時代背景保護法
*プロトアウト
隼人は成美を家に残して、隼人は朝一でプロトアウトへ出勤する。
恐らく家では成美が洗濯や清掃などの家事を済ませている事だろう。
「おや、ハヤブサファイター。随分とお早い出勤だね」
春香が眠そうに目をこすりながら、俺に歩み寄る。
「一応色々とセットできるものをつけたつもりだけど、時代背景保持条約がうるさくてね」
「あー、俺アレ守ったことありませんよ」
春香がため息交じりに俺を見た。
時代背景保護法とはそのエリアの設定した時代にそぐ合わないものは、持ち込みや使用不能というものだ。
例えば平成エリアや令和エリアでは日本刀がそれにあたる。
昭和エリアはかろうじて、ヤクザの仁侠映画全盛期でもあったため、日本刀は使えたりする。
微妙なラインがあるのだ。
「だからあんた、毎晩パトカープログラムに追跡されてたんだよ」
「あー、てっきり暴走族の昭和ロールのあれだと思ってた」
思いがけないところで、真相が明らかになった。
きくところ、あのまま捕まっていたらアカウントをはく奪のうえ、二度とログインできなくなっていたらしい。
危なかった——。
俺はホッと胸をなでおろす。
「とりあえず、ライダースーツに防御系モッドとプログラムを入れ捲くったけど」
「どれどれ」
ここで着替えるのも人目があるので、俺は端末につないでスーツの容態を見る。
「昭和の戦隊、ヒーローものやゲームを理由に指令がごり押したモッドだよ」
「バイクだけじゃなくて、バリア機能がスーツについたのはでかいな」
俺はじっくりと追加された機能をみて、吟味しながら使いどころなどを考える。
「ふぅ」
権堂が階段からおりてきて、メカニックスペースに姿を見せる。
「よお」
「ハヤブサか——」
権堂がパイプ椅子に腰を下ろすと、ふーっとため息をついた。
「新人調達は無理でしたか?」
「ああ、どこも戦線が崩壊寸前でな——人気のない令和エリアからは撤退が決まった」
権堂の一言に春香が暗い顔をする。
令和エリアか—―確かに俺も成美も言ったことが無い。
それほど人気のないところなのか。
「ここもいつまで持つでしょうか——」
「わからん、俺が動けるうちは何とかしたいと思うのだがね」
権堂が春香に答えて、俺の方を見る。
「身体はどうだ?いけそうか?」
「ええ、まあ——多分」
そういえば負傷していたんだった。なのに先日、がっつりと成美としてしまった。
『女抱けるくらい元気っす』というようなキャラではないので、俺は曖昧に言葉を濁した。
「ウイルスの活動時間は、主にラッシュが起きる夜間の時間帯が多い」
「じゃあ、それまで待機か休みで?」
「緊急出動さえなければそれで構わん」
権堂がそういうと、俺は少し考える。
「ひとっ走りして、愛機の様子を見たい」
「走りすぎて、夜にしくじるなよ?」
権堂に言われて、俺はバイクをそのまま走らせた。




