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第5話{After That}

{胎罪キャラクター資料}


─────氷室すず{旧姓:貴志。前作『骨の髄まで曖<アイ>してる。』で登場。元SEID飛騨支部技術開発部に所属。現在は五刻町にある膳丈院学園高校で保険指導員をしている。元ヤン。}

「せんもう21番[再燃フラッシュバック]」による超常災害から一夜が明けた。凪沙が次に目を醒ましたのは自分の家ではなく、あの緋ノ咲高校(ひのさきこうこう)パソコン室の簡易ベッドの上だった。


「こ……ここは……!?」

「おはよう凪沙なぎさ君。無事で何よりだよっ」


そして彼の横に居たのは、莉妃斗りひとだった。椅子に座って缶コーヒーに口を付けている。その横には、何本と組体操のピラミッドのような形に積み上がっている空き缶があった。


「あ……莉妃斗さん……!」

「君は強靭だねぇ。あ、狂ってるって意味じゃないよ。強いねって意味」

「えっと……あれからどうなったんですか……?」

「どこまで憶えてる~?」

「えっと……伍代ごだい君と二色にしき通りを歩いてて、爆発音がしたところまで……」

「なるほど。けっこう憶えてるみたいだね」


腕を組みながら微笑んだ莉妃斗は腰を上げると、教室の電灯を消した。そして印刷機から一枚の紙束を取り出すと、ホチキスに綴じて凪沙に手渡した。


「莉妃斗さん……これは何ですか?」

S.E.I.D上層部(おえらいさんたち)からの調査報告書いやがらせ


苦い顔をしてそう言う莉妃斗の顔を見ると、凪沙は恐る恐る手渡された資料の文章に目を通した。細かい文字がびっしりと、横に何行と列をなしていた。


────────【特定事象研究部:S.E.I.D】上層部による㐂しちどう凪沙なぎさの異能力災害とその全容報告

────────2035年某日。緋ノ咲街二色通り南飴横ストリート付近にて、中級特定事象「せんもう21番[再燃フラッシュバック]」の顕現を確認。緋ノ咲高校支部所属の四ノ宮(しのみや)ひまわり・伍代ごだいいさむ・㐂堂凪沙の3名による浄化任務を通達

───────同所にて特定事象の原因不明の禍災化を四ノ宮が観測。一時戦闘不能に

───────その直後、㐂堂による異能力(名称不明)により完全浄化を確認。数件の建物の倒壊が認められたが、死者負傷者共になし

───────㐂堂の異能力は過去の事例により特定事象の禍災化および顕現を誘発するものとして上層部は《《非公開処分の方針の意向》》を示す


「……莉妃斗さん、非公開処分って……」


内容を読んだ凪沙は、全てを理解できずとも、少なくとも恐ろしいことが書き連ねられていることは感じ取った。

そして莉妃斗も苦虫を嚙み潰したような顔をして頷いていた。


「上層部の老い耄れ共は君の異能を恐れて秘密裏に()()しようとしているんだと。これ以上周りに危険が及ばないように」

「え……!? じゃ、じゃあボクは……し、死刑……!?」

「だーいじょうぶ大丈夫! 心配ご無用業務用~」

「へぇ……?」


そうお道化てみせた莉妃斗だったが、その瞳には、光がない。


「君を死刑にすること自体はカンタンだけど、それで特定事象がこの世から消えるってわけじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに、君の人生に関わることだ。勝手な真似はさせねぇ……政府にへつら保守派いぬどもが……」


そう呟いた莉妃斗の顔は、これまで見たことのないような暗い形相だった。

凪沙はそんな莉妃斗の顔を見ながら、固唾を飲んでいた。


◆◆◆


「……お疲れ様でーす」

「お疲れ様です……って、ボス来てたんですか」

「やぁやぁ伍代君にシノちゃん~お疲れ~」

「マジでその言い方やめてください」

「ごめんごめんって怒らないでよ~」


午後4時頃。

授業を済ませて戻って来た伍代と四ノ宮が部室にやって来た。

莉妃斗は無邪気に2人を出迎えた。


「伍代君~! 上層部から何か連絡あった~?」

「今日の朝にメールがありました。四ノ宮君の口座に報酬が振り込まれると」

「ふーん……僕じゃなくてシノちゃんのとこなんだぁ……」

「マジで死刑判決下したいんですけど……?」

「四ノ宮君。ステイ」

「犬じゃないっ!!!」


そんな風に他愛のない会話を挟んでいると、ふと部室のドアがガラリと開いた。


「しつれ~~い。星川君、いる~?」


その声は、莉妃斗を呼ぶものだった。

ドアの奥から現れたのは、ワインレッドのショートヘアにいかつい般若の刺繍が施されたスカジャンを着た小柄な女性。禁煙であるはずの校舎内で、堂々と煙が躍る煙草を咥えていた。


「おいおい貴志きしちゃんさぁ……報知器鳴っちゃったらどーすんのぉ?」

「もう貴志じゃないわ。嫁に入ったの。今は氷室ひむろよ」

「どっかで聞いたことあるセリフですね……」


五刻町にある膳丈院学園高校ぜんじょういんがくえんこうこうで保健室の職員をしている・氷室ひむろすず。

元S.E.I.D飛騨ひだ支部で技術開発部に属していた研究員で、大学時代に同級生だった異能力者・氷室ひむろ栄慈えいじと結婚している。

いかつい柄のスカジャンが示すように、いわゆる、元ヤンである。


「んで? 何の用で来たんだい?」

「上層部が呼んでる。大罪の異能力者君も一緒にね」

「凪沙君もってか……?」

「そうね」

「でもこっから五刻町まで電車で30分するぜ?」

「一応後輩にバイク出させてある。ケツ乗っけてあげるから行きましょ」

「平気なんですかね……?」

「伍代君! シノちゃん! 今日は自習にするっ!」

「あ、はい。分かりました」

「いつも急ですね……」


こうして莉妃斗と凪沙は、すずによって本部へと向かうことになった。

本部から呼び出されたとなり、凪沙と莉妃斗に緊張が走った。


「本部って……S.E.I.Dの本部ってことですか?」

「そうよ。ウチを取りまとめてるデッカいところ」

「クソ溜めみたいなところだよ」


そしてすずは2人を連れて、S.E.I.D本部へと、バイクを飛ばした。




■続く。

次回


第6話{罪人としての覚悟}

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