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第44発明 最後のピースなのじゃ

博士は荒い息を整えながら、ゆっくりと顔を上げた。

視界に広がるのは、つい先ほどまで戦場だったはずの光景

――だが、どこかがおかしい。

ひびの入ったニュートン、ミケランジェロ、ダヴィンチが発光している。

いや、光に包まれていた。 

ひしゃげていた金属は歪みを失い、

まるで最初から壊れてなどいなかったかのように、

滑らかな輪郭を取り戻していった。

博士は眉をひそめ、周囲を見渡す。

「……一体、なにが……」

思わず漏れた声は、乾いていた。

金属の表面に、かすかに残る――緑の光。

あの光だ、と博士は思い出す。

カルテから溢れ出た、あの柔らかな輝き。

人だけじゃない。


機械すらも、あの光は治したというのか。

ごくりと唾を飲み込む。

「もしや......これなら......」

博士が拳を握りこんだ。

 

博士は振り向き、研究所の方角を見つめる。

「......来い。」

低く押し殺した声が空気を震わせる。

直後、張り裂けるような声で叫んだ。

「―――来いっ!」

「ピカソ―――――――――っ!!!」


その名が空気を打ち抜いた瞬間、

空気が震え、研究所の台所から重い衝撃音が響く。

応えるように何かが動き出す。

一対の銀色の箸。

博士の声はまだ空間に残響している。

そして、その残響に導かれるように最後のパーツが窓を突き破り飛び出した。

 

雪原に一対の箸が亜音速で飛来する。

近づくにつれそれは輝き巨大化していく。

その姿を確認した博士は地面に転がっていたダンベルとマイクに視線を移す。


「ニュートン!ミケランジェロ!ダヴィンチ!」


その声にこたえるようにダンベルとマイクが輝きだす。

博士の肩が震える。

次の瞬間、迷いを振り払うように、拳を強く握りしめる。

指の骨が軋むほどに力を込め、そのまま天へ突き上げた。

息を吸う。

肺が焼けるほどに空気を取り込む。

喉の奥から、叩きつけるように声が弾けた。

 

「チェーーーーンジ!」

「ダンベルガー!!」

 

眩い光と轟音が空気を引き裂く。

四方から、重く鋭い衝撃音。

地面が震え、視界の端で巨大な影が次々と立ち上がる。

ひとつ、ふたつ

――いや、違う。


「……四、体……?」

 

カルテが、呆然と呟いた。

土煙がゆっくりと晴れていく。

その向こうに現れたのは、完全に修復されたダンベルガー

――それも、一体ではない。

四体の白銀の巨人。

博士はフッと息を吐き、踵を返して振り向いた。

そこにいるのは共に戦ってきた三人。

驚愕に目を見開いたまま、言葉を失った仲間たち。

博士はまっすぐ視線を向け、迷いを消す。

 

「......力を貸してくれ」

 

短い言葉だった。

その中には、説明も理屈もなかった。

ただ、そこには信頼だけがまっすぐに込められている。

 

風が、乾いた地面を撫でる。

やがてアルが口を開いた。

「……言われなくても」

既に歩き出していた。振り返らない。

その背中だけが答えだった。覚悟はとうに決まっている。


カロが腰に手を当て、大きく息を吐いた。

「全く......世話が焼ける」

短く、それだけ。だが、その足取りに迷いはない。

 

カルテはうつむき唇を噛んだ。膝が震える。

「……私なんかが......」

博士がその肩にポンと手を置く。

その目が、真っ直ぐカルテを捉えた。

ふと、何かが胸の奥に触れた。


笑い声。

ぶっきらぼうな優しさ。

不器用な励まし。

何度も何度も、自分を呼んだ声。

 

記憶が、ひとつずつよみがえる。

まるで、水底から浮かび上がるように。

気づけば、拳を握っていた。

小さく、息を吸う。

 

「……私なんか......じゃない」

 

ぽつりと、言い直す。

声はまだ弱い。けれど、その奥に揺るがない芯があった。

やがて、ゆっくりと顔を上げる。

視界が開けた。

 

「今度は私がみんなを......」 

 

足が、一歩前に出る。

さっきまでの震えは、もうない。

 

四人は並んでいた。

風が吹き抜ける雪原の中、巨大な影がゆっくりと地面に落ちる。

 

誰かが小さく笑う。

「行くぜ」

その一言で同時に踏み出す。

そして――

「「「「――――ライドオンっ!!!」」」」

  

四つの声が重なった。




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