

 全てのモンスターがハウスの中に入ってきた。先頭は中央部分より先に来ており、桜華が焦ってナイフを抜き放つ。


「───焔陽滅剣(ラーヴァテイン)


 彼女が先走ってしまわないように、袈裟懸けに剣を振り下ろす。ただそれだけの動作で、姫乃の前方の全ての空間を逃げ場のないほど大規模の炎で埋め尽くした。

 先頭を走るモンスターは悲鳴を上げる間もなく蒸発。その後続も回避も防御体勢も取る間もなく焼死。

 次々とモンスターが焼かれていき、最後に爛れた大狼竜も飲み込まれる。


「…………………………へぁ?」


 たったの一撃で超絶広いモンスターハウスを炎で埋め尽くし、一気に焼き払っていった光景に桜華が変な声を漏らす。

 コメント欄もそのあまりにも特大規模すぎるそれに言葉を失ったのか、流れが止まる。


 過剰蓄積した魔力をすべて使いつくし炎が消える。溜まった熱を逃がすようにバシュウウウウウウウ! と白い煙と共に排熱。これで当分大焦熱を使うことはできない。

 今のでどうなったと正面を見ると、全身が焼けただれて死に体となっている爛れた大狼竜がいた。


「『大雷(ブロンテ)電光石火(アキレウス)』」


 即座に属性を雷に切り替えて、地面を蹴って瞬時に接近。

 瀕死状態となっている大狼竜にその速度で接近する姫乃に反応する余裕などなく、複数回の斬撃を繰り出して太い首を落とされる。


「……本当に、スタンピード瞬殺しちゃった」


 温度が上昇して冷や汗とは別の汗を浮かばせた桜華が、ポツリと零したその声が何だか少し大きく響くように聞こえた。

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