第14発明 激突・大食い・ボンバー亭なのじゃ
グルメ回、グルメ回、グルメ回~♪
「博士……研究のメモじゃなかったんですね」
カルテがため息混じりに言った。
「当たり前じゃ」
博士は新しい皿をぐいっと引き寄せる。
「飯の感想はその場で書かんと忘れる」
「研究と同じくらい大事なのじゃ」
アルが額に手を当てる。
「同じくらいって言ったか今」
カロが何事もなかったかのようにフルーツサンドの二個目を手に取る。
「……まあ、そういう人よね」
その時―――
新たな料理が次々と運ばれてきた。
ジュウっと音を立てて皿に乗せられる。
東の国の名物、大海老の踊り焼き。
香ばしい匂いとともに、赤く艶めく殻が輝く。
西の国の名物、精霊果実のタルト。
色とりどりの果実が宝石のように並び、淡い甘い香りを放つ。
南の国の名物、竜骨スープ。
深い色合いのスープから、湯気とともに濃厚な旨味が立ち上る。
北の国の名物、鉄板蒸し餃子。
鉄板の上で音を立てながら、こんがりと焼き色をつけている。
カルテが目が一気に輝いた。
「すごい、全部揃ってる」
アルが大海老に手を伸ばしながら言った。
「南の竜骨スープか……懐かしい匂いがするな」
湯気を吸いこみわずかに目を細める。
カロが首をかしげる。
「南に行ったことがあるの?」
「あぁ、大会で何度か」
アルはスープを一口すすった。
「ドラゴンの骨でとった出汁はなかなか他所じゃ飲めないぜ」
カルテがぼそっと言った。
「アムレアさんの盾も同じ素材でしたね」
アルの箸が止まる。
「……それ今言う必要あったか」
「すみません」
素直に頭を下げるカルテ。
カロが精霊果実のタルトを一切れ取りながら言った。
「これよ、これ」
一口食べて、ゆっくりと目を細める。
「実家の味には及ばないけど……悪くない」
カルテが隣からそっと覗き込む。
「カロさん、甘いもの食べてる時だけ表情が違いますね」
「そう?」
「すごく穏やかです」
カロはカルテを見て、少し間を置く。
そして――
「……あなたといると穏やかになるのよ」
カルテが一瞬固まる。それから頬をほんのり赤くした。
「そんな......私、何もしてないですよ」
顔は静かに首を振る。
「してるわよ」
カロは一言。
「気づいてないだけ」
アルが鉄板蒸し餃子を頬張りながら横目で見た。
「……珍しくいいこと言うじゃねーか」
カロは即座に返す。
「うるさい」
―――その時。
「おかわりっ」
また博士の声がした。
三人が振り返る。
そこには――
さらに高くなった皿の山。
横目で見ながら、カロがほほ笑む。
「ほんとよく食べるわねぇ」
視線をカルテへと向ける。
「でも、よく食べる男の人って――いくつになってもかわいく見えるものよ」
カルテが少し戸惑ったように返す。
「そう......ですかぁ......?」
アルがすっと立ち上がった。
「……負けてられるか」
「アル君?」
「俺も食うぞ」
カロが眉をひそめる。
「急にどうしたの」
アルは袖をまくった。
「6連覇の東の拳士が、食い物で負けるわけにはいかねぇ」
カルテが小声でカロに言った。
「勝負になると思いますか」
カロは静かに首を振った。
「ならないと思うけど」
――それから一時間後。
テーブルの上には、空になった皿が山のように積み上げられていた。
アルは椅子にもたれ、天井を見上げている。
「……参った」
完全に力尽きた。
だが―――
博士はまだ食べていた。もくもくと。
時折メモ帳に何かを書きこんでいる。
カルテが皿を数えた。
アル、二十一皿、博士、八十三皿。
「博士……」
カルテが恐る恐る聞いた。
「お腹は大丈夫ですか」
博士は顔もあげずに答えた。
「まだいけるのじゃ」
アルが虚ろな目で言った。
「化け物め」
カロが紅茶を一口飲んで言った。
「止めなかった私たちも大概ね」
四人の笑いが、食堂に広がった。
食事が終わり、四人は食堂を出た。
夕暮れの通りを、並んで歩く。
カルテが大きく伸びをした。
「食べすぎました……幸せです」
アルが腹をさすりながら言った。
「次は絶対負けない」
「言ってなさい」
カロが涼しい顔で言った。
博士はすでにメモ帳を開いていた。
「ボンバー亭の巨大イカのフライ……花丸じゃ」
ペンが走る。
「次は巨大タコのタコ焼きに挑戦っと」
カルテが苦笑する。
「それ今書くんですね」
四人の足音が、夕暮れの石畳に響く。
その時。
カルテがふと、通りの向こうに目をとめた。
人混みの中に、一人の男が立っていた。
フードを深くかぶり、顔は見えない。
すれ違いざま、フードの隙間から胸元が見えた。
刺繍が入った外套。
見たことのない紋章。
2匹の蛇がお互いの尻尾を噛み、円を描いている。
ーーー共食いの紋章。
カルテの胸がヒヤリとする。
男の姿は、人混みの中へと消えるように消えていった。
まるで最初から、いなかったかのように。
カルテはその場に立ち尽くす。
「カルテちゃん、どうしたの」
カロの声に、カルテは我に返った。
「……いえ、なんでもないです」
それだけを言って歩き出す。
三人の背中を追うように。
夕暮れの通りに、四人の影が伸びていた。
夜中に食うラーメンは昼間の3倍美味い。
罪悪感という名の調味料。
ごはんをもっとおいしそうに描写したい(*'ω'*)
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