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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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イレギュラーは深層より

 鼓動が早くなる。手足が震える。

 呼吸が早く、浅くなる。音が遠のいていく。

 視界がぶれる。視界が震える。視界が霞む。

 脳裏に浮かぶ、十二年前の出来事。最悪の大事件。最愛を失った、あの地獄が。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


”なんじゃあの魔方陣”

”また姫様が何かやったのかと思ったけど、違うっぽい”

”姫様どうした!? 顔真っ青だけど!?”

”脂汗もヤバいし、顔色も悪いし体も震えてるし、マジで何がどうした”

”この反応、なんかあれにトラウマ抱えてるっぽい?”

”そりゃまあここダンジョン下層第四階層だし、いくら兵装がぶっ壊れでも怖いものは怖いよな”

”なんかそんな感じの顔じゃない”

”可哀そうは可愛いだけど、この顔はシンプルに心配になる”


(な、なにが出る……!? 何が来るの……!? ま、まさか……あの時の……黒……。あ、ありえない! だって……だってあのモンスターはあそこにしか出ないって……)


「グォアアアアアアアアアアア!」

「っ!?」


 完全に硬直していると、アンフィスバエナの残った右の頭が炎を吐きだしてくる。

 姫乃はとっさに地面を強く蹴り、アンフィスバエナからも魔方陣からも大きく距離を取る。

 一体あのどす黒い魔法陣、召喚門の魔法陣から一体何が来るのか。強く刺激された過去のトラウマに怯えていると、その門から何かが姿を見せる。

 全身が白い鱗と甲殻に覆われている、大型の飛竜種のモンスターだった。それを確認した途端、フラッシュバックが徐々に治まっていき激しかった動悸も緩やかになる。


 そのモンスターは魔法陣の真下にいたアンフィスバエナを踏み潰すように着地し、抗議するように声を上げた先客を尻尾の鋭い一閃でその首を刎ね落とす。

 現れたモンスターは、頭に生える一本の剣のような角と、先端が剣のようになっている尻尾を持ち、魔力を斬撃として飛ばしてくる大型の飛竜種モンスター、魔刃竜レイザルド。

 下層より下の深層に生息する特級に分類されるモンスターで、同じく深層に存在する声そのものにとてつもない破壊力を持つ爆咆竜ヴォルガルドと双璧をなす。


”なんじゃこいつ!?”

”頭の角なげぇしでけぇ!?”

”尻尾にも剣みたいなのあるんですが!?”

”見覚えあるなと思ったら、深層に生息する特級モンスターさんじゃないっすか。なんで下層にいるんですかねぇ!?”

”つーか今こいつあの魔方陣から出てきた!? ってことはあれ召喚門の魔法陣かよ!”

”召喚ってことは、こいつを人間が呼び込んだってこと!? 一体だれが!?”

”一応ダンジョンのトラップの可能性もあるぞ”

”真っ先に疑われるのは姫様なんだろうけど、あの顔を見る感じ演技とはとても思えないガチのトラウマ発症してたっぽいし、マジで誰かがこれ仕組んだ?”

”陰謀論染みた考察あるけど、まずは姫様がこれをどう切り抜けるかだろ!?”


 あの魔法陣は、ダンジョンにトラップとして仕掛けられているほか、人間の魔術師も覚えようと思えば覚えて使用することもできる。

 召喚魔術は空間魔術の系譜で、屈服させたモンスターや承諾を得ている人間にマーキングを付け、そのマーキングを目印に空間跳躍の魔法陣を展開して離れた場所に呼び出す代物だ。

 ただモンスターは倒してしまうと消えてしまうので、倒すギリギリのところで屈服させる必要があり、本気で殺しに来るのがほとんどなのでモンスターを使役するのは不可能に近い。


 姫乃は最初から一人で倒すつもりだし、そんなものを召喚せずともソロで行ける。

 そもそも配信でこんなことをやってもメリットがないし、証明はやや難しいがやっていないと証明できる。

 となると残る線は、ダンジョンそのものが仕掛けた悪意マシマシ罠か、あるいは常識がなく悪意や殺意などしかない人間が行ったか。

 後者の場合、こんなことをしでかす連中に心当たりがないわけではないが、このボス部屋の中に自分とレイザルド以外の反応がない。

 なのでダンジョンがイレギュラー的に、深層のモンスターをトラップで下層のボス部屋に飛ばすように仕組んだ罠の可能性が出てくるが、これもそうだとは言い切れない違和感がある。


「ゴアァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「……今は考えている場合じゃないね」


 意識を余計な思考から切り離す。こういうイレギュラーが発生した際は、さっさとこれを倒して証拠となるこの映像をギルドに持ち込み、調べてもらうのが鉄則だ。

 ダンジョンには未知な部分がいまだに多すぎる。その謎の解明のほんの僅かな一助になればと、深呼吸をしてからしっかりと向き直る。


「あのモンスターは魔刃竜レイザルド。頭の角と尻尾の剣みたいなやつから、魔力の斬撃を放ってくる。近接戦も強くて、頭の剣角の叩きつけとか尻尾の剣捌きがかなり厄介。尻尾の先端速度は音を優に超えるから、タンクが防ぐ場合ガッチガチに防御系の魔術を重ねないと即死。突進攻撃を結構好んで、それもかなりの速さ。魔力の操作がかなり上手で、助走を付けさせすぎると際限なく突進力が上昇する」


 見てくれているリスナーに解説する、というよりも自分で今から戦うモンスターの知識の再確認をするようにやや早口で言う。

 姫乃のその確認を証明するかのように、角と尻尾の剣に濃密な魔力をまとわせて、地面に頭突きするかのように頭を振り下ろしてから体を回転させながら尻尾を薙ぎ払う。

 青白い魔力の斬撃が二つ、下層の地面に裂傷を刻み込みながら真っすぐ飛翔してくる。姫乃はそれを見切って右に飛ぶように回避する。


 直前の戦いで雷属性に切り替えてあるため、深層モンスターということで出力をより高めたことで今まで配信で見せてきた中で最高速度をたたき出し、魔力の斬撃を置き去りにする。

 ダンジョンの壁に深々と裂傷を刻み込んだ魔力の斬撃。それを避けられたと見るや否や、レイザルドが強く地面を蹴って凄まじい速度で突進してくる。


 一条の雷光となって走っている姫乃のほうが速度が圧倒的に上だが、無尽蔵のスタミナと走ればその分だけ加速していく特性もあるため、あまり追いかけっこはしていられない。

 早くこのイレギュラーについて報告しにいかないといけないので、情報は知っていても戦うこと自体は初めてのこのモンスターを、さっさと仕留めてしまおうと急制動をかけて靴底を削りながら停止。

 止まった瞬間に地面を強く蹴り、一瞬でレイザルドとの間合いを食い潰した後、まずは目を潰してしまおうと鋭く振るうが勘付かれ、瞼を閉じられて防がれる。


「流石は深層のモンスター。瞼すら硬いね。というか、走っているから体が強化されているのか」


 走れば走るだけ突進力が上昇するからくりは、優れた魔力操作能力でどんどん身体強化を高めていっているからだ。

 早くなればその分だけ負荷が増える。それに耐えるにはそれだけの肉体が必要。魔力はそれを手っ取り早く与える優れもので、レイザルドはその操作に長けている。

 体が強くなれば突進力が上がり、それに耐えるためにより強化してまたさらに強くなる、というループが完成し、異様に広いボス部屋内で追いかけっこをすると強くさせてしまう。

 そうなると今のように瞼ですら攻撃も中々通らなくなって面倒なことこの上ないので、ややリスクはあれど近接に持ち込んだ方がいい。


「とはいえこの七式魔剣じゃ多分致命までにはいかないし……あれを使うしかないか」


 七式魔剣を鞘に納めると同時に、左手にそれ以上のずしりとした重さを感じ、目を向ければそこには塗装も何もされていない鈍色の武骨で大きなガンランスが握られていた。

 六連式回転弾倉を有しており、その中に特大の砲弾がしっかり六つ装填済み。それを確認した後、鞘に納めてもなお効果が継続中の電光石火の速度を活かし、再び壁を走り出す。

 流石のレイザルドも壁は走れないようで、大きな咆哮を上げてから剣角と尻尾の剣に魔力を帯びさせて、連続して尻尾を鋭く振るって魔力の斬撃を次々と飛ばしてくる。


 より加速することで斬撃を後方に置き去りにし、レイザルドが死角に回り込んだ姫乃を目で追うのに間に合っていないのを確認してから、脚撃で超強化した脚力で壁を蹴り瞬き一つの間に接近し左手でしっかり抱えるように持つガンランスの刃を突き立て、砲口を胴体にぴたりと押し当てる。


「まずは一発!」


 ドッゴォオオオオオオオオオン!! という爆撃染みた音を鳴らし、ゼロ距離で砲弾が放たれる。

 銃槍の砲口からブスブスと硝煙を上げながら、砲撃の反動で吹っ飛んだ姫乃は地面に着地してから、もう一度超加速して駆け回る。


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