第19発明 災厄の地竜 ア・ラモード登場なのじゃ
7つの争いを乗り越え、たけきのこの国は平和を取り戻した。
数日後。
研究室の扉が、静かに開いた。
松葉杖をついた青年が立っていた。
短い黒髪。
黄色いパオ。
右腕には包帯が巻かれていた。
カタメ・ハリガネだった。
ハリガネは少し照れたように頭を下げた。
「……この前は世話になった」
「お礼を言いに来たんだ」
カルテが顔を上げた。
「ハリガネさん、大丈夫ですか?無理しなくていいんですよ」
カロがソファから言った。
「顔色はましになったわね」
「ああ」
ハリガネは研究室を見渡した。
「博士は?」
「奥で新しいテーマソングの練習中です」
カルテが苦笑いをした。
「さっきから壁が震えています」
「……そうか」
ハリガネは小さく笑った。
その時。
「よう、ハリガネ」
奥のソファからアルが顔を出した。
「もう動けるのか」
「お前に言われたくはないな」
ハリガネが答えた。
「お前の方がボロボロだっただろう」
「俺はもう治った」
アルは立ち上がり、肩を回した。
コキッ。
「7連覇の体は伊達じゃない」
カルテがお茶を用意しながら言った。
「不死身のアル・デンテここにあり、ですね。ハリガネさんもお茶どうぞ」
その瞬間。
アルの動きが止まった。
「……嬢ちゃん」
「はい?」
「今なんて呼んだ」
カルテは首をかしげた。
「ハリガネさん、ですけど」
アルはハリガネを見た。
ハリガネはすでに席に座ってお茶を受け取っていた。
「ありがとう、カルテさん」
「どういたしまして」
アルは二人を交互に見た。
「……なんで俺は君呼びで」
「こいつはさん付けなんだ」
カルテが少し考えた。
「なんとなく......です」
「またなんとなくかっ!!」
カロが紅茶を一口飲みながら言った。
「ファーストネームで呼ばれる方が親しみがあっていいじゃない?」
「……そういうことか」
アルは少し黙った。
そして――
突然、表情が崩れた。
「んなぁ――――はっはっは!!」
高笑いが研究室に響いた。
カロが眉をひそめる。
「急にどうしたの」
アルはハリガネを指差した。
「嬢ちゃんにハリガネさん呼ばわりされるようじゃあ君もまだまだ修行が足りんね」
「おれなんてアル君だぜ!見ろ!このフレンドリーさを!」
カロが額に手を当てた。
「この男、単純すぎよ」
カルテがアルにお茶を渡す。
「はい、どうぞデンテさん」
固まるアル。
研究室に3人の笑いが広がった。
その時。
「博士ーーー!!」
扉が勢いよく開いた。
近所の親方だった。
息を切らしている。
アルが振り返る。
「また派閥争いか」
親方は首を振った。
「今度は違うんだよ」
「いいから来てくれ」
カルテが立ち上がる。
「……今度は違う?」
親方の顔が、いつになく真剣だった。
広場に出ると、すでに人だかりができていた。
国民たちが口々に言っている。
「聞いたか、とんでもない奴がこの国に向かっているらしい」
「100年に一度の災害だって」
「伝説の地竜だぞ」
カルテが眉をひそめる。
「地竜……?」
その時。
人混みの中から、キセルの煙が漂ってきた。
老婆が古びた文献を広げながら言った。
「100年前の記録には……」
「この地に眠る伝説の地竜の話が残っておる」
「100年に一度目覚め、通り道にあるものを全て押し潰す」
「その名を――ア・ラモード」
広場が静まり返った。
カロが腕を組む。
「ア・ラモード……聞いたことがないわね」
「100年前なら誰も知らんじゃろ」
老婆はキセルをひと吹きした。
「この目で見た者は、もうこの世におらん」
その時だった。
ドン。
地面が揺れた。
ドン。ドン。ドン。
足音だった。
遠くから、近くへ。
国民たちが一斉に振り返った。
山の向こうから、何かが見えた。
丸い。
黄色い。
つるつるとした表面。
カラメル色の模様。
「……あれは」
カルテが目を丸くする。
山の間からゆっくりと姿を現したのは――
巨大なプリン......
ではなく巨大な亀だった。
プリンの甲羅を背負った、途方もない大きさの亀。
広場が悲鳴に包まれた。
「でかい!!」
「なんだあの甲羅!!」
「逃げろーーー!!」
カルテがカロの袖を引いた。
「カロさん、甘いもの好きって言ってましたよね」
カロは静かに答えた。
「......何キロ太らせる気よ」
アルが感心したように言った。
「それにしてもでかすぎるぜ」
ハリガネが松葉杖を握り直した。
「……俺も戦える」
アルが首を振った。
「お前は動くな」
「でも――」
「体が治ってからだ」
アルはア・ラモードを見上げた。
「今回は俺たちに任せろ」
ハリガネは黙って、アルの背中を見た。
博士が空を仰いだ。
静かに、深く、息を吸う。
そして――
叫んだ。
「来いっ!!!!」
「ニューートーーーーン!!」
「ミケランジェローーー!!」
「ダ・ヴィーーーーンチ!!」
遠くで、三つの爆発音がした。
研究室の方向から。
次の瞬間――
ヒュゴォォォォォォッ!!!
三つの影が空を切り裂いた。
二つのダンベルと一本のマイク。
博士がもう一度叫ぶ。
「チェーーーーンジ!!」
「ダンベルーー!!」
「アトミックデストロイモーーーーードっ!!!!」
亜音速で飛来する三つの鋼鉄の塊が輝きだし、巨大化する。
さらに白く、まぶしく輝き――
空中で交差する。
光が弾け、突如バラバラに分解される。
バラバラになったパーツが宙を舞う。
博士が低く言った。
「3つの魂を1つに重ねる」
光が膨れ上がる。
「機神招来!!」
拳を大きく、大きく振りかぶる。
「合体じゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」
パーツが――
旋回し。
集まり。
組み合わさっていく。
脚。
胴。
腕。
頭。
ドォォォォォンッ!!!!
爆発的な光が広場を包んだ。
眩しくて、目が開けられない。
光が収まる。
そこに――
立っていた。
以前のダンベルガーZより、一回り大きい。
白銀の装甲はそのまま。
しかし胸の水晶が、紫から金色に変わっていた。
両肩に、巨大なスピーカーが増設されていた。
カルテが呆然とつぶやいた。
「……進化してる」
カロが目を細めた。
「胸の水晶が金色になってる」
ハリガネが松葉杖を握りながら静かに言った。
「肩のスピーカーは……何のためだ」
アルが腕を組んだ。
「……嫌な予感がする」
「グレートダンベルガーZ―――見参!!!」
新生・グレートダンベルガーZが、ア・ラモードを見据えた。
その胸の水晶が――
静かに、輝き始めた。




