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第3話{アンタなんか認めない!}

{胎罪キャラクター資料}


─────四ノ宮ひまわり{裁判官の娘であり、正義に関して非常に強い信念を持つ正義感の強い少女。父親が最高裁判所の裁判官を務めている。}

────────2035年 7月10日 緋ノ咲(ひのさき)高校パソコン室


「今日からウチのメンバーになった! 㐂しちどう凪沙なぎさ君です! 仲良くしてやってくれーい!」


ホワイトボードの前に立っている凪沙と莉妃斗。パソコンが何台も並び、壁は本棚に囲まれている。そして彼の前には、2人の男女が彼を物珍しそうな表情で見ていた。


「えっと……㐂しちどう凪沙なぎさです……よろしく……」

「事前に情報があったかと思うけど、凪沙なぎさ君は右も左も分かんない感じだから、いろいろと教えてあげてくれっ!」


莉妃斗りひとが凪沙の肩を手で叩きながら2人に言った。


「じゃ、僕はもろもろ業務があるもんで、あとはシノたん、任したっ!」

「その呼び方いい加減にやめてください。名誉毀損罪ですよ」

こわ~っ! じゃ、そーいうことで~」


そう言い残して莉妃斗は部屋を後にした。


◆◆◆


取り残された凪沙と2人の間には緊張感が漂っていた。

凪沙は何を言い出そうか分からず、ただ黙っているばかりでいた。


「ちょっとアンタ。どういう理由ワケでここに来たのよ?」

「え……?」


紺色のロングヘアに黒いセーラー服を着て、眼鏡をかけた少女が厳しい口調で言った。その視線はまるで心の中まで見通そうとしているかのように鋭かった。


「ぼ……! ボクはえっとその……! ここでその……あ、あの人から色々身に着けるように言われて……!」

「何言ってるのかよく分かんない。もっとしっかり言ってくれる?」

「ボクも何が何だかまだ分かってなくて……」

「そうじゃなくて!」

「え……?」


少女は机から立ち上がると、凪沙の方へ歩み寄った。

そして何と凪沙の胸倉を強く掴み、ホワイトボードへと叩き押した。

ホワイトボードが揺れる音が、強く部屋に響いた。


「ちょ……! 何ですか……!?」


状況が理解できないゆえに凪沙は狼狽の声を上げる。


「知ってるわよ……㐂しちどう凪沙なぎさ。大罪の異能力者なんでしょ?」

「た、大罪……? 異能力……?」

「人間の罪に起因する! 特定事象や異能力の始まり……! アンタはそれを持っている! 組織が危険視するのも納得よ……!」

「だから……! 何のことなんですか……!?」

「……まだ分からないの? アンタみたいなヤツが1番有罪(ギルティ)なのよ! この世界で起きているあらゆる罪は! アンタの所為なのよ!」


厳しい言葉を浴びせ続ける少女。その言葉は、凪沙のメンタルを破壊するのには充分すぎた。凪沙は頭が真っ白になり、何も言い返せなくなっていた。初日からここまで、名前も知らない少女に罵倒されるだなんて、冗談じゃないと思っていた。


四ノ宮(しのみや)君。ちょっとやりすぎ」

「はぁ……? 何?」


頬杖を突きながら見ていた少年が、彼女を窘めた。

その声を聞いた彼女は視線を少年に変えた。


「君の正義だけで彼を裁くのは危険だよ。今の君、軽蔑している父親と似た横顔をしていたよ」


それに対して彼女は、さらに苛立った口調で少年に言い返した。


親父ジジイの話はしないで伍代ごだい君! それとこれは別なのよ!」

「そうかな? まずは彼の話を聞いてあげようとは思わないかい? 完全に蛇に睨まれた蛙じゃないか」

「チッ……そう言うんだったら伍代君が何とかして。私じゃやってけない」

「はいはい。そっち方が良さそうだね」


少年は机から立ち上がると、凪沙の前に歩み寄って話しかけた。

彼の表情は穏やかで、少し大人びてもいた。白いウルフカットに金のピアスを片耳に着けており、片手には文庫本を持っていた。


「初めまして。初っ端から四ノ宮君が驚かせてすまなかった」

「い、いえ……」

「俺は伍代ごだいいさむ。そしてこっちは四ノ宮(しのみや)ひまわり」


伍代は四ノ宮とまとめて自己紹介をした。

四ノ宮は不機嫌そうにパソコンを操作していた。


莉妃斗ボスから聞いたかもしれないけど、俺たちは【特定事象研究部とくていじしょうけんきゅうぶS.E.I.D(セイド)】が管理している部活動だ。特に名前はないから、分かりやすく〝S.E.I.D緋ノ咲支部〟なんて呼んだりしているね」

「あ……ということは、君たちも組織の関係者……?」

「そうだね。と言っても、本部から送られてくる任務を行うだけなんだけどね」

「任務……?」

「本部から特定事象による被害報告を受けた時、現場に近い場合私たちが対処するってことなの!」


四ノ宮と伍代の説明に初めて凪沙は首を縦に振った。

伍代はホワイトボードの前に立ってマジックのキャップを開けると、特定事象と異能力について一言で書き始めた。


・特定事象→人間の罪の意識と負のエネルギーによる破壊現象

・異能力 →特定事象に対抗すべく覚醒した人類の超能力


「って感じかな」

「なるほどですね……」

「特定事象に関しては、まだまだ分かっていることは少ないわ。私たち異能力者が汗と血を流して戦ってるのに……本部は何をしてるのかしら……」

「これに関しては同感だね。何をしているのか……」


伍代と四ノ宮が眉をひそめていた時、伍代のスマートフォンが鳴った。ただの着信にしては、激しい緊張感を引き立てる怖いサウンドをしている。

ビクッと身体を震わせる凪沙を他所に、伍代は電話に出た。


「はい。緋ノ咲支部です」

《ご苦労伍代君》

「ご苦労様です。代表だいひょう

《特定事象に関する情報が入った。緋ノ咲街(ひのさきがい)にある二色にしき通りで特定事象が発生した。階級は中級・「せん亡21番[再燃フラッシュバック]」だ。3人で協力して浄化してくれ!》


命令を受けた伍代は、やや不安気な顔をしていた。


「どうしたの伍代君……?」


四ノ宮が訊ねると、伍代は凪沙を一瞥しながら四ノ宮に答えた。


「代表からの命令だ。凪沙君も、現場に連れて行くようにと」

「はァ!? 何ですって!?」


四ノ宮は思わず目を丸くして叫んだ。


「何考えてんの!? 鉄火場の〝て〟の字も知らない彼を行かせたらすぐ死ぬなんて火を見るよりも明らかじゃない!」

「俺もそう思うよ! でも代表からの指令なんだ! 3人で行くようにって……!」


伍代は四ノ宮にそう伝えた。四ノ宮は苛立ちを隠すことなく机を叩くと、パソコンの横に置いていたスマートフォンを手に持った。


「行くよ伍代君! そしてアンタも!」

「え……!? ボクも行くの……!?」

「話聞いてなかったの!? アンタも来いって言われてんの! でもこんなの不本意よ……私はアンタなんか認めないから!」


四ノ宮は吐き捨てると、()()を手にして足早に教室を出て行った。


「俺たちも行くよ! 凪沙君!」


伍代も凪沙を連れて教室を後にした。

そしてここから、凪沙たちは特定事象との苛烈を極める戦いに身を投じることになる。




■続く。

次回


第4話{主文後回し、食らい尽くす。}

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