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第41発明 たけきのこの国の平均アミノ酸スコアなのじゃ


胸の紫の水晶の奥に人影。

重厚な金属音が空気を震わせる中、グローブを握っているのは――


「カルテ......?」


アルが目を細める。

白衣ではない。見慣れない操縦服。だが、その顔は間違いなくカルテだった。


カルテは水晶の中から草原を見渡した。

その目が、膝をついた博士を見つけた瞬間、わずかに揺れる。

けれどすぐに、前を向いた。


『遅くなってすみません』


声は震えていなかった。


『いつまでも三人に守られてるだけじゃ、嫌です』


沈黙。

ふと、アルが疑問に思う。

 

「......お前、ダンベルガー動かせるのか」

『北の研究所の方々との共同開発の結果です』

「いつの間に」

『みなさんが知らない間に、私もいろいろやってるんです』

『動かしたのは、今日が初めてなんですけど......』

 

言いながら、カルテはグローブを握りなおす。

 

膝をついたままの博士が、ゆっくりと顔を上げた。

丸眼鏡の奥の目が、ダンベルガーZを見上げる。

その口元が、ほんのわずかに緩んだ。


ダンベルガーZが機械兵の群れへと向き直り、両の拳を構える。

それを見た機械兵たちが、一斉に向き直った。赤い光が集中する。

 

『それに私だけじゃ―――』

 

その時だった。

後方から、地を揺るがすような足音が来た。

一つではない。

十、二十、三十――いや、もっと。

 

「......敵の増援か?」

 

アルが振り返る。

雪の向こうから、人の波が来ていた。

 

先頭を走るのは、見覚えのある大きな体。

 

「親方......!」

 

「すまねぇ!待たせたなぁ!」

 

親方の後ろには、キセルの老婆、ボンバー亭の面々、ジェット亭の連中。

知った顔も、そして見知らぬ顔も、ありとあらゆる派閥の人間が雪を踏み鳴らして走ってくる。

 

アルが叫ぶ。

 

「お前らっ!ここは危ねぇ、町に戻れ!」

 

「てやんでぃ」

 

親方が一喝する。

 

走りながら、親方は目の前の機械兵の腕をつかんだ。

そのまま真横に投げ飛ばす。雪の上を機械兵が転がった。

 

「俺たちは長いこと争ってきた」

 

また一体つかむ。また投げる。

全身金属装甲のとてつもなく重たい機械兵を。

 

「ごはん派、パン派、あんこ派にみたらし派......顔を合わせりゃ喧嘩ばかりだ」

 

周囲の人間が機械兵に群がる。

数で押す。押し返される。また押す。

 

「だがな」

 

親方が立ち止まる。振り返って、集まった人間たちを一瞥する。

 

「博士が開発してきた飯を、俺たちはずっと一緒に食ってきたんだ」

 

誰かが機械兵の脚にしがみつく。

別の誰かが後ろから押さえる。

また別の誰かが上から飛び乗る。

その誰もが、袖から見える腕は太く、

また、足はたくましいものとなっていた。


「たけきのこの国の食事のアミノ酸スコアをなめるなよ」

 

ドガン、と機械兵が雪に沈んだ。


初めてラスト・オーダーの眉が、ほんの僅かに動いた。

 

親方が前を向く。


「博士!あとは頼んだぞ!」


博士はダンベルガーを見上げる。

メガネがキラリと光った。

 

「ライドオーーーーーン!」

 

紫の光が博士を包み込む。










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