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ダンジョン攻略JK配信者、配信の切り忘れに気づかず特級モンスターを一方的にボコった結果伝説となる  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第一章 規格外JKの無双配信

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姫騎士と巨人兵

 ボス部屋とは、ダンジョン内に存在する特に危険なエリアの総称だ。

 中層の最深部からそのエリアが出現し、そのエリアの中で最も強力なモンスター、ボスモンスターがそのエリアの中に待ち構えている。

 基本的に下の層に行くための入り口がそこにあるため、中層から下層に行くのであればボスを突破しないといけない。


 そして下層に入ると、第一階層から第五階層すべての階層間にボス部屋が存在。当然下に行けばその分だけ強さを増していき、最後の第五階層のボスに至っては下層よりさらに下の深層級。

 深層に行くことができる探索者やクランは限られており、世田谷ダンジョンの深層を完全攻略した夢想の雷霆を筆頭に、世界でも三十もないと言われている。


 今姫乃が挑もうとしているのは中層ボスなので、その強さは下層級。

 ゴリアテは鋼鉄のごとき硬さの分厚い皮膚に巌の大剣を持ち、数十メートルという巨体にも関わらずそれに見合わない俊敏さで動き回る。

 なのでこういう時の対策として、タンクを前においてヘイトを買ってもらいながら、後方からの魔術攻撃や視界外からの近接攻撃だ。


「オォオオオオオオオオオオ!!」

「じゃあまずは様子見として……ふっ!」


 起動させている雷霆軍靴の力で強化された脚力。それに加え心臓の魔力刻印からここに来るまでに使っていた量より多くの魔力を取り出し、身体能力を強化。

 強化を終えると同時に巌の大剣を振りかざして、姫乃との距離を詰めようと踏みだしたゴリアテの足音にかぶせるように踏み砕く勢いで地面を蹴り急加速。

 雷霆軍化の強化倍率を低めに設定し、魔力強化も同じく低倍率。それでも姫乃の速度はゴリアテには捕捉されず、パァンッ、という小さな雷鳴のような音を鳴らしながらすれ違いざまに首に鋭く七式魔剣を叩き込む。


「やっぱ硬いなぁ。大焦熱(フレゲトン)使えば焼き切れるだろうけど、それじゃ面白みもないし」

「ゴアァアアアアアアアアアア!!」


 首にほんのわずかについた氷。初めて感じるであろうその冷たさ、そしてほんの僅かに付けられた傷とそこから発せられるチクリとした痛み。

 それを与えた姫乃に対してゴリアテは、より明確な悪意と怒りを抱いて巨大な咆哮を上げる。

 持っている大剣をがむしゃらに振り回し、何度も地面に叩きつけながら走ってくる。

 相変わらず巨体だというのに、一歩一歩がでかいうえに見た目に反して俊敏だ。


 ゴォウッ! という音を立てて振り下ろされる大剣を、地面を強く蹴って飛ぶことで回避。地面に叩きつけられると、部屋全体を揺らす。

 もし今の攻撃を回避できずにいたら、トマトのように叩き潰されて血と肉と臓物をまき散らしていたが、あいにく姫乃は過去に何度もゴリアテに挑んでいる。

 対策もばっちり立ててあるため、このモンスターに苦戦することはない。


大紅蓮(クリュオス)氷波(スリュム)


 上段に構えた七式魔剣を袈裟懸けに鋭く振り下ろす。その軌道に合わせて氷の斬撃が放たれ、まっすぐゴリアテに衝突する。


「オォオオオオオオオオオオオ!!」


 氷とぶつかり、そこからパキパキと音を立てながら凍り付いていくが、それを力づくで破壊しながら突破。

 ズドン! という音を響かせながら巨人とは思えない身軽さで跳躍。圧倒的質量と重量による落下攻撃を仕掛けてくる。

 姫乃はそれを目視した後、落下し始めるタイミングに合わせて左脇に構えた七式魔剣を右上に向かって振り上げる。

 その軌道に合わせて再び氷が放たれるが、先ほどの斬撃と違い今度は非常に分厚い氷の塊が柱のように伸びていく。

 空中で氷とぶつかったゴリアテはいくらか氷を破壊してくるが、途中でそれも止まりそのまま天井に向かって押し上げられる。


”えぇええええええええええええええええええええええええええええ!?”

”ゴリアテを押し返してりゅうううううううううううううううううう!?”

”なんじゃそりゃ!?”

”あいつの体一体何十トン何百トンあると思ってんだよ!?”

”氷もちょっと砕けただけなのやばすぎぃ!”

”まさか俺たち、新たな伝説が生まれる瞬間を目の当たりにしてる?”

”もうとっくにこの配信自体が伝説だよ”


 邪魔にならない視界の端に見えるコメント欄は、今日の配信を始めてからこれ以上ないくらい加速している。

 いつもだと戦闘中はコメント欄を消して、終了後に再表示してからコメントを拾っているが、中層のボスまでであれば問題ない。


 天井まで押し上げられてもがいていたゴリアテが、巌の大剣をがむしゃらに叩きつけまくることで氷を破壊。自由落下して体勢も立て直さずに墜落。

 その衝撃で姫乃の体が少しだけ浮き上がり、危うく転びそうになったが堪える。

 もうもうと上がる土煙の中から巨人が姿を見せ、元気いっぱいに巌の大剣を振り回しながら走ってくる。

 もう一度魔剣を振り抜き同じように氷の塊で押し飛ばそうとするが、左腕を前に伸ばしてそれを受けてから、右手の大剣で氷をぶっ叩いて破壊して足を止めずに突っ込んでくる。


「あら珍しい。少しは賢い個体なのかな」


 今まで見たことのない方法で氷を突破してきたので、少しだけ目を瞠る。

 左腕に氷をまとわりつかせたまま咆哮を上げて突進し、左腕で鉄槌を繰り出してくる。

 姫乃はそれを回避するでもなく、迎撃という選択肢を選ぶ。


「出力20%───『大雷(ブロンテ)脚撃(ヴォーダン)』」


 振り下ろされた氷まといの鉄槌を、体のバネを使って振り上げた蹴りで迎え撃つ。

 右足のブーツに蓄積されている魔力の二割を消費して放たれた雷霆の脚撃は、氷を粉みじんに粉砕してその下のゴリアテの左前腕を、中ほどからへし折った。


「ゴギャアアアアアアアアアアア!?」

「いちいちうるさい!」

「ボガッ!?」


 腕をへし折られその痛みで悲痛の叫びをあげていると、跳躍した姫乃が顔面に左足で放った雷霆の脚撃をぶちかます。

 バゴォン! という音を立てて蹴り倒されたゴリアテは、歯を二本へし折られながら顔面から地面に倒れた。


”ふぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?www”

”蹴り一発で腕へし折ったぁ!?”

”ケラウノスヴォーダンって、大狼竜にもぶちかましてたやつやん! 似た形のブーツかと思ったらそれそのままなの!?”

”ていうか今出力20%とか言ってなかった? え、あの巨人の腕一撃でへし折れる威力の蹴りが、20%?”

”これ、ソロだよね? 実はどこかに協力者がいて姫様にバカみたいなバフかけてるとかじゃないよね?”

”しかも戦闘開始時様子見って言ってたから、氷属性で行くのはこれが初めてっぽい”

”氷属性の魔剣で行くのは初めてでも、あのバ火力ブーツは何度も使ってるだろ”

”でもモンスターの回復速度って異常だし、骨折程度ならすぐに治るよ”


 コメント欄でも言われている通り、モンスターの回復速度は尋常じゃない。

 ただの切り傷程度なら数秒あれば完治するし、骨が折れる程度なら一分足らずで治る。欠損も部位によるが、五分もあれば元通りだ。

 それを証明するように、倒れていたゴリアテが折れているはずの左手で地面を押しながら起き上がる。もう既に骨がくっつき始めているようだ。


「ちょっと綺麗に折りすぎたかな。複雑骨折とか粉砕骨折にしとけばよかった」


 こんこんとつま先で地面を蹴りながら、物騒なことを言う姫乃。


「氷属性はあの巨体には少し相性が悪いのかな。むーん……少し出力上げてみるか」


”え”

”えぇ?”

”え? は? え?”


 魔剣に魔力を流し込み、出力を上昇させる。

 出力を上げると、冷気があふれ出るだけにとどまらず、この時点で周囲の水分を凍らせ始める。

 先日の大狼竜の時ほどの出力じゃないため、凍り始める範囲は非常に限定的。それでもこの出力であればゴリアテ程度簡単に倒せるだろう。


「グオォオオオオオオオオオオ!!」


 腕を折られ顔面を蹴り飛ばされて歯をへし折られたゴリアテは、より一層怒りと殺意を漲らせて姫乃に襲いかかろうとする。

 しかし姫乃は無造作に剣を薙ぐと、ゴリアテの下半身が丸ごと凍り付くレベルの範囲攻撃を繰り出し、即座に動きを封じる。

 氷撃の威力よりも範囲に重きを置いているので、これが下層のボスであれば砕かれていただろう。


「ちなみにこいつ足止めすると、面白いことやってくるんだよね」

「ガアァ!」


 姫乃が言い切るよりも早く、ゴリアテが思い切り息を吸い込んで肺を目一杯に膨らませると、咆哮とともに破壊の衝撃波をブレスのように飛ばしてくる。

 目に見えないわけではないが視認性は最悪。咄嗟にこれを使われたら回避できない探索者も多いだろうが、姫乃は分かっていると言わんばかりにひらりと回避する。

 続けざまにガンガンブレスを放ってくるが、七式魔剣を地面に突き立てることでそこを起点に氷の城壁を展開。破壊された個所から速攻で修復するようにしてから、カメラのほうを向く。


「とまあ、こんな感じで、その場から動けなくするとああやってでっかい声を出しながら、物理的な破壊力を持つ音のブレスを使ってくるんだよね。深層にいる赤黒いいびつな竜種モンスターの爆咆竜ヴォルガルドの超絶劣化版なんだけど。あれ食らっても体が爆散することはないし、せいぜいが鼓膜吹っ飛んで骨がいくつか折れるくらいかな」


”普通に瀕死の重傷で草”

”知ってるってことは、過去にそういう目に遭ったことがあるってこと?”

”姫騎士風美少女がボロボロになる様はそそるけど、リアルでリョナは見たくない”

”てかこれって特殊行動ってことだよな? こんなの見たことも聞いたこともない”

”そもそもあの範囲で透徹させて動き封じられる奴が希少だし、そもそもそんなことする前に倒しちゃうから”

”勝ったと思わせといて遠距離攻撃持ちなの止めろや!?”

”氷属性は初っぽいし、七式魔剣に何色があるか知らんけど土属性とかでやったんだろうか”

”てか、確か色んな探索者パーティーとかが遠距離攻撃持ちって言ってるって噂があったけど、実際にそれを観測することがなかったから嘘扱いされてたけど、あれってマジの話だったん!?”


 解説している間もやかましいリサイタルが氷の城壁の向こうで開催されるが、壊れたそばから即修復されてしまうためまったく届かない。

 しびれを切らして氷を壊そうにも、ゴリアテの力では破壊できない。巌の大剣で氷を殴りつけても壊れず、もうどうすればいいんだと言わんばかりの咆哮を上げる。


「見せたかったのも見せられたし、もういいかもね。じゃあサクッと倒しまーす」


 ブーツの効果で強化された脚力で地面を蹴り、一気に間合いを詰める。

 自ら近付いたので巌の大剣を振りかざして叩きつけようとするが、振り下ろされる直前に七式魔剣を斜めに振り上げて氷塊を発生。剣が描いた軌跡とそれが伸びる先が一瞬で凍てつき、振り下ろされる前の右腕が丸ごと凍り付く。

 大きく跳躍してゴリアテの顔の高さまで行くと、至近距離で爆声ブレスをぶちかまそうとしてきたので、口を氷で物理的にふさぐことで声を封じる。


「『大紅蓮(クリュオス)氷波(スリュム)』」


 両手でしっかりと持った七式魔剣を、体のバネを使って袈裟懸けに振り下ろす。

 特大の氷の攻撃が繰り出され、ゴリアテの巨体を瞬く間に氷漬けにする。

 多くの空地中の水分が凍り付いて乾燥していき、ボス部屋の中の温度が低下。まるで冬のような気温となり白い息が漏れる。

 氷の巨像となったゴリアテは内側まで一気に凍り付き、そのまま絶命。氷が砕けると一緒にゴリアテも割れて砕け、地面に散らばったのちにその破片が崩壊して消滅する。

 その場に残されたのは、巌の特大大剣と姫乃の顔よりも大きな核石だけだった。

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