0012 performing arts(魔法師振付家)
魔法呪文は魔法力を現空間に顕現させるときに、思考と集中を高めるための、舞台と言える。その時の魔法使いの気分が高揚するだけでも、魔法量が少し増大する。
魔法師が気分良く、格好を付けて、カッコイイ呪文を唱えれば、1割増しのクリティカルヒットになる。
現代用語でいう所の「厨二病」というやつだ。別に昔からもある。「見栄を切る」「かぶく」という行為だ。むかしから厨二病はある。
その高揚する振り付けと呪文を考え、魔法師に提供する仕事が魔法師振付家という職業だ。依頼者は主に威力重視の魔法使いたちだ。
威力のない魔法というと家庭魔法がある。かまどに火をつけるのに、カッコつけた呪文としぐさは必要がない。小さな炎が指先に灯るぐらいで十分だ。威力増加は望むべくもない。
水魔法を唱えるのにも必要がない。普通はコップ一杯の水が出せれば十分。風呂の水をはるには150リットルから200リットルは必要で、何百回も魔法を唱えることになる。先に魔法切れしてしまい、威力増強したところで、その差はちっとも少しぐらいでは収まらない。なので一般の魔法使いからは依頼は来ない。
私はテンブリン王国の城下に住まう、魔法師振付家のフリム=ブリン=プリントという。
このテンプリン国は都市人口10万を要する、全人口30万の、この地方としては大国と言える。主に依頼先がこの首都周辺に集中しているので、この首都に居を構えている。
首都に住まう貴族、軍属、傭兵からと、場外に住まう地主、農家からである。山のふもとに住まう狩人からもたまに依頼が来る。
王族はほぼ魔法戦士で、魔法を唱えながら戦闘を行う。その時の威力増大に我ら魔法振付師に依頼が舞い込む。この仕事について20年ほどたつが、顧客に王族の名前はない。忸怩たるおもいではあるが、顧客との相性というのがあり、それゆえ王族とは縁がなかった。
だが、5年前にお生まれになられた王子の選別会が2年後にもよおされるので、オーデションに名乗りを上げている。相性が問題ならバリエーションを増やして結果をだせばよいだけの事だ。その日のためにいろんなバリエーションを考え、披露して、そして王子向けのベストセレクションがうければ王子からご氏名を受けれるかもしれない。
バリエーションについては考えがある。私は相手と話をして、その人が望むものを、数種バリエーションを掲示して、その中から最大魔力を引き出せるものを提供しているのだが、この方法を改める必要がある。王子の意見もあるだろうが、周囲の意見を聞く知恵者どもの意見も聞くだろうから、国を背負うような誰が見ても関心をするような、魔法剣士をイメージするようなものが選ばれるはずだ。好むはずだ。私は2年後に向けて自分自身を絶賛修行中。
貴族たちは王以上に目立つことは、ははばかられるので、王の様な大見栄を切ることはできない。でも貴族軍を率いる身としては、戦闘ですり潰される様な最前線に出るような事はないが、戦端に立つことがある。それだけでなく、戦が終われば王宮で行われる勲章授与がある。何も褒美が無くても、戦の戦功報告に名前が出ないというのも、矜持にかかわるので、何もしないというわけにもいかないので、軍備増強以外に、個人の魔法力増大にかかわることにも余念がない。そんなことでお呼びがかかる。
軍属にはいろんな軍人がいる。剣士、重騎士、魔法使い。魔法使いは魔法力アップに余念がない。魔法使いは戦場では攻撃や防御の時に砲台となる事が多いので、少しでも余力を残しつつも、最大効果の魔法を唱えることができるかという事になるので、連射速度と威力増大のために依頼がかかる。
でもそんな攻撃ばかりに使用されるだけではない。
農家や地主からの依頼も多い。地主は所有する土地の整備のため、農家は農地のために魔法を使用する。魔法の使用は、田畑を耕すことから、牧草の刈り取り、開墾にまで魔法を使用する。そしてその規模により魔法使いとしての力量もなかなかのものを持ってることが多い。
今日はそんな農家からの依頼で、農場に赴いている。母屋と農機具や一時保管庫となる倉庫の間の広場になっている。いまそこに、農家の長男と次男を前に、私がいる。この兄弟の父親に依頼を頼まれたのが数回ほどありそのつてでまた呼ばれた。
「おじさんが父ちゃんの魔法の先生なんだって??」
「父ちゃんの魔法を唱えるところがカッコイイ!!俺たちにも同じようなカッコイイ魔法を授けてください!!」
返事がしっかりしている。
そんなしっかりしてる子は、余計なことをしないので、今回はしっかり仕事ができそうだ。
父親に指導したのは随分前の事だ。昔、使っていた手帳に同じ年ごろのころに教えたとある。ずいぶん昔だな、ドンナのを教えたんだっけ?
「ボウズども、ちょっと親父さんを呼んできてもらえないか?」
「「ハイ」」
「先生、どうなさったんで?」
「ハハッ、あなたの魔法がドンナのだったのか思い出せなくて、すごく勢いがあって、精霊魔法を思わせる様な土系と風系の魔法だったはずなんだが、なにぶん前の事なんで、細かいところはさっぱり忘れてしまった。一度実演してもらえないか?」
「そんなことかい?、いいぜ。先生!よく見ておくれよ!!」
自然な立ち姿から、上半身が前にスッと前にでると共に、片足だけが前に出され、上体は下に降り、膝を曲げて、地面をダンっと踏みつける。胸の前に組まれた双腕をほどきながら、両腕は肩より後ろに鷲のようにそらし、また胸の前で手のひらをたたきつけるように「パン」と手のひらを鳴らす。また腕は後ろに反らされ、次の軌道は地面近くを後ろから前に斜めに大きく回されて、手のひらが合わさり、水をくみ上げるようなポーズをとる。そこでいったん時間が止まったようにピタッと止まり、呪文詠唱が始まった。
「農家の守護精霊デネブ!デネブよ!!御身を祭る!セレフ=ハイが申し立てる!!
【呪文詠唱とポージングのシーン続く、飽きたので後で書く。】
「とまあ、こんな感じだ。」
「ああ!!思い出した。ありがとう。これは私の傑作のひとつだ。あの時の事も思い出したよ。確か昼ぐらいから始めて、数時間で終わる予定が、夕方までかかって、日が落ちてしまって帰れなくなって、客間で泊って、翌日に帰ったんだった。若いころのお父さんの希望をすべてかなえることができた。結果こんなにかっこいいのができたんだったなあ。」
「そうだったな。」
「僕も希望があるんだ!!」
「俺も!!」
「そうか、この子たちも時間がかかりそうだ。どちらが先にやる?君らのインシュピレーションが大事だから、希望が固まらないと、先の方が意見が出しにくいもんだ。だから先やるほうが時間がかかる。じゃんけんして負けたほうが後にして、その待ってる間もみながら考えをまとめておいてね。」
「「はい」」
「「じゃんけん、ぽい」」「「あいこで」」「「しょ」」
「俺が先だ、悪いな、パリン」
そうか、弟の名前がバリンっていうのか。
「すまない、よく考えたら自己紹介がまだだったな。私はブリントという。君らの名前は?」
「俺がダリン。」
「おいらはバリン。」
兄貴の名前がダリンだな。
「よろしく。」
「「よろしくおねがいします。ブリント先生。」」
このこら本当に礼儀正しいな。おまけに熱心だ。今度もこの子らの家に泊まることは確定の様だ。




