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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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人外魔境の下層へ進出

「相変わらずここの空気って、こう変にねばついているというか、ぬるっとしているというか。とにかくなんか、不快感があるんだよね」


 下層の魔力は中層よりもはるかに多く、非常に濃密。耐性を持たない駆け出しや一般人を連れてこようものなら、この異常な濃度の魔力に中てられて正気を失ってしまう。

 それほどまでに下層という場所は異質で、異常。ゆえに、人外魔境の地獄と呼ばれる。


「初めて下層に来た時を思い出すよ。魔導兵装があるからって調子乗ってここまで来たら、あまりの魔力の濃さに息できなかったもん」


”色々ぶっ飛んだことばかりやりまくってるけど、姫乃ちゃんにもそういう時期があったのか”

”発狂するってのは聞くけど、息ができないは初めて聞いたかも”

”人によって下層での症状違うらしいしな。ワイの知り合いは粘度の高い水の中で動いているみたいって言ってた”

”下層から魔力量跳ね上がるし、下手に魔力回復のためにって大魔吸気すると一発で魔力酔いするんだよな”


「そうそう、マジでそれ。ボクも一回やらかして、ガチで吐いたことあるんだよ。それ以降は、大魔吸気も最低限にするようにしたよ」


 大魔吸気。それは待機中にあふれる大魔(マナ)を特殊な呼吸を行うことで取り込み、心臓の魔力刻印に送り込んで人間の使う魔力の小魔(オド)に変換する技術だ。

 探索者に限らず魔術師や呪術師は、術を使うことで魔力や呪力を消費する。時間経過による自然回復も可能だが、最も効率よく回復する方法が大魔吸気だ。ちなみに呪術だと霊気吸気と呼ぶ。


 大魔は地球そのものがどういうわけか一つの生命体として成立し、自転やはるか地下深くの地殻運動等が続く限り、無限に生み出される。

 最近の研究で、大魔はたとえ魔力を使うことのできない人間でも影響を受けており、微量の小魔を保持しておりそれが人間の生命力となっている。

 ただこの大魔はどれだけ優れた魔術師や呪術師でもそのまま使うことはできず、どうしても心臓にある魔力刻印、呪術師は丹田にある呪力刻印でそれぞれに力に変換する必要がある。

 これらの動作を必要としないのは世界広しといえど、僅か十三名のみ。人はそれを、魔法使いと呼ぶ。


「下層から魔力量えぐいから、下層に行けるようになった人って最初は探索じゃなくてこの魔力に慣れることを優先するんだよね。慣れるまでが結構大変なんだけど」


 意気揚々と足を踏み入れた瞬間、三半規管を直接シェイクされているかのような猛烈なめまいと頭痛を感じ、速攻でその場でうずくまって吐いてしまったことを思い出す。

 一時期それは若干のトラウマになりかけていたが、諦めずに数回挑戦することでようやく魔力にも慣れ、今はこうして割と散歩感覚で来れるようになった。


「……今日は結構なボーナスデーだなぁ。一昨日は割と遭遇率低かったんだけど、あれは何だったんだろう」


 きっと爛れた大狼竜がいたからかもしれないなと自己完結しながら、雷霆軍靴のつま先で地面を数回軽く蹴る。

 索敵に引っかかったのは一体の、大型というほど大きくはないが中型よりは大きいモンスター。反応の形状からして、下層最強格のうち一体だろう。


「ゴォオオオオオオ!!」


 現れたのは、悪魔のようないかつい形相のモンスター。三角竜トリガルドス。トリケラトプスのような三本の角に、翼のないドラゴンのようなモンスターである。

 非常に狂暴で好戦的だが肉食ではなく、鉱石等を食べる。そのためか、表皮はゴリアテ以上に硬く、角はそれ以上の強度を誇る。

 突進力が凄まじいため、頑強な角を武器とした突進攻撃を好み、生き残る分だけ成長して強くなる妖鎧武者、ダンジョンならば定番とまで呼ばれている牛頭に筋骨隆々な肉体のミノタウロスと並んで、下層最強格と呼ばれている。

 下層の最初の層から出てくるので他の最強格と比較されて勘違いされやすいが、普通に強い。


 重い足音を鳴らしながら、早速真っすぐ突進攻撃を仕掛けてくる。

 この突進が非常に凶悪で、動き出した瞬間からかなりの速度を誇るくせに当然助走が付けばそれも増す。

 ある程度距離が離れているところから走ってきているので、その速度はすでにかなりのもの。下手に真正面から防御しようものなら、その防御ごと破壊されて串刺しにされてしまう。


「こういうタイプは横に避けちゃえば、慣性に従ってすぐに止まることはできない。それはこいつも同じこと。だからダンジョンの壁の近くで待ち構えて避ければ、」


 ギリギリのところで、ブーツを使って軽々回避。直前までいた姫乃がいなくなり、しかしトリガルドスは止まることができずに壁に激突。

 ダンジョンが揺れたと錯覚するほどの威力と速度でぶつかったにもかかわらず、まったくの無傷で姫乃に向き直る。


「まあ当然ぶつかってくれるわけだけど、当然この程度では倒せない。これで倒せるんだったら、下層に来る人も苦労はしないんだけどね」


”回避速度が速すぎて、避けたの分からなくて潰されたのかと思った……”

”流石に回避するのギリギリすぎだよ!?”

”もうちょっと余裕をもって回避してくれると助かる”

”今の速度で自爆してもノーダメかよこいつ。角に傷一つついてないやんけ”

”流石は下層第一階層にいる癖に下層最強格にカウントされるだけはある”

”こいつの突進って一軒家程度なら軽々粉砕するって聞くけど、実際はどんなもんなんだろう”

”ダンジョン壁が固すぎて壊れないから、文字で説明されても分からなさすぎる”


 ダンジョンの壁が壊れずとも、衝突した時の音の大きさからその破壊力は察せられる。

 結構ギリギリで回避したこともあり少し心配をかけてしまったみたいだと、素直に謝っておく。


「見ての通り突進特化だから頭とか首周りはすっごい硬い。じゃあ胴体はって言われると、首よりはやわっこいよ。だからこいつとソロで近接武器で戦う場合は、正面切ってタイマン張るんじゃなくて突進の速度が上がり過ぎない程度の距離を取りつつ突進を誘発。それを回避しながら胴体に攻撃を入れるっていうのが定石。タンクが張り付いて突進させないのも一つの手だね。魔術で戦うんだったら、まあ足止めで土とか氷使って動き封じて、高火力魔術でボコ殴りにすればいけるよ」


 だんだんと慣れてきた解説を饒舌に語っている間にも、トリガルドスは突進を繰り返してくる。

 唯一の攻撃手段というわけではないのだが、姫乃がそれを誘発させる距離に常にいるため、それだけを使わざるを得ないようにさせている。

 どれだけ突進後に距離を離しても、姫乃が自ら詰めていって増えた分を潰す。近付いてきたならと三本の角で突き上げようとしても、軽い羽毛がひらひらと風に吹かれるように回避する。


「あと他に弱点部位があるとすれば……尻尾の付け根のところとかかな? 正直あまりそこは攻撃したくないけど。あ、あとお腹! お腹の部分は四足歩行の竜種だから、かなり柔らかいよ。ひっくり返さないといけないのが面倒だけど」


”でかい角を持つ竜種モンスターはケツ穴が弱いってよく言うけどマジだったんだ”

”モンハンのサボテン大好きなあいつも、ケツ穴が弱いっていうしな”

”リアルのほうの角持ちの竜がマジでそこが弱いとは思わないじゃんwww”

”姫様は別に尻尾の付け根と言ってるだけで、ケツ穴とは一言も……”

”場所近いしあながち間違ってないから少し否定しづらいの草”

”姫様がそんなところ狙うわけないだろ!”


「……男子ってほんと、おバカさんだよね」


 いつになっても下ネタで笑う。どれだけ体が成長しても、中身がそんなに変わらないとよく言われているのが男子だ。

 別にそんなことはないのは分かっているのだが、そういう男子が目立ちすぎる。クラスメイトだけでなく他クラスの男子生徒も、よく廊下で変な下ネタを言って笑っているのを見かける。

 中学時代なんかそれを廊下でバカでかい声で、男子数名が歌うように口にしていたものだから、恥ずかしくて仕方なかった。


 配信に来てくれているリスナーも、男女比率で行ったら男性九割女性一割とかなので、男性リスナーが圧倒的。

 必然、こういう話題が出てくると真っ先に食らいついてネタにされてしまう。


「ボクだって女の子なんだから、あまりそういう下ネタとか言わないの。言うこと聞かないと蹴っ飛ばすよ?」


”ひえっ”

”普通の美少女だったらご褒美だけど、今の姫乃ちゃんの装備状態だと弾け飛ぶわ”

”自重します”

”やめてくださいしんでしまいます”

”巨人の腕へし折れる蹴り食らったら、仮に1%でも過剰威力すぎて消し飛ぶわwww”

”とても下層モンスターと戦っているとは思えない空気感で草”


「グオオオオオオオオオオオ!!」


 もはやトリガルドスのほうを見向きもせずコメントに返事しているため、相手にされていないと感じたのは咆哮を上げながらも、繰り返し突進してくる。


「あまりこれに時間かけすぎるのもよくないし、えいっ」

「ゴベッ!?」


 突進をひらりと回避した後、通り過ぎるまでのわずかな時間に回し蹴りを顔面に叩き込む。

 脚力を超大幅に強化する『脚撃(ヴォーダン)』ではないが、元々ブーツについている能力が脚力強化の魔術なので、下層に入りより多くの魔力で身体強化を行っているのも重なり、顔面の鱗を粉砕して角を一本破壊しながら蹴り飛ばす。

 壁に叩きつけられたトリガルドスは、腹を姫乃のほうに向けてそのまま地面に倒れる。


「『大雷(ブロンテ)花雷千輪(アステール)』」


 使った分のブーツの魔力は時間経過で満タン。それを確認して、バチッ! という音を立てて一瞬で距離を詰め、一割魔力を消費して技を繰り出す。

 右足で十発の蹴りを超高速で繰り出す。ただそれだけ。だが雷霆軍靴の効果により、たった10%の魔力消費でも凄まじい威力を発揮する。

 それが超短時間で十発。しかも弱点である腹に向かって繰り出されている。


「ギャアアアアアアアアアアア!?」


 比較的柔らかい腹部分を連続で蹴られ、悲鳴を上げる。

 だが流石は下層モンスター。内臓がズタボロになりながらもかろうじて生き永らえ、ここまでボロボロにしてくれた姫乃に敵意のまなざしを向ける。


「『大雷(ブロンテ)脚撃(ヴォーダン)』」


 だがしかし姫乃は容赦しなかった。

 起き上がり顔を向けたところで、魔力を30%ほど消費して脚撃を繰り出す。

 剃刀のように鋭い左足の横蹴りが繰り出され、鼻の上から生えているように見える角をへし折り、眉間に叩き込まれる。

 蹴りがクリーンヒットし、かつ上手く衝撃を伝えることができたため、吹っ飛ばされずにその場で粉みじんに弾け飛ぶ。


”ふぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?”

”なんか新技出てきたと思ったら超高速の連続蹴りでやばいと思ってたら、知ってる技飛び出てワンパンでお茶吹いた”

”胴体のほうは連続蹴りでぼろっぼろだったけど、頭部は蹴り飛ばした顔の側面以外は無事。何なら角を折って一番硬いであろう部位蹴ってこれだからシンプルにヤバい”

”さっき姫様は、これを繰り出せると分かってて蹴っ飛ばすとか言ってきたのか……”

”け、蹴っ飛ばすなら普通のブーツかJKらしくローファーでお願いします(ガクブル)”

”下層初の戦闘で魔剣使わずに行くとは思わんやん”

”今ので出力どんくらいなんだろう”

”これ100%とかになったらどうなるんだよ……。威力が全盛期オール〇イトくらいあってもおかしくないだろ……”

”魔導兵装の中に「SMASH!」できるやつ持ってるんじゃないかな”


 粉みじんに弾け飛び、散らばった肉片がボロボロと崩れる。

 ここまで粉々にしてしまうと、先に折った角と核石以外の素材は落とさなくなってしまうので、あまり使いたくない手段だ。

 七式魔剣の炎属性を使えば焼き切ることもできたが、せっかく人がたくさん来てくれているんだし、いなくなってしまわないようにド派手な演出をしてやろうとブーツの蹴りで仕留めた。

 結果は成功と言ってもいいかもしれない。ややドン引かれてる気がしなくもないが、すごいというコメントもたくさん見受けられるのでポジティブに受け取る。


「こいつの角って強度高いから、包丁とかに加工したらすごくちょうどいいんだよね。切れ味も中々落ちないから研ぐ回数も少なくて済むし、切りにくい鶏肉とかスパスパ切れるし」


 自宅にある包丁は全て、トリガルドスの角を使って作った一品。

 切れ味はそうそう落ちることはなく、非常に重宝している。

 かつてこのことを美雪に話したら、酷く呆れられた。ちょっと心外だった。

 リスナーならばわかってくれると思ったが、リスナーたちも下層モンスターの素材を包丁にするなというツッコミを書き込んでおり、リスナーお前もかと言葉をこぼす。


 核石と素材の回収もできたし、放課後の配信で時間も有限であるためさっさと先に進もうと、軽い足取りでさらに奥に向かっていく。

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