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第17発明 友情・宿敵・あの日の約束なのじゃ

広場に沈黙が流れていた。

重く、息が詰めるような静けさ。

アルはハリガネの前で膝をついたまま、動けなかった。

指先がわずかに震える。

 

カルテが叫ぶ。

「アル君!!」

カロが一歩前に出る。

「私が――」

「待つんじゃ」

低い声。全員の動きが止まった。

振り返る。

博士だった。

博士はこちらを向いていない。ただじっと研究室の方向を向いていた。

そして大きく息を吸い込む。

「来ーーーーーーーーーーーーいっ!!」

「ダ・ヴィーーーーーンチ!!」

―――バキィィィン

遠くで、何かが砕ける音がした。

 

次の瞬間――

ヒュゴォッ!!

一本のマイクが、青空を切り裂いた。

亜音速で飛来する銀色の塊。

 

マイクは近づくにつれ異常な存在感を放ち始める。

そして―――膨張した。

一瞬で巨大化し、次の瞬間閃光が走る。

バキィィン!

マイクが――3つに分裂した。

 

一つはピンマイクとなり音もなくアルの胸元へ

残る二つは巨大なスピーカーへと変形する。

ズドンッ、ズドンッ

地面へたたきつけるよう降り立った。

 

アルが目を細めた。

「……これは」

ゆっくりと博士を見る。

「これで何を――」

 

「お前の言葉を―――直接届けるのじゃ」

 

博士は静かに言った。

 

「全脳域強制共振型音響投射装置」

「マインドハッカー君じゃ」

 

アルは胸元のピンマイクにそっと触れる。

その意味を―――理解し始めていた。

 

 

アルは立ち上がった。

膝が笑う。腕がきしむ。

それでも―――ハリガネの前に立った。

洗脳された目が、こちらを見ている。

 

深く、息を吸った。

そして――口を開いた。

「ハリガネ」

マイクを通した声が、広場に響いた。

いや、違う。

頭の中に、直接響いた。

ハリガネの体が、わずかに揺れる。

 

アルは続けた。

 

「俺はこの国で負けている」

 

ハリガネの目が、かすかに動いた。

 

「滅多打ちにされた」

 

「氷漬けにされた」

 

「剣にされた」

 

「ロボットの中に閉じ込められた」

 

一つずつ噛みしめるように言葉を落とす。

「それでも―――俺が鍛え続けたのは」

声がわずかに震える。


「お前がいつか戻ってくると信じていたからだ」


広場が水を打ったように静まり返った。


「どんなにひどい目にあっても」

「どんなに情けない目にあっても」

「俺はお前との決着を……ずっと楽しみにしていた」


ハリガネの機械の腕が、小さく震えた。

胸のクリスタルの光が不安定に揺らぐ。

まるで――心そのもののように。


「お前が消えてから、俺は7連覇した」

「でも―――」

「一度も本当の意味で勝った気がしなかった」


唇をかみしめる。


「お前がいないからだ」


アルは真っ直ぐにハリガネを見た。


「俺が戦いたいのはお前だ」

「改造されたお前じゃない」

「あの道場で俺と戦っていた――――」


「……あの頃のお前だ」


アルの頬を一筋の涙が流れる。


沈黙。


ハリガネの目が揺れた。

装置の光が、激しく明滅し始めた。

明るく。暗く。呼吸のように。


男が舌打ちをした。

「チッ、邪魔を――」

ドゴッ!!

カロの氷の槍が、男の足元に刺さり、地面が凍る。

「動かないで」

カロは静かに言った。視線は外さない。

「今は邪魔しないことね」

男の動きが止まる。


ハリガネの体が、大きく揺れた。

「オレハ...」

「ホントウ......ハ......」

声が割れる。

「オレハ...」

「オマエト......」

言葉にならない。だが―――確かにアルの言葉が届こうとしていた。


アルが駆け出す。

最後の力を振り絞り、呼吸を整える。

アルの体を闘気が包む。ゆっくりとやがてそれは形を成す。


―――虎。


かつての荒れ狂う闘気に比べると静かな、

しかし、とても力強く大きなものとなっていた。

ハリガネもそれに応じる―――


刹那


二人の天才拳士の拳が交差する。


一瞬の後、アルが膝をつく。

そして、ハリガネの胸のクリスタルが


―――砕けた。

バリィン

遅れて音が響く。

ハリガネの目に、色が戻る。

「……ア、ル……」

かすれた声。

「ハリガネ」

「お前の……言葉が……」

言い切れない。ハリガネの膝が崩れる。

アルが駆け寄った。

「ハリガネ!!」


――届かない。

ハリガネの体が地面に倒れた。

アルも、その場に崩れ落ちた。

二人とも、動けなかった。


カルテが駆け寄る。

「アル君!ハリガネさん!」

声だけが、広場に響く。


それ以外の音が―――すべて消えていた。



挿絵(By みてみん)



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― 新着の感想 ―
ダブルノックアウト!! アル君はまた新しい技を身に付けるのだろうか…(楽しみです)。
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