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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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22/26

収益化記念配信 その2

”¥10000:ところで姫さまー。七式魔剣の調整とかってもう済んでる?”

”地味に気になってるやつ。で、どうなの?”


 その後もスパチャは止まらずに投げられ続け、何かを悟ったような境地に至り雑談しながら夕飯をもぐもぐしていると、質問が投げつけられた。


七式魔剣(イリス)の調整はもう済んだよん。これで大雷を使っている時に魔力切れを途中で起こすこともなくなった」


 雷属性使用中すぐに魔力切れを起こす理由は、ものすごく速度で移動するためその強烈な負荷に耐えられるように体に強力な強化をかけ、更には瞬時に判断を下して即応できるようにするために脳の情報処理速度を加速させているからだ。

 他の属性は、言ってしまえば高火力をぶっぱなしているだけなので、余分な魔力消費はない。だが雷は移動と攻撃の両方に優れているため、どっちも取ると消費がえぐいことになる。


 そういった反省点を見つけ、姫乃はいつも配信の休みを取っている水曜日に、七式魔剣の調整を終わらせた。

 調整といっても解決方法はごり押しだ。消費してしまう分以上の魔力を補充できるようにした。


”ってか聞こうと思って聞けずじまいだったけど、七式魔剣ってどう考えてもマナ吸ってるよね?”

”あれマジでどういう仕組み?”

”その技術って出来なくはないけど、人間じゃないと効率クソ悪いから実質不可能って言われてたはず……”

”姫様のことだし、何かヤバいことやったのは確実だけど、それはそれとして知りたい”

”実質魔力無限の魔導兵装とか恐怖でしかない”


「あー、そういえば説明してなかったね。七式魔剣というより、ボクの使う武器全部大魔(マナ)吸ってるよ。理屈は簡単。コアになる部分に疑似的な魔力刻印を作って、そこでなんやかんやして小魔(オド)に変換しているんだ。人間が魔力を作るのと同じ原理を、技術的に再現したの」


 大魔を呼吸で取り込むことで魔力刻印に蓄積。その中で大魔は小魔に変換され、探索者たちはその魔力を使い色んなことができるようになる。

 姫乃はその刻印の仕組みを自力で解析、解明。説明が死ぬほどめんどいのでその辺の詳しい説明を端折って、ざっくりとリスナーに伝える。


 仕組みとしては、大魔で満たされた心臓に刻み込まれている刻印が、心臓の鼓動を受けることでそれを小魔に変換していく、というシンプルなものではある。

 姫乃はそこの、鼓動を受けたら変換される理由というところまで解明。どういう流れで鼓動を受けたら変換されるのか、というのも自分の体を使って解析することで解明。

 いきなりその理論を武器に組み込むのではなく、最初に心臓と魔力刻印と同じ機能を持つ拳大の魔術道具を作り、自分の立てた理論の証明を行った。

 成功したらその理論を使い、先に作っておいたもの含めてすべての魔導兵装にそのシステムを導入。結果、供給以上の魔力を消費しなければ実質魔力切れを起こさないという、ぶっ壊れ性能の兵器の数々が誕生した。


「トライアルアンドエラーの繰り返しで時間かかったけど、満足のいく結果になってよかったよ。で、七式魔剣の大魔吸収の機能を大雷使っている時に強化されるようにして、使う量以上の供給がされるようにしたんだ。出力によって使う量変わるけど、そこは自動で出力がどんなもんなのかを感知されるようにしたから、最大出力でぶっ続けで使っても大丈夫になった」


”美味しいお菓子の作り方が分かったみたいな軽いノリでとんでもないこと言わないでくださいます!?”

”多い多い!? 情報量が多い!?”

”ブロンテ使ってる時の問題の解決方法が想像以上の脳筋で草を生やす前に、魔導兵装全てが実質魔力無限であることに震える”

”魔力刻印とかの仕組みを全部解明して、その理論使って武器そのものに疑似的な刻印刻むとか、到底理解できないことやってるんですがこの姫様”

”理論上できたらすごいよねってことを、本当にやってのけちゃうの流石(白目)”

”¥50000:その理論もっと詳しく教えてくださる!? それが分かれば探索者のレベルもっと上がるんだけど!?”

”¥50000:理論を理解できない自信があるので、理論は教えてくれなくていいから一番弱いやつでいいから魔導兵装一つくれ。使いこなせる気がしないし、威力やばすぎて持つの怖いからやっぱいらないかも”


「うーん……その理論については教えられないかな。流石にこれは企業秘密ということで。魔導兵装は流石に他人にはプレゼントできないかな。作ってるボク自身、あれがどれだけやばい代物か理解してるし、悪用されないとも限らないからね」


 ツウィーターのDMにも来る、魔導兵装を言い値で買うから売ってほしいという声。

 いろんな場所からそういった声がかかっており、中には同業者からも来ることがある。

 魔導兵装は事実上、魔導兵装の製造販売を一手に担う「ロスヴァイセ」が市場を独占しているような状態だ。火力が高く壊れにくい代物であるため人気が高く、ものすごい高価であるにも関わらず常に売れ行きは好調だ。


 だがロスヴァイセも売る相手というのは見極めており、今現在巷を悪い意味で賑わせている真っ黒クランの黒夜には、末端構成員含めて誰一人として売っていない。

 これは初代機神が立てた理念で、強力な武器は戦闘を有利に進められるが、それが悪の手に渡ったらそれは即座に脅しの材料や殺戮兵器として使われる。

 魔導兵装はモンスターを倒し、ダンジョンを攻略し、人を助けるための武器。間違っても人に向ける代物ではない。

 それゆえに、購入希望者の身辺調査はかなり慎重に行っており、審査に合格しない限りは絶対に買えない。


 そういうこともあってか、まだ学生でお金にも困っているだろうと思ったのか、ロスヴァイセで魔導兵装を買うことができなかったであろう人々や企業、クランから、姫乃に依頼が来るのだ。

 もちろん全部断っている。


「魔導兵装は強力。それはみんなも見てて分かってるでしょ。正しく使えば、人を助けてダンジョンの研究にも大いに役立つ。でも使い方を一つ間違えるだけで、この強力な武器は人殺しの道具に成り下がる。ダイナマイトと一緒だよ。人類の発展のために作ったダイナマイトが、その高い破壊力故に戦争に転用されて人がたくさん死んだのと一緒。ボクは自分で作ったものが、戦争に使われるようなことはあってほしくない。だから販売もしないし、実質的な無限魔力の理論も、企業秘密なこともそうだけど戦争転用されないためにも教えない」


 魔力切れが起きない、超強力な兵器。

 それを国やどこかの大企業が知り、量産することができたら。それを正しいほうに使ってくれているうちは、姫乃にとっても嬉しいことだ。

 だが戦争に使われたら。殲滅、侵略、殺戮。それらに自分が作ったものが使われて、大勢の人が死んでしまったら。とても心が持たない。

 ダイナマイトを開発したノーベルは、どれほど辛い思いをしたのだろうか。彼と同じ道をたどりかねない可能性があるものを開発した姫乃でも、かの偉人が感じたであろう心労や重圧を想像できない。


「というわけなので、魔導兵装はボクだけのもの。初期のアイ〇ンマンと一緒だよ。盗まれたりしない限りは、ボク以外の手に渡ることは絶対にない。仮に盗まれても、ボクから一定以上離れると自動的にボクのところに戻るようになってるけど」


”対策がばっちりすぎるwww”

”¥40000:現役女子高生でそこまで考えてるのか……”

”¥12345:ワイだったら金や利権に目がくらんですぐに売っちゃいそう”

”¥50000:一瞬何で売らないんだよと思ったけど、ノーベルの件で猛省”

”いくらダンジョン攻略のためにって作っても、威力が化け物だと戦争とかにも使えちゃうしな。何も考えずに売ったものが、他所の国で殺戮に使われてたらと思うと心が罪悪感とかで擦り切れて千切れそう”

”作っているからこそ、危険性を誰よりも理解している”


「こんなシリアスなお話はこれでおしまいにしよ。もっと楽しいこと話さないと。あ、そうだ。いきなり誰かとコラボってわけにはいかないけど、視聴者参加型の企画とかやったら楽しいことになりそうじゃない? 前にボクが見たやつで、リスナーのコメントに反応して電流が流れるゲーム配信とかがあって、すっごい面白そうだった」


 せっかくの記念枠なので、シリアスな話はさっさと切り上げて楽しいことにシフトする。

 視聴者参加型の企画は、あまりやり過ぎると参加することが目的のリスナーしか来なくなると言われているが、やったらすごく楽しそうなので何かやってみたい。

 以前見たのはマリ〇カートのゲーム配信で、スパチャやコメントなどに反応して電流が流れるというものだった。

 配信者側のオーバー気味なリアクションが見ていて面白くて、いずれはそういう感じのものをやってみたいと思っていた。


「他にも、ダンジョン攻略配信以外にも、モンスター解説だけの配信とかもやってもいいかもね。今なんか新規の探索者とかが増えてるみたいだし、モンスター解説の需要が高まってるみたい」


”間違いなく姫様の影響で草”

”¥5000:マジで姫様が探索者業界に与えた影響でかいんよ”

”¥3150:配信業界にもとてつもない新風が吹き抜けているよ”

”ものすごい成功している人の配信とかを見ると、なんか簡単にやっているように見えちゃうんだよね”

”配信者は夢を観させるのが仕事っていうしね”

”簡単にやっていると思われるってことは、それだけ楽しんで努力したことが報われているって証だしね”


「一年間収益化できずにいた身から言わせてもらうと、一回跳ねて安定させることができたら本当に楽な仕事だとは思うよ? ダンジョン配信者に限らず、いろんなジャンルの配信もバズってチャンネルとか伸びて収益伸びてそれを安定させるまでが大変だけど、一回安定させることができたら本当に楽だもん」


 それには大勢を自分の配信のファンにして、毎回配信に来てもらえるようにするか、毎回動画を見てくれるようにしないといけない。

 ファン化はこういった人気商売で生きていくには必要不可欠なものだが、その肝心なファン化が一番難しい。

 それができれば、バラつきはあるだろうが毎月安定した収入を得ることができるようになる。


”《桜華ちゃんねる》¥50000:姫乃ちゃん収益化達成おめでとー! なんかすっごい美味しそうなご飯食べてるー!?”


「あ、桜華さん! 今日も来てくれたんですね! スパチャもありがとうございます!」


 もぎゅもぎゅと、最後の一枚の弾力のある最高のローストビーフ風を食べていると、コメント欄に桜華がスパチャを投げてくれたのを見つけた。

 最近はすっかり姫乃の配信に顔を出してくれるようになっており、毎回コメント欄にいるのを見つける。

 活動歴が自分よりも長い美人な先輩に見られていると思うと、少し緊張するが知っている人が来てくれたと嬉しくなる。


「あ、そういえば桜華さんもうとっくに退院してますよね? 退院おめでとうございます」


 爛れた大狼竜の攻撃で足を負傷していた桜華。回復薬を飲ませていたこともあって、完治するのに一週間以上かかるところを三日程度で退院している。

 姫乃はそのことを彼女のツウィーターの投稿がTLに流れてきたことで知った。


”《桜華ちゃんねる》ありがとー。あの時は本当に助かったよ。姫乃ちゃんが助けてくれなかったら、今頃私はあのオオカミのお腹の中だったよ……”

”あれマジでぎりっぎりだったよね。姫様がいてくれてマジでよかった”

”今じゃすっかり二推しで姫様とおーちゃん推してるけど、あの時はおーちゃんしか推しいなかったからマジ助かった”

”¥50000:割とガチ恋している推しが危うく食い殺されるところだったから、そうならなくて感謝ですわ。おかげで今はおーちゃんと姫様の二人にガチ恋中です”


「ボクも間に合ってよかったです。助けられる距離にいるのに助けられなかったらって思うと、胸が苦しくなりそうです……って、なんか前に似たようなこと言ってませんでした?」


 桜華が来たことでさらにコメントが盛り上がりを見せる。

 一部の配信者は同業者がコメント欄に来るのをよしとしないそうだが、桜華は知らない相手じゃないし別に守る必要のないくだらないルールとか知ったこっちゃないので、来てくれて普通に嬉しい。


”《桜華ちゃんねる》助けてくれたお礼はスパチャだけじゃ返しきれないし、何かもっとやってあげたいな”


「え、そんな! いいですよそこまでやってくださらなくても! お気持ちだけでもすごくありがたいです」


 とは言ったが、相手はそれだけじゃ満足も納得もしないだろう。それほどまでの状況だったのだし、姫乃だったら同じようにスパチャだけでなく何かしてあげたくなるかもしれない。

 うーん、と頭を捻りながら考え、ふとアイディアが一つ浮かんだ。しかしここでは言えないので、あとでDMを送ることにした。


 きちんとあとでDMを送るという旨を話した後、今後の活動方針を改めてみんなに周知。収益化を達成したとはいえ、やり方は一切変える予定はない。

 配信活動は水曜日を基本休みとして、それ以外は活動。動画投稿はできる限り毎日、アーカイブの切り抜きや何かしらの解説動画を一日一本は上げていく。

 そんな話をしながらも夕飯を食べ終え、ガトーショコラと紅茶で食事をしめる。

 話したかったことも話したしリスナーからもたくさんのおめでとうコメントをもらえたし、時間もいい感じだったので配信を終えることにした。


「………………………………………………………………………………は?」


 配信終了直後、画面に最大同接数や平均視聴率、高評価数などが表示される小さなポップアップが出るのだが、そこにはその配信の収益も表示される。

 記念配信だし、同接のことも考えてまあ十万以上くればいいかなと楽観視していたのだが、実際に得た収益は六千万と破格の金額。

 見たことのない金額に宇宙猫状態となり、そのままふらふらと部屋から出てぼーっとしたままお風呂に入り、寝巻に着替え、スキンケアを行い、歯を磨き、ベッドのあおむけに倒れた。


「……そっかぁ。これはゆめなんだぁ」


 そう現実逃避するように呟いて、姫乃はその日眠りについたのであった。

 翌日、夢じゃないと現実を叩きつけられ、震える声で美雪に助けを求めた。

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