第2章:花屋のオーナー
23年後。
上川市の片隅、高層ビル群に囲まれた小さな花屋があった。店は広くはないが、いつも色鮮やかで活気に満ちていた。赤いバラ、黄色い菊、紫のチューリップ、そして太陽に向かって咲くひまわり。
店主は40代の男性だった。白髪交じりの紫色の髪、髪の色と同じ深い紫色の瞳、そしていつも穏やかな微笑みを浮かべている。彼は荒木獅鳥と呼ばれていた。
しかし、その紫色の瞳の奥には、消えることのない炭火のように、過去が静かに燃え続けていた。
「こちらは白い菊の花束ですか?」荒木は、その日最後の客に微笑みかけた。「デート、うまくいきますように。」
若い女性は花束を受け取り、お礼を言って頭を下げ、店を出て行った。ドアの風鈴がチリンと鳴る。荒木はため息をつき、カウンターの後ろにある木製の椅子に腰を下ろした。また一日が過ぎた。 「お母さんが生きていたら、きっとこの場所を気に入ってくれただろうな」彼はそう呟き、窓の外の建物の向こうに沈む夕日を見つめた。「お母さん、花屋を開いたんだ」「約束通りね」
23年。子どもが大人になるには十分な時間。肉体の傷が癒えるには十分な時間。しかし、心の傷――「後悔」と呼ばれる傷――は、どんなに長い年月が経っても癒えることはない。
星村を離れた後、荒木はあちこちを放浪し、何とか生き延びてきた。世界の最悪な面を目の当たりにした一方で、心優しい人々にも出会った。その一人、海斗さん――老花売りで、荒木を家に迎え入れ、花の栽培を教え、まるで自分の息子のように可愛がってくれた。
「この花たちは」海斗さんはかつて言った。「誰であろうと、どこから来た人であろうと、気にしない。必要なのは愛と世話だけだ」「愛を与えれば、花は君のために咲いてくれる」 5年前、海斗は亡くなり、この花屋を荒木に遺した。荒木は養父との約束を守り、花に愛情を注ぎ、花々は咲き誇った。
しかし今夜、すべてが変わる。
突然、ドアの風鈴が激しく鳴り響いた。志鳥は顔を上げ、カウンターの後ろから飛び出した。
男が店に倒れ込んできた。長い黒いコートを着ていたが、それはぼろぼろで血に染まっていた。全身の無数の傷口から血が流れ出し、濃い赤色の水たまりとなって木の床に滴り落ちていた。
「おい!」「大丈夫か?」荒木は男を支え、横たえようとした。「すぐに救急車を呼びます…」
「いや…もう遅い…」
男は荒木の腕を掴んだ。手は氷のように冷たかったが、その握力は不思議なほど強く、まるで最後の力を振り絞っているかのようだった。
「頼む…石を守ってくれ。」荒木が何が起こっているのか理解する間もなく、ドアベルが鳴った。顔を上げると、7人の男が入ってきた。全員が黒いスーツを着て、顔を隠すほど大きな帽子をかぶっていた。
「すみません、石をいただけますか?」
そのうちの一人が前に出て、友好的な口調で話しかけたが、荒木はその声に殺意を感じ取った。
第2章 終わり




