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第4話{主文後回し、食らい尽くす。}

{胎罪キャラクター資料}


─────㐂堂凪沙{本作の主人公。人類の根源的大罪の異能力を背負って生まれた少年。自らの罪を精算するため、罪と向き合うために特定事象と戦うことを決意する。}

────────緋ノ咲街(ひのさきがい) 二色にしき通り



「ねぇ伍代君。今回の特定事象、階級は何だって?」

「中級って言っていたよ。種類は「せんもう21番[再燃フラッシュバック]」だそうだよ」

「またそれ? 最近多いわね。まぁさっさと浄化しちゃいましょ」

「そうしよう」


現場に到着した㐂しちどう伍代ごだい四ノ宮(しのみや)の3人は、逃げ遅れた人々がいないことを確認すると、特定事象とくていじしょうの行方を追っていた。

彼らは誰も居なくなった商店街の入り口に立っていた。


「どうやら、人々は逃げ切れたみたいだけど特定事象がいないね」

「大人しく出て来てくれるとも思えないわね。堂島さんがいれば{察知レーダー}で瞬時に見つけてくれるんだけどね」

「あの人の異能力は完全サポート型だからね。いるといないとじゃまた戦局も大きく変わるよね」

「……伍代君、ここは二手に分かれましょ。私は別の方に行くから、伍代君は凪沙なぎさと一緒に商店街付近見ててくれる?」

「え……!? ぼ、ボクも……!?」

「四ノ宮君……単独は危険じゃないか?」


伍代は一緒に行動するよう言ったものの、四ノ宮は聞かなかった。


「凪沙みたいなお荷物のおもりなんて嫌よ。面倒見良いんだし伍代君やってよ。その方がお互いストレスなくていいんじゃない?」


その言葉にはまだ凪沙を完全に信用していないことを思わせる苛立ちが込められているように聞こえ、凪沙はしゅんと肩を落としいて俯いた。


「……分かった。四ノ宮君はそこそこ強いし、いいよ。その代わり手に負えなかったら即撤退するんだよ? いいね?」

「いつまでも子供扱いしないで。私だって。目の前の罪くらい裁けるから」


そう言い残して、四ノ宮は走り出して行った。

残された伍代と凪沙も、しばらくして調査を開始した。


「すまないね凪沙君。四ノ宮君は裁判官の子でね。その影響もあって正義感が他の人より強いんだ。そのせいで少し目線が厳しいんだよ」

「そ、そうなんですね……」

「敬語じゃなくていいよ。凪沙君」

「あ……分かった……」


伍代は四ノ宮のことを凪沙に説明した。


四ノ宮(しのみや)ひまわり。

父親は最高裁判所で裁判官を務めている裁判官で、その影響で自身も政治や法律に関して人一倍関心を持っている。だがその性格が災いし、あまり多くの友人に恵まれなかった。孤独の日々を送った末に伍代に誘われる形でS.E.I.D(セイド)に加入したという経緯だと言う。


「じゃあ……ボクが嫌われるのも無理ないね……ボクのその……大罪? ってのが気に食わないんだろうね……」

「君の異能力に関しては莉妃斗ボスから聞いているよ。特定事象を誘発するものらしいね。でも、だからと気に病むことはない。君に悪意はないんだろう?」

「うん……こんな力、望んじゃいないよ……」


そう話しながら商店街を抜け始めた時だった。2人がいる位置から南2キロメートル方面から重たい爆発音とともに地面が小刻みに揺れた。街灯や電線が揺られ、近くの自販機が倒れた。


「い……今のは何……!?」

「すぐ近くで特定事象が起きたんだ。音の位置的に、そんなに遠くはない。身構えておいてね」


凪沙にそう言った伍代は先程の穏やかな表情から一変して鋭い目つきに変っていた。


「特定事象って……どんなものなんですか……?」

「モノの状態によるかな。デカいものだとメートル級になるね」

「め、メートル級!?」

「ここからは集中モードに入るよ」

「分かった……ボクはどうすればいい?」

「凪沙君の仕事は……俺から離れないこと。いいね?」


伍代はそう言った。理由を訊こうと思った凪沙だったが、その前に伍代が走り出してしまったため、そのまま彼の後を追って走り出した。


◆◆◆


────────二色通り 南飴横みなみあめよこストリート



「チッ……! 規模はそこまでなのに出力がケタ違いじゃない……!」


特定事象「せんもう21番[再燃フラッシュバック]」…………

現代で発生した特定事象で、人間の混乱や不安、忘れたい記憶などを根源としている。人々の脳内に重篤な記憶災害を発生させ、精神改変を引き起こす。下級・中級での死亡報告は出ていないが、充分に危険な特定事象である。


「……でも大丈夫。模擬戦闘シミュレーションと同じように動けばいいだけ!」


四ノ宮はポケットから黒いガベルを取り出すと、空高く掲げた。そしてそれを、まるで裁判官のように、虚空に向けて力強く打ち鳴らした。


「主文後回し……! お前の行動は一般市民の安全を脅かし! 著しい損害を与えたことが認められる……! よってこの手で……お前を裁く!」


周りの空気が歪む。

握られたガベルから、青と白が交差するオーラが回り始める。


─────「 『解錠アンロック』! {処罰パニッシュメント}!」


四ノ宮の異能力{処罰パニッシュメント}は、指定した対象<被告>に〝罪〟を定め、実際の法律に則った判決を下すもの。罪の重さが大きければ大きいほど、被告に課せられる〝罰〟すなわち攻撃の出力は大きなものになる。

なおこの異能力は被告が不服を申し立てれば、実際の裁判同様3回までやり直しをすることが出来る。


「償え……その命を以って……!」


四ノ宮はガベルを片手に[再燃フラッシュバック]にスタートを切る。無数の黒い衝撃波が浴びせられるが、彼女はそれをガベルで打ち込みながら弾き返していく。


─────「{執行エクセキューション}!」


四ノ宮が空高く舞い上がり、ガベルを振り上げる。そして[再燃フラッシュバック]に向けて勢いよく振り下ろした。

赤黒い閃光を周囲に振り撒いて輪郭から崩れ始めていく本体。

その様子を見ながら四ノ宮は、浄化が完了した……そう思っていた。


しかし、その直後だった……


地面から無数の腕が伸び、四ノ宮の四肢に絡みついた。


「嫌ッ! 何!? 何なのよこのっ……!?」


ガベルを打ち付けてもキリなく生えてくる。よく見るとその腕は無数の文字で構成されており、そのひとつひとつが禍々しく、歪んでいた。

中級の[再燃フラッシュバック]が見せる驚異……それは負の記憶によって生成された腕が異能力者を取り込み、直接脳に打撃を与えるというもの。

侵食されればたちまち対象は心身を蝕まれ廃人と化してしまう……。


「じゃまくせぇ……!」


四ノ宮はガベルを連続的に打ち付ける。


─────「{執行エクセキューション}!」


しかしいくら払っても何度も生えてくる。体力ばかりが奪われていき、とうとう四ノ宮は動きを封じられてしまった。


「んあぁ!? ちょっと! 何よコレ……!?」


四ノ宮の動きがどんどん鈍くなっていく。四肢の動きが弱くなっていくのは、脳内に完全に侵食されている証拠だ。四ノ宮は完全に攻撃できなくなっていた。


万事休すと思われた……その時だった。


どこからともなく、何かが四ノ宮の方向に向かって突っ込んで来る音が聞こえた。その音は、地面を抉りながら突っ込んでくる。猪突猛進、そんな言葉が似合う音だった。


─────「 『解錠アンロック』! {暴食グラ}!」


立ち並ぶ建物をなぎ倒しながら四ノ宮のところへ猛スピードで突っ込んで来たのは、なんと凪沙だった。


「え……!? 凪沙!?」


四ノ宮は彼の姿を見て目を丸くした。

彼の瞳はそれまでと違い、瞳の色がオレンジ色になっていて、明らかに鋭い目つきをしていた。そして彼の周辺には、あの特定事象と同じような黒い霧が憑いていた。


「お前を……喰らい尽くしてやる……!」


凪沙の目は、先ほどの弱々しいものとは全く違っていた。

特定事象は一瞬にして崩壊し、四ノ宮は拘束から一瞬にして解放された。


「何……!? 凪沙……!?」


四ノ宮は何事かと動揺していた。凪沙は取り憑かれたように暴れ回りながら、特定事象に向かって攻撃の手を浴びせ続けていた。


「四ノ宮君……!」


その時、四ノ宮も元に駆け付けたのは伍代だった。


「伍代君……! ねぇ! 凪沙のヤツはどうなってんの!?」

「俺もどうなっているか分からないんだ……! 突然暴走を始めて……!」


伍代も何が何だか分かっていないようだった。


◆◆◆


四ノ宮と伍代が茫然としている間に、特定事象は一瞬にして浄化された。砂埃が晴れていく中で、倒壊した建物の間に立っていたのは、力なく項垂れていた凪沙だった。様子を見るに、あの殺気はどこにもなかった。


「な、凪沙君……!」

「凪沙……!」


凪沙はもう動けない様子だった。四ノ宮と伍代は、そんな彼の様子を見て本部へ連絡を入れた。静寂が連れて来た風は、頬を切るように冷たかった。




■続く。

次回


第5話{After That}

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