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第36発明 必殺!アルデンテブーメランなのじゃ


フォンは博士がアルを掲げる姿を見ていた。

そして。

フォンはゆっくりとシャン・ターンへと視線を移す。

 

「……なるほど」

 

短く呟く。

 

「シャン」

 

シャン・ターンが振り返った。

「な、なんだ」

「借りるぞ」

シャン・ターンの顔色が変わった。

「ちょ——待て——それは——」

 

ガシッ。

 

フォンの手が、シャン・ターンの足首を掴んだ。

 

「待てと言っているっ——!!」


ぐいっ。

 

シャン・ターンの体が、宙に浮いた。

フォンはシャン・ターンを持ち上げ——

両腕を横に広げさせる。

シャン・ターンは、両腕を広げた状態で掲げられた。

もう一つの十字架。

広場が静まり返る。


カルテが目を丸くした。

「……同じことしてる」

カロが静かに言った。

「コピー能力って、いったいどこまで......」


シャン・ターンが叫ぶ。

「フォン——お前——俺を——まさか――」

「黙れ」

フォンは静かに言った。

「これが最善の作戦だ、おそらくこの技......何かがある」

博士から視線は外さない。

「何かまではわからない。だが、俺のコピーは完璧だ」

シャン・ターンは口を閉じた。

その顔は、明らかに納得していなかった。


博士とフォンが向かい合った。

全く同じ構えで。

全く同じ姿勢で。

左手を眼前に突き出し、右手で十字架を背負うように振りかぶる——

鏡写し。


博士は深く息を吸い込んだ。

足首をつかむ手に力が入る。

そして——


「今っ!必殺のっ!!」


右手を振り下ろす。


「アルデンテ―――ブ――メランっ!!!!」


ブオォォォォンッ!!


アルデンテブーメランを投擲する。


フォン・ダシに向かって——

高速回転したアルが空気を切り裂いて真っ直ぐに飛んでいった。


それと同時に―――

フォンも右手を振り下ろす。

「シャンターンブーメラン——!!」

シャン・ターンが投擲された。



広場の中央で——

高速回転する2体の人影が交差する。


ビュンッ!!

 

一瞬だった。

高速の回転体はすれ違う。

それぞれが——

それぞれの相手に向かって——


広場にいる全員が固唾を飲んだ。


尋常ならざる高速回転

何か叫んでるような気もするが風を切る音でかき消されている。

アルの姿は、すでに輪郭を失っていた。

円盤のように歪み、

ただの刃と化す。


ビュオォォォォォォンーー!!


一直線にフォンへと向かう。


フォンは迷いだす。


(受け止める?躱す?何が正解だ......)

(―――否!!)

(正面から――迎撃する。)


そう判断し、構えをとる。

だがアルはフォンの——


横を通り抜けた。


風だけが遅れてほほを打つ。


同時に。

同じ軌道を描いたシャン・ターンも

博士の横を通り過ぎて行った。


カルテが固まる。

 

「外......した......??」

 

誰も理解できない。

広場が静まり返る。



フォンは静かに笑った。


「ふ、ふ、ふはははは……」


乾いた笑い。


「どこを狙っている」

 

無理に取り戻した余裕が声に滲む。

博士は答えなかった。

ただ——

口の端をわずかに吊り上げる。不敵に。


「......アルデンテブーメランは狙った獲物は外さない」


フォンの笑みが止まった。


「……何?」


「もう一度言う」


その瞬間、博士のメガネがキラリと光る。


「アルデンテブーメランは」


「狙った獲物は——絶対に外さないっ!!」


シャン・ターンの表情が崩れだす。

 

「ま......まさか——」

 

視線が走る。

左。

右。

上。

いない―――どこにも。

「どこだ——」

かすれた声、その声はわずかに震えていた。


そこへ遠慮がちな声がかかる。

 

「あのー」

 

おずおずと手を挙げたカルテである。

全員が振り返った。

カルテは静かに言った。


「アル君ならそこにいますけど」


フォンの後ろをそっと指さした。

全員の視線がゆっくりとその方向を見た。


広場の端。

ぽつんと置かれた大きな岩。

その岩に——


頭から突き刺さっているアルの姿。

 

 

挿絵(By みてみん) 

 



下半身がダラリと外へ垂れ下がっていた。

ぴくりとも動かない。

時間が止まったかのように誰も言葉を発さなかった。あの博士でさえも。


しばらく呆けた後、

フォンはあわてて視線を動かした。

(シャン・ターン......どこだ)

博士のずっと後方に視線をやる。


見つけた。

広場の外れ。

古い家屋の壁に——


頭から突き刺さっているシャン・ターンの姿があった。


アルと同様に下半身が、外に出ている。

ぴくりとも動かなかった。


フォンは長い沈黙の後——

静かに目を閉じた。

深く息を吸い込む。

そして——

ゆっくりと吐き出し、目を開ける。

 

その顔にそこにあった先ほどまでの動揺はない。

フォンはゆっくりと博士に向き直る。

「ふっ」

静かに笑った。

「これで一対一になっただけだ」

博士を上から下まで見た。

 

破れた白衣。

ひびの入った眼鏡。

所々に血がにじむ、立っているのもやっとな姿。

フォンは静かに言った。


「そのぼろぼろの体で——何ができる」


博士が体を支えきれず膝をつく。

 

「ぐぬぬ」


その時。

フォンの後ろから——声がした。


「待ちな」




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