大・爆・殺
”何その戦い方というかまずその武器はなにぃ!?”
”あの巨体がぐらつくレベルの砲撃をぶっぱできるでかい武器は、足が遅くなるのが常識なのに姫様にはそれが当てはまらない……”
”遅くはなってるんだろうけど、七式魔剣のブロンテを併用しているから帳消しにしているだけというか”
”あの火力をこの速度でぶちこみに行けるのは反則過ぎる”
”下層のモンスター、それこそさっきまでやりあってたアンフィスバエナも今の攻撃食らったら風穴があいてただろうけど、甲殻が砕けて肉が若干えぐれる程度なのやっぱ深層ってヤバい(ヤバい)”
”超高機動のモンハンが急に始まった感じだ”
「あと五発……。この速度での突撃は反応し切れていないみたいだし、これを維持すれば、」
言っている途中で、がくん! と急に自分の加速度が低下するのを感じた。
まさかと目を向けると、七式魔剣が魔力切れを起こして機能を停止させていた。
「なんつータイミングで魔力切れしてるのさ!?」
出力を少し上げたら途端にぽんこつになった魔剣に、右手で軽く鉄槌を落とす。
速度に特化させ過ぎている分、その加速に耐えうる肉体にするために余分な魔力を使ってしまっているのかという反省点を見つけ、あの加速は魅力なのでいっそ供給量を増やしてしまおうと脳筋的解決を図ろうとする。
「ガアァ!」
「どっせいッッッ!」
減速したことで補足したレイザルドが、振り向きながらずっと濃密な魔力を溜め込みまくっていた頭の剣角を横薙ぎに振るい、特大の斬撃を飛ばしてくる。
姫乃はそれを回避するでもなく迎撃を選択。左腕に抱えるように持つガンランスを突き出し、接触するのと同時に引き金を引いて砲撃。
砲撃を食らった部分だけがはじけ、魔力の斬撃が左右に分かれて通過していき地面と壁に裂傷を刻む。
「二発目! あと四発!」
”なんでカウントダウンしてるのと思ったけど、その武器もしかして六発きり!? 予備の砲弾とかは!?”
”ま、まあ姫様のことだし? きっと最終的に殴りガンスで仕留めるでしょ(震え声)”
”あのヤバい砲撃食らってあの程度のダメージなんだし、殴ったところでって感じしない?”
”姫さまー! 無理しないで撤退したっていいんだよー!?”
姫乃の行うカウントダウン。その意図をきちんと説明していなかったこともあり、リスナーたちが慌てたようにコメントを書き込み始めるが、それは杞憂に過ぎない。
竜種系統は龍種より劣るとはいえ、非常に高い知能を持つ。中には人語を明らかに理解できる種もいるそうなので、可能性がないわけでもないので今は説明しない。
「みんな大丈夫! 無理しているとかじゃないから!」
とはいえ何も言わないわけにもいかないので、安心させるためにも大丈夫だと言う。先ほど、あの魔法陣を見て顔色を真っ青にした顔を見られているので、少し説得力に欠けると思うが。
再び突進攻撃を仕掛けてきたので『脚撃』を使い真上に蹴り上げることで強引に止め、足の間を潜り抜けて後方に周り、右手で魔剣を抜いてギミックを作動。
飛び出た引き金を引き、大気中の大魔を一気に吸入。からっけつになった魔力を補充する。
七式魔剣が明らかに大魔を吸入していることを確認したリスナーが、大量にコメントを書き込み視界の端で文字列が爆速で流れるのが見える。
それを見ている余裕がないのであとで反応することにして、満タンになったところで再び電光石火を発動。
魔力切れが起こる直前まで使っていたのと同じ出力で走り出し、股抜けをしていった姫乃を追うように振り向く瞬間もう一度股抜けしていき、通り過ぎる前に至近距離で左足の関節部分に砲撃をかます。
「三発!」
スライディングするように滑っていき立ち上がると、足をやられて地面に転びそうになっているのを確認。
すぐさま地面を蹴って加速するが、すぐに引っかかったと舌打ちをする。
今の転びそうになっていたのは演技。大きくぐらついた体を何事もなかったかのように立て直し、振り返りながら尻尾と頭から斬撃を飛ばしてくる。
「『七式換装』!」
右手に持ったままの魔剣のギミックを作動。雷を維持したまま氷の属性も同時に展開。補充した魔力がごっそりと減るが、仕方がない。
靴底で地面を削るように滑りながら勢いを少し落とし、氷の大波を発生させる。
魔力の斬撃が衝突し、氷がかなり抉られ砕けるが姫乃に届かなかった。
ただ、氷の大波の規模がかなり大きいものとなってしまっており、姫乃からもまたレイザルドに攻撃を届かせることができない。
なのでぶち破っていくことにする。
「四、五、六!」
ぴたりと押し当てた砲口から砲弾を放ち、氷を砕いていく。
なぜ砲弾を無駄にするんだというコメントであふれかえるが、別に砲弾自体は全て当てる必要はないのだ。
六発の砲弾を撃ち切ること。これがレイザルドの分厚く硬い鱗と甲殻を一撃で破壊して討伐するのに、必要な鍵だ。
ただ火力も高く設定してあるので、できれば当ててダメージを稼ぎたかった。
六発目の砲弾を撃ち切ると、氷の壁を貫通してその先にいるレイザルドとばっちり目が合う。
どこから出てきてもすぐに対処できるように、剣角に魔力をすさまじい量充填させていた。
姫乃が姿を見せるのと同時に、斬撃を放つのではなく角に魔力をまとわせて角の長さを拡張。そのまま切りかかってくる。
凄まじい速度で振り下ろされてきたその攻撃を、起動しっぱなしの電光石火で軽々回避して一気に接近。
左足付近で急停止してから、右足の雷霆軍靴の現時点での充填済み魔力を全て消費。雷鳴のような音を立てて蹴られたレイザルドの左足が、蹴られた場所から千切れ飛んだ。
「ギャアアアアアアアアアアア!?」
”ええええええええええええええええええええ!?”
”嘘だろ……”
”蹴りで竜の足を千切り飛ばしたぁ!?”
”明らかに威力が一昨日と違い過ぎる”
”先に傷付けてたとはいえ、一撃でへし折るんじゃなくて千切るのやばすぎんだろぉ!?”
”火力が下だったにしろ、これ食らって割とぴんぴんしてた爛れた大狼竜の株が上がるのなんなんwww”
”あのブーツさえあれば割とマジで下層まで行けるんじゃね? 使いこなせるかは別として”
”どう考えても大魔吸収してそれを充填してるし、魔力切れがーとか言ってるけど実質的に魔力無限で、エネルギーが魔力だから実質無限のあの火力ぶちかませるのこの世の終わりすぎる件”
レイザルドが地面に倒れ、コメントが凄まじい速度で流れていく。
配信が大盛り上がりを見せる中、姫乃は少し離れた場所に着地してから一瞬でトップスピードに達して接近していく。
やられてなるものかと尻尾が振るわれるが、それを左足の雷霆軍靴で全魔力消費の脚撃をぶっぱして千切り飛ばし、くるりと体を空中で回転させながら落下して胴体にガンランスを突き立てる。
甲殻と甲殻の隙間にランスを突き立て、刃を通して砲口をぴたりと押し当てる。
「装填・全開放───六連砲星!」
六つの砲弾を装填の一言で一瞬で弾倉に補充。全開放の一言で膨大な魔力が解放され、弾倉に収束していく。
六つの弾丸のようなマークが光り、収束は十分。重い引き金を引き切り、ガヂンッ! という大きな音を立てる。
直後、やや間延びしたバカでかい砲声がボス部屋の中に響き渡る。
ほぼ同時に放たれた六つの砲弾はレイザルドの胴体を食い破り、肉をえぐり骨を砕き、中で炸裂し内部を蹂躙。
貫通していき地面に当たり、砲弾が炸裂して大きな体がその爆発で吹っ飛ぶ。その上に立つようにいた姫乃も、その爆風に煽られて飛んでいく。
「よっ、とと。あちゃ、これ少し過剰威力だったか」
真っ黒な煙を砲口から上げるガンランスを見てそう零し、中折れ式リボルバーのようにガンランスが折れて空になったでかい薬莢を排出。バシュウウウウウウ! という音を立てて内部に溜まった熱を吐き出した。
六連砲星を食らったレイザルドはというと、胴体が先の爆撃で真っ二つに千切れており、もがき苦しむ様子もなくそのまま体がボロボロと崩壊していった。
「最初にあれを見た時はかなり焦ったけど、出てきたのがこいつだったのはラッキーだったね。爆咆竜とかだったら、あそこからノーモーションで肺膨らませて物理ダメージありの咆哮出してくるから、こいつでよかったよかった」
電光石火を解除し、持っているガンランスもしまう。
しばらくコメントが非常に緩やかだったが、だんだんと現実に理解し始めてきたのかぽつぽつとコメントが流れ、完全に勝利したと分かると途端に爆発したように流れ始めた。
”すげええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?”
”なんっじゃ今の!? なんじゃ今のぉ!?”
”姫様あああああああああああああああああああああああああ!!”
”なんでこんな可愛い顔した姫騎士がロマン兵器引っ提げてくるんだよ! 最高かよ!”
”YABEEEEEEEEEEEEEEEEE!!”
”流石に俺も、今回のめのっさんの戦いハラハラしてたけど、普通にノーダメで行っててよかったわ! でも無理スンナ!”
”あーもうチクショウ! なんで収益化まだできてないんだよ! 早くスパチャ投げさせろよ!”
”これもう伝説すぎるだろ! 深層モンスターソロで倒せる探索者なんて、そうそうお目にかかれないぞ!”
”姫様最強! 姫様最強!”
”とにかく切り抜け! 拡散しろ! 姫様の偉業を世界中に広めて称えるんだ!”
いつの間にか同接が五十万人と飛躍しており、とんでもない人数が今の戦いを見ていたのだと知り、途端に緊張し始める。
コメント欄にいくつか、召喚門の魔法陣が出た時の顔は何だったのかというものがあったが、主に流れているのはイレギュラーの特級モンスターを倒したことによる称賛だったので、意図的にそこだけに反応してコメントに反応する。
こんなにもたくさんの人が来てくれて嬉しいと思う反面、どれだけの人が今後の配信に残ってくれるのだろうかという不安が丸首をもたげるも、賞賛とともに高評価も共有拡散もチャンネル登録もぐんぐん伸びていくので、もしかしたらきゆうかもしれないとゆるゆると息を吐く。
「流石にこんなイレギュラーが起きたわけだから、今日の攻略解説はここまでにするね。上層に行くまで配信は続けるから、それまではもう少し一緒にいようね」
七式魔剣を鞘に納め、そういうとリスナーたちは少し名残惜しそうなコメントを書き込むが、仕方がないと理解してくれた。
素材と核石をアンフィスバエナのものとレイザルドのもの両方を拾い、もう他に出てこないよなと少しだけ警戒。何もなかったのでそのままボス部屋から退室する。
来た道を戻るように進み、遭遇するモンスターを蹴散らしながら上層を目指し、最終的に同接が五十五万人にまで登ったところで配信は終了。
帰宅後にアナリティクスを見ると、どのグラフも軒並み直線状に上に伸びているのを見て、そのグラフが何だか面白かったのでスクショして投稿。
伸び方がやばいチャンネルとしてツウィーターでネタにされ、数百万のインプレッションに十万近いいいねに五万ほどのRTと再びバズった。
当初の、野次馬として来ていた人をそのまま登録者にしてファン化させるという目的は達成され、ダンジョン攻略・解説配信者としての地位は依然と比べて猛烈に盤石なものとなった。




