さあ、行きましょう。
ーメイクよし、ネコの毛、よし。
病院の前で、永瀬さんを待つ私。
手鏡を見ながら、全身をチェックする。
「服に、毛がついていますよ。」
ーー以前、永瀬さんに指摘されたっけ。
猫と同居している私は、黒い服に猫の毛がつきがちだった。
それを、小声でそっと優しく指摘してくれた永瀬さん。コロコロまで貸してくれた。
くーーっ、あの時も素敵すぎた!!
思い出して、身をよじらせていると、
「すみません。お待たせしました、相沢さん」
よく通る声がした。
永瀬さんだ!!
私服の永瀬さんは初めてだ。
普段のスーツの、隙のない姿よりも
ラフな感じで、それもまた良い。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
何に対してかわからないけど、私はお礼を繰り返した。
そして、平然とした顔で
「いえいえ、今来たばかりですよ。」
と言った。
実は、緊張して1時間前には来ていたけどーー。
「そうですか?なら良かったです。今日はよろしくお願いします。」
永瀬さんは、部長から渡されたメモを見る。
自宅の場所も、覚えていないらしく、会社から住所を教えてもらったらしい。
「この場所なんですが……、」
言いながら、永瀬さんが私のすぐ横に来た。
さらに、少しだけ身をかがめる。
「ちょっと字が小さいですね。見えますか?」
メモを、私の目に近づけてくれる。
きょ、距離、近すぎませんか!?
住所など、頭に入ってこない。
「そ、そうなんですね!」
よくわからない返事をしている間に、永瀬さんは地図アプリで場所を特定した。
「こんなことに、つき合わせてしまい、本当にすみません。」
ぜんっぜん大丈夫です!
むしろ大歓迎です!!
心の中で叫びながら、私はにっこりほほえんだ。
「気にしないでくださいね。では、行きましょうか。」




