第1話 天才の誕生
B級映画が好きな人は喜んで貰えると思うのですが、くだらないです、笑って貰えると嬉しいです。
世界的な生物学者が集まる学会。
壇上には、1人の男が立っていた。
名は、ヘンリー・クックフォード。
若くして優れた遺伝子工学の知識を持つ天才だったが、その研究はあまりにも常識外れだった。
ヘンリー
「今後、地球環境は急速に悪化します」
スクリーンには異常気象や環境変化のデータが映し出される。
ヘンリー
「人類は、このままでは環境に適応できません。生き残るには遺伝子レベルでの進化が必要です」
会場は静まり返る。
ヘンリー
「私は、人類へ昆虫や微生物の優れた遺伝子を組み込む研究を提案します」
その一言で空気が変わった。
学者A
「……人間を改造するというのか?」
学者B
「ゴキブリの遺伝子でも入れるつもりか?」
会場から笑いが漏れる。
学者A
「病気を治す研究ならまだ理解できます。しかし、それは医学ではなく改造人間の研究です」
「倫理的にも認められません」
次々と否定の声が飛ぶ。
ヘンリーは拳を震わせた。
ヘンリー
「何故分からない!」
「人類を救うための研究だ!」
「貴様らには未来が見えていない!」
しかし拍手は起こらない。
返ってきたのは失笑だけだった。
その日、ヘンリーの研究は正式に却下された。
研究所へ戻ると、ヘンリーは机を拳で叩きつけた。
ヘンリー
「何故だ……!」
「何故、私を認めない!」
「馬鹿どもが!」
机の上の書類が床へ散らばる。
ヘンリー
「私を笑った奴ら……!」
「ならば滅びろ!」
「私が、人類を滅ぼしてやる!」
その日から、ヘンリーの復讐が始まった。
最初に目を付けたのはクマムシだった。
極限環境でも生き残る最強の生物。
ヘンリー
「これを巨大化できれば、人類など簡単に滅ぼせる」
しかし結果は失敗。
巨大化しても死ぬ。
遺伝子を組み替えても定着しない。
何度繰り返しても成功しなかった。
昆虫。
微生物。
菌類。
あらゆる生物で実験を重ねた。
そして――
ヘンリー
「……ナメクジ?」
1匹のナメクジだけが、遺伝子操作に異常な適応を示した。
ヘンリーの目が輝く。
ヘンリー
「面白い……」
「ならば試してみよう」
ゴキブリ。
アリ。
プラナリア。
ウミウシ。
ワニ。
それぞれの遺伝子を組み込み続ける。
数か月後。
ついに1匹の生物が完成した。
そのナメクジは、成体になると体内に硬い卵を持ち、粘液には強い酸性と毒性を備え、切断されてもプラナリアのように再生・分裂する。
さらに、死ぬ瞬間には体内の卵を外へ放出する性質まで獲得していた。
ヘンリーは震える手でガラスケースを持ち上げる。
ヘンリー
「完成だ……」
「これこそ究極の生命体……」
彼はゆっくりと微笑んだ。
ヘンリー
「コードネーム――オメガリマス。」
「私を笑った人類を、この世界から根絶やしにしてやる!」
ヘンリーは実験を始めた。
メスを持ち、1匹のオメガリマスを真っ二つに切る。
すると――
メスからは煙が上がり、切断された身体は、それぞれが動き始めた。
2匹になった。
しかも、どちらも体内に卵を抱えている。
ヘンリー
「素晴らしい……!」
「最強だ!」
次に塩を振りかける。
ジュウゥ……
オメガリマスは水分を失い、ゆっくりと動きを止めた。
ヘンリー
「やはり弱点は塩か」
そう呟いた瞬間だった。
死体から、いくつもの卵が転がり落ちる。
ヘンリーは卵を潰そうとした。
しかし割れない。
叩いても。
踏みつけても。
火で炙っても。
傷1つ付かなかった。
やがて卵に亀裂が入り、小さなナメクジが次々と生まれてくる。
そして――
1時間後。
すべてが成体へ成長し、再び体内に卵を抱えていた。
ヘンリーは静かに笑う。
笑いは次第に大きくなり、研究所中に響き渡った。
ヘンリー
「フフフ……」
「ハハハハハッ!」
「完璧だ!」
「倒せば倒すほど増える!」
「こんな完璧な生物が生まれるとは!」
「やはり私は天才だった!」
数日後。
研究所には数百匹のオメガリマスが飼育されていた。
ヘンリーは数匹をガラスケースへ入れる。
ヘンリー
「まずは実験だ。」
車に乗り込み、街へ向かった。
ショッピングモール。
人で賑わう場所。
ヘンリーは誰にも気付かれないよう、トイレへ数匹。
駐車場へ数匹。
静かに放つ。
ヘンリー
「さあ、人類最期の実験を始めよう。」
満足そうに研究所へ戻ろうとした、その時だった。
道路は大渋滞になっていた。
ヘンリー
「何をしている!」
「早く通せ!」
苛立つヘンリー。
近くで車を降りていた男性が苦笑しながら話しかける。
街人A
「この先で何かあったらしいですよ。」
「火事かと思ったんですけど、煙が全然見えなくて。」
「消防車や救急車が何台も集まってるんです。」
別の男性も話に加わる。
街人B
「建物の一部が溶けてるって騒いでましたよ。」
「何が起きたんだか……。」
その言葉を聞いた瞬間――
ヘンリーの表情から笑みが消えた。
ヘンリー
「……溶けている?」
背中を、一筋の冷たい汗が流れ落ちる。
まだ、家を離れて数時間しか経っていない。
ちゃんとガラスケースに入れていたはず。
まさか――。
そんなはずはない。
ヘンリーは、初めて胸騒ぎを覚えた。
今後もよろしくお願いいたします。




