98 臨時世界魔法会議12マーカーハザ王国崩壊
短編「レオンの機嫌を直すには」東大陸リオンブラン王国国王レオンの学生時代のお話
また一人、手が挙がった。
「東大陸マーカーハザ王国国王、ヨサンです。
現在、我が国は大災害に見舞われております……」
ヨサンは言葉を詰まらせ、深く頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。どうか……どうか、お許しください。
国王として……いや、一人の人間として、精霊様に対して傲慢で不誠実であったことを、心より謝罪いたします」
その言葉を、精霊協会の長が静かに遮った。
「残念ながら、私は精霊協会の長であって、今回直接被害を受けた者ではない。精霊や妖精に向けて発した言葉も、取った態度も、すべて自らと向き合い、精霊や妖精へ真摯に謝罪しなさい」
そう告げると、ヨサンの隣に座る男へ視線を向けた。
「隣にいるのは、マーカーハザ王国第二王子であり、宰相のニナリ殿か……。
貴方は、精霊をとても大切にしているのだな」
ニナリが驚いたように顔を上げる。
「ここにいる皆には見えないと思うが、私には貴方の周囲を精霊たちが取り囲み、私から貴方を守っているように見える。素晴らしい絆だ」
そして、淡々と告げた。
「現国王夫妻と王太子、そして国民の多くが処罰の対象となるだろう。
その間、国王代行としてこの会議への参加をお願いする」
ヨサンたちは言葉を失った。
「ニナリ殿以外は退室しなさい。精霊協会の関係者から話を聞き、今後について考えることだ」
「……承知しました。申し訳ございませんでした。」
ヨサンは深々と頭を下げた。
その後、ニナリを残し、国王と王太子を含む四人は、精霊協会の関係者に伴われて退室していった。
会場が静まったところで、再び一人の手が挙がった。
「東大陸リオンブラン王国国王、レオンだ」
レオンは静かに口を開いた。
「隣国マーカーハザ王国から、多くの難民が我が国へ向かっていると聞いている」
一度言葉を切り、続ける。
「我が国は、獣人と、その番である人族、そしてその家族が共に暮らす国だ。
しかし、これまでマーカーハザ王国からは獣と蔑まれ、侵略行為を受け、輸出入においても不平等な契約を押し付けられてきた。
対等に扱われたことも、約束が守られたこともほとんどない」
退室していく国王をにらみつける。
「獣人の子供たちの誘拐や売買についても、いまだ解決していない事件がある。だからこそ、国民からマーカーハザの難民受け入れへの理解を得ることは難しい」
レオンは淡々と続けた。
「国境近くには移動門を設置した。受け入れが可能な国があるのなら、そちらで受け入れていただきたい」
精霊協会の長が頷いた。
「人道的な支援として、移動門を設置していただいたことに感謝する」
そして、会議の参加者へ向き直った。
「なお、精霊の怒りに触れた者や、罪を犯している者については、一切出国できないとの報告を受けている。移動門まで辿り着ける者がどれほどいるかは分からないが、その点は了承してほしい」
長は会場を見渡した。
「では、難民を受け入れることが可能な国は挙手を」
一人の国王が手を挙げた。
「北大陸最北の地、デューヌ白銀国国王レイヤだ。
我が国は人口減少を課題としている。難民の人数に応じた住居や食料、生活に必要な魔道具などの支援を受けられるのであれば、受け入れは可能だ」
しかし、レイヤは続けた。
「ただし、我が国の環境は非常に厳しい。四十歳以上の者や、体の弱い者は命に関わる可能性があるため、申し訳ないが受け入れを最初から拒否させてもらう」
「……確かに、デューヌ白銀国の環境では無理もない。了承した」
精霊協会の長はそう答えたあと、何かを感じ取ったように目を閉じた。
「今、精霊から連絡があった」
会場の視線が集まる。
「マーカーハザ王国で誘拐された獣人や、その者たちを支援し、助けていた者たちが、国境まで辿り着いたようだ」
そして、レオンへ視線を向ける。
「リオンブラン王国国王レオン殿。どうされる?」
レオンはすぐには答えず、静かに考えた。
「入国審査を許可していただけるのであれば、ギルドに設置されている最新型の魔道具を国境へこちらで無償設置する。
犯罪履歴なども確認できるものだ。今後も利用していただきたい」
精霊協会の長は穏やかに続けた。
「精霊様が直接連れてきた者であれば問題はないと思うが、最終的な判断はレオン国王にお任せする」
レオンは深く頷いた。
「では、その魔道具で確認し、問題がなければ受け入れを許可する」
そして、静かに空を見上げた。
「精霊様に感謝を。家族と離れ離れになっていた者たちも、ようやく再会できる。……ありがとう」




